hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

傾聴の技法  感情への応答は難しい

2012-08-23 | コミュニケーション

傾聴の技法について述べる。

産業カウンセラー養成講座のテキスト(社団法人:日本産業カウンセラー協会)から、必要な情報を抜出し、引用する。


a)かかわり行動

「かかわり」(attending)とは、カウンセラーが身もこころもクライエントに向け、クライエントとともにいることをいう。「かかわり行動」は、そうした真剣で温かいクライエントとの接し方である。適切なかかわり行動は、クライエントを安心させ、話しやすい雰囲気をつくる。

方法

ア)落ち着いて話し合えるように面接環境の整備をしておく。
イ)カウンセラーが余裕をもって相談に応じられる準備体制をつくっておく。
ウ)表情・態度・姿勢
 ・やさしい表情で
 ・やや前傾で、少しのりだすほうが、真剣さが伝わる
 ・自然に、ゆったりした身振りで
 ・上体や脚を揺すらない、なるべく脚をくまない
 ・腕組みは拒絶ととられるのでさける
エ)視線
アイコンタクトは大事であるが、凝視するとクライエントに圧迫感を与えるので、自然にソフトに視線を向ける。視線をそらすことは無視や回避ととられるので、注意する。
オ)観察
クライエントの身なり、表情、動作などを観察し、クライエントの状態、感情、活力などを把握する。
カ)声掛け
やさしい温かい語調、言葉遣いなどでクライエントへの関心と歓迎(welcome)を示す。

以上テキストからの引用である。

カウンセラーの養成講座では、姿勢について、よく注意された。
とくに、脚を開くのが、私の癖にようである。
最初は、注意していたが、話を聴くにつれて、自分の欠点を忘れてしまう。
本を読むだけでは見過ごされてしまうことだが、今回、ブログに書き写すことで、当時のことが思い出され再確認できたことは良いことである。


b)簡単受容

簡単受容は、うなずきや「はい」「えー」のようなあいづちである。クライエントの話の流れを妨げず、クライエントを尊重し、注意深く聴いていく受容的態度を示す。
簡単受容は、クライエントに対するまなざし、応答のアクセント、身振りなど、カウンセラーの非言語的表現が加えられることによって、支持や質問の場面など、面接全体にわたり広く活用できる。
カウンセラーがクライエントに対し、少しでも批判的あるいは拒否的な気持ちをもったりすると、簡単受容は表面的形式的なものとして、クライエントに伝わってしまう。クライエントが強い支えや安心感を感じるには、カウンセラー本人が受容する気持ちがなくてはならない。

方法

ア)うなずき
通常は、ゆっくり小さく行うが、話の内容によって、速くまたは大きく行い、カウンセラーの反応を表現する。
イ)あいづち
「そうですか」「なるほど」「ほー」「ふーん」「それで」など、いろいろのバリエーションがある。うなずき、あいづちも、多用しすぎると機械的になり、かえって会話を阻害する。
ウ)クライエントの話の1語か2語の繰り返しも簡単受容のひとつである。
 例「練習は続けていいますよ。最近毎日練習しています」
  「毎日」

以上テキストからの引用である。

簡単受容は、うなずきや「はい」「えー」のようなあいづちであるが、意外と難しかった。
早口の人の場合、入れるタイミングが難しい。
早口のAさんには、積極的にうなずきや相づちを入れて好評だった。
しかし、早口のBさんには、同じペースでうなずきや相づちを入れたら、多すぎる、と言われたことがある。
機械的に対応するのではなく、相手の気持ちに沿って対応する大切さを学んだ。


C)場面構成

場面構成(structuring)とは、カウンセラーとクライエントの間で、カウンセリングの特質やカウンセリング関係について合意を得ることをいう。適切な場面構成は、クライエントの不安を軽減し、相談過程を促進する。
場面構成は、面接の冒頭の行うことが多いが、必ず冒頭に公式的マニュアル的に行われるものではない。クライエントの状況、理解度、面接の進行などに応じて、相談のいろいろな段階で弾力的に行うことが大事である。

方法

ア)クライエントをリラックスさせるような会話の導入を行う。
イ)下記事項について、必要に応じて説明する。
 ・面接場所、日時の設定、カウンセリングの継続期間
 ・カウンセリング関係(主役はクライエント自身で、ここでの時間を自由に使ってよい/カウンセラーは指示や助言をするのではなく、クライエントが主体的に考えられるよう援助する、など)
 ・守秘義務
 ・面接目標、課題
 ・その他

以上テキストからの引用である。

養成講座では、初級であるため、この場面構成は、簡略化されることが多い。
私のクラスでは、「守秘義務」についてだけ述べて本題に入ることが多かった。
他クラスとの交流戦では、「場面構成」が完了した段階から入った記憶がある。
「面接目標、課題」については、DVDやテキストでは見たが、実際にやった記憶はない。


d)事柄への応答

事柄への応答とは、クライエントが話した事柄(事実、出来事、状況など)のなかのキーワードをとらえれクライエントに伝え返すことである。「内容の再陳述」ともいう。クライエントは事柄への応答により、自分の話した内容とカウンセラーの理解を確認できる。
例1 「今度の職場は部下が50人もいるんですよ」
   「部下が50人も」
例2 「私は入社以来ずっと、お客様第一主義でやってきました」
   「お客様第一主義で」

方法

ア)なるべくクライエントの言った言葉で短く伝え返す。
イ)カウンセラーの枠組みで、評価したり、拒否したりしない。
ウ)機械的なオウム返しではなく、クライエントが本当に言いたいことは何か、ということに集中して返していく。

以上テキストからの引用である。

この内容の再陳述もなれないと難しい。先ほどの早口のAさんの場合は、間がほとんどなく、さらに重要なキーワードが何か、つかまえるのに苦労して、再陳述することがほとんどできなかったことを覚えている。
一方で、ゆっくり口調のCさんやDさんはありがたい。
意識的ではないと思うが、間があり、こちらの反応が多少遅くても、対応ができ、ありがたく感じたことを覚えている。


e)感情への応答

感情への応答とは、いま、ここでのクライエントの気持ちをとらえて伝え返すことである。感情への応答によりカウンセラーの共感的理解がクライエントに効果的に伝わる。カウンセラーはクライエントの言語的表現だけでなく、非言語的表現(声の調子、話し方、表情、姿勢、動作など)にも注目し、「何を伝えたいのか」をつかみ、フィードバックする。
感情への応答のひとつに、クライエントが気持ちを伝えたいけれども、適切な表現が見つからにような場合、、「あなたの言いたいことはこういうことですね」と推察して伝える技法がある。この技法は、「感情の明確化」ともいわれ、クライエントの内面を意識化するうえで、効果的促進的な役割を果たす。
しかし、推察がクライエントに受け入れられない場合、カウンセラーの思い込みや先取りとして、カウンセリング関係を阻害する恐れがあるので、十分留意すべきである。

方法

ア)クライエントの重要な感情表現(喜怒哀楽、快・不快、葛藤など)をとらえ、その言葉を伝え返す。
例「私、みんなを避けてきました。声もかけません。なにか怖いのです」
 「なにか怖い」
イ)クライエントの態度、表情、動作が訴えているものをつかんで、伝え返す。
例 何度か時計を見るクライエントに対し
 「(時間を気にしておられるようですが)時間は大丈夫ですか」
ウ)クライエントがはっきり言語化できていない感情をくみ取って伝える。
例「ところでAときたら、趣味はなんだとか、出身はどこだとか、やたらと質問してくるのです」
「そういうことを聞かれたくないのですね」

以上テキストからの引用である。

この「感情への応答」になると、レベルが一段上がる。
クライエントの言語的表現だけでなく、非言語的表現(声の調子、話し方、表情、姿勢、動作など)にも注目し、「何を伝えたいのか」をつかみ、フィードバックすることであるが、難しかったことを覚えている。
昨日のブログでも書いたが、自分の感情や気持ちを抑圧して育った人間にとっては、自分の感情や気持ちをつかまえて表現するスキルが乏しい。このような人間にとって相手の感情をとらえることは、生易しい課題ではなかったことを覚えている。

続く。

無口のトレーニング

2012-08-22 | コミュニケーション

●雄弁は銀、沈黙は金

「雄弁は銀、沈黙は金」という諺をご存じであろうか?
1970年代に「男は黙ってサッポロビール」というビールのCMもあった。

この言葉の原点は、「無駄なおしゃべりをするな」、ということである。
特に、「雄弁は銀、沈黙は金」は、おしゃべりは度を越えると、災いを招いたり人間の価値を下げることもあるから、無駄口はたたくな、ということである。

当時は、このような価値観が主流とは言わないが、確かにあったと思う。
私も、小学校や中学の時おしゃべりをしていると、「男は無駄口をたたくな」と親に怒られた記憶がある。

「女性が楽しそうにおしゃべりをしている姿は、見ていて微笑ましい。
一方で、男が軽率な話をしていればその人の人間性も疑われる。
必要な話をすることは、当然必要である。
しかし、調子に乗り、箍か外れると、今で言う情報漏洩にもつながるので、わきまえる必要があるということだろう」

今「雄弁は銀、沈黙は金」という諺を考えると、当時、私の周りの価値観は、このような意識があったのではないだろうか、と推敲する。


●沈黙を続けると、感情表現ができなくなる

沈黙を続けるということは、どういうことだろうか?
仮に、話したいことがあっても、自分の感情や気持ちを外には出さずに、結果として、心の中に閉じ込めてしまうことになる。
このように沈黙を守り続けると、自分の気持ちを表現するスキルを磨く機会を失ってしまう。いざというときにも、感情表現というスキルを磨いていないため、使うことができない。

定年退職した男性陣が困るのは、このためではないだろうか?
会社の中にいれば、仕事に必要なコミュニケーションを必然的にとる。
しかし、定年退職して、地域に溶け込めない人々は、真の意味のコミュニケーションをとることができないのではないだろうか?
つまり、自分の感情や気持ちを強く抑圧してきた結果、自分の感情や気持ちを推し量る技術が未熟である。
コミュニケーションをとり、相手の気持ちや感情を理解する際、その比較対象が自分の気持ちや感情である。
しかし、基準となる自分の気持ちや感情が曖昧なために、相手の気持ちをくみ取ることもできず、また相手の感情を理解することもできない。
相手の感情を推し量ろうとしてもわからないし、質問することもできない。

沈黙を続けた結果、このような負のスパイラルが成り立つのではないだろうか。

今朝、読んだ本『野口敏著:「会話がとぎれない話し方」』にも、同じようなことが書かれていたので引用する。

『最近、「相手に興味を持てない」というか人が増えている。
これは、相手の話を聞いてもつまらないし、質問する意欲もわかない。
なぜ、興味をもてないのか。これは根が一緒である。
相手に興味をもてないのは、自分に関心を向けていないからである。
さらに奥深くまで突き詰めると、自分の気持ちを強く抑圧しているからである。
自分の気持ちを表現するのが苦手な方は、自分の気持ちを深く抑えて生きてきた』


●アイコンタクトが苦手

コミュニケーションのノウハウ本では、「相手の目を見て話しなさい」と書いてある。
しかし、私の場合は、このアイコンタクトが苦手である。目を見る必要ある時でも、目線を外してしまう。顔全体をぼんやり見たりしている。たまに、目線を合わしていると、緊張して疲れてしまう。
このアイコンタクトもスキルであるとすれば、練習を積んでいないだけである。
練習をすることで、アイコンタクトが得意になれば、相手の気持ちを察することもできるであろう。
『目は口ほどにモノを言う』とか『目は心の窓』といわれるように、『目』は大切である。

このことも、「無口のトレーニング」の結果から生み出された副産物と思う。
さらに、傾聴力においてもしかりである。


●どのような対策をとるか

真の原因がわかれば、対策は取りやすい。
まずは、自分の感情や気持ちを受け止めることである。
一つひとつの行動に対して、そこに隠されている感情をつかまえることである。
自分の「喜・怒・哀・楽」の感情をつかまえて、表現することであろう。
最初は、考えながら、ぎこちないかも知れないが、練習することにより、そのスキルも向上していく。そうすれば、その感情を表現するボキャブラリーも豊富になっていくだろう。
その結果、相手の気持ちを推し量ることもできるようになるだろう。

すべて、スキルと考えれば、対策は容易である。
原因は、そのスキルになっている基を活用していなかったり、練習していないだけである。
であるならば、練習をすれば、その分レベルアップすることは間違いない。
今日から、楽しんで練習をしていきたいと思う次第である。





傾聴の基本的態度と心構え

2012-08-21 | コミュニケーション
傾聴の「基本的態度」と「心構え」を述べる。

産業カウンセラー養成講座のテキスト(社団法人:日本産業カウンセラー協会)から、必要な情報を抜出し、引用(『 』部分)する。

●傾聴の基本的態度

ロジャースは、カウンセラーの基本的態度として、3つの条件をあげている。

1) 自己一致、一致(congruence)

『誠実で正直であること。カウンセラーがうわべを飾ったり、見せかけの態度ではなく、ありのままの自分であるとき、クライエントとの真の援助関係が成り立つ。一致とは、こころに感じたことと言動にずれがないことである。ロジャースは、genuineness(純粋、ほんもの)、transparence(透明、隠しごとがないこと)などの言葉を使って、自己一致を説明している』

「こころ」と「言動」が一致する例として、まずいカレーライスを上司の課長からご馳走になった場合どうするか、というのが養成講座での課題であった。
「美味しいカレーライスですね」というのは、明らかに「こころ」と「言動」が一致していない。では、「不味いカレーですね」と言えるだろうか。折角、上司からご馳走になっているのに、このような言葉は口がさけても言えまい。
そこで、「課長は、このような味が好きなのですね」と答えることで、上司の顔を立てることもでき、あなたの素直な感情も表現できる、というのである。


2) 無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard )、受容(acceptance)

『相手をそのまま受け入れること。どんな相手であっても、あるいはその人の考え方や行動が容認できなくても、(その人の存在そのものを)選択したり、評価することなく、すべて受け入れる。regardには、注意、尊重、尊敬、こころ配りなどの意味が含まれる。受容という態度の奥には、クライエントを一個の人間として、こころから大切にし、尊重するという人間観がある』

相手の心を尊重して相手の考え方や行動を無条件に受け入れる、ことである。
果たして、素直に受け入れることができるであろうか?
以前の私のように、準拠枠が強ければ、「この点はよいが、ここはダメ」と自分のフィルターを通して相手を見ることになる。
「このような見方はだめですよ」、と言っている。まずは、相手を尊敬して、無条件で、相手の考え方や行動を受け止めることである。


3) 共感的理解、共感(empathic understanding)

『相手の見方、感じ方、考え方を、その人の身になり立場に立って、見たり、感じたり、考えたりすること。それはロジャースによれば、「クライエントの私的な世界を、あたかも自分自身のものであるかのように感じる」ことである。「あたかも」というように、クライエントの世界に入り込み、本人と同じように感じ取りながらも、カウンセラーは決して怒りや混乱などに巻き込まれず、平静で客観的でなくてはならない』

人間誰でも、自分を理解してくれる仲間を求めている。
そこで自分の見方、感じ方、考え方を理解してくれる人がいれば、好意を寄せるだろう。

このことは、カウンセラー業務だけではない。
中小企業の経営者とのコミュニケーションにおいても、信頼関係をつくるためには、受容し、共感することが非常に重要なことである。


●傾聴の心構え

ここでは、傾聴の際の心構えを述べる。

1)クライエントが言おうとすることの意味を聴き、気持ちに応える

『カウンセリングでは、話す事柄よりも、その背後にある「感情」のほうがはるかに重要なことが多い。こうしたときには、クライエントが言っていることの本当の意味を理解するために、感情的な意味の部分に対して伝え返してみる。クライエントの言っていることが、その人にとってどんな意味であるのだろうか、自分に何を伝えたいのだろうか、このことについてどう感じているのだろうか、などといった全体的な意味を理解しようとすることが大切である』

言葉に背後にある「感情」「気持ち」をつかまえる。
言っていることは、よくわかる。
自分の過去の経験からすると、この部分への配慮が不十分であったと反省し、新たな課題として取り組んでいる。
中小企業の経営者の方は、自分を確立されている方が多く、本音を言わないことが多々ある。
その場合、経営者の言葉から、「この言葉は、経営者にとってどんな意味があるのだろうか」「本当に伝えたいことは何なのだろうか」「このことについてどう感じているのだろうか」と相手の気持ちを推敲し、少しでも気持ちに応えることが、今の課題である。


2)準拠枠できかない

『クライエントの話をきくとき、自分の価値観や先入観に支配されてはいけない。カウンセラーの準拠枠で話をきくと、クライエントが大事に思うことはこぼれ落ちてしまうし、聴く耳をもてなくなるだろう。カウンセラーは、自分自身の個人的な価値判断をまず脇において、クライエントのつたえたいことをあるがまま、自分の中に入ってくるような聴き方をすることが大切である。
一人ひとりのクライエントは、それぞれ独自の経験をしており、カウンセラーが傾聴するのは、その人独自の経験を理解することにあるからである』

人間それぞれ人生があり、自分の価値観がある。
もし、自分の価値観が「絶対である」と考えたら、自分以外の価値観を受け止めることができない。仮に、「私は何事に対してもチャレンジしていく」という人もいれば、「おかしく楽しい生活がした」という人もいるだろう。
ここで大切なことは、良い悪いを説いているのではなく、価値観の相違を認めることである。
自分一点を見つめていると、「準拠枠」が強くなるだろう。
その場合、一段上から、俯瞰的に眺めることで、その対応の仕方に幅を広げることができる。


3)結論を急がない

『クライエントが相談に来たとき、カウンセラーとしては、できるだけ早くその問題を解決してあげたいと思う。しかし、役立ちたいという気持ちを抑えて、相手に自分の考えを押し付けたり、指導しようとしたりぜずに、まずよい聴き手になることである』

気の早い人は、結論を急ぐ。
しかも、相手の言葉を遮り、自分の価値観で判断して指導しようとする。中高年の男性に多いタイプである。だから、若い人から嫌われる(?)のだろう。


4)「無知の姿勢」で聴く

『クライエントのこころの軌跡はそう簡単に理解できるものではない。だからこそ、「無知(not knowing)な姿勢」「聴かせてもらう姿勢」でじっくり聴こうとすることが必要である。早わかりしても、それはカウンセラーの思い込みにすぎず、クライエントとのあいだにずれを生じることが多い』

まずは、価値観が違うことを再認識して、謙虚に、ゆっくりと話を聴かせてもらうことである。
「急いては事をし損じる」と昔から言われるように、心にゆとりを持って対応したい。


5)正しく理解しているかどうか確認する

『クライエントを正しく理解するためには、クライエントの言ったことを繰り返して言ってみたり、自分が感じたとおりの言葉で言い表してみる。そうして、クライエントが納得したときには、こちらの理解が十分であったことが確認できる』

相手の隠された意味を含めて、確認することである。
質問が下手な人は、「こんなことを質問して笑われないかな?」と思ってしまう場合がある。
この場合は、質問の意味を間違って解釈している。
質問は、「確認する行為」もあるということを、再認識する必要がある。


6)クライエントの全体に気を配る

『クライエントを理解するためには、 相手の言葉だけでなく、非言語的な表現にも気を配って聴くことが必要である。 声の調子、表情、呼吸、姿勢、手や目の動きなどは、いずれも相手の気持ちを知る手がかりになる』

メラビアンの法則について、ウィキペディアから引用する。
『感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であった』
さらに、俗流解釈 として、
『この内容が次第に一人歩きをし、この法則から「見た目が一番重要」あるいは「話の内容よりも喋り方のテクニックが重要」という結論が導き出されると言う解釈が有名になっている』

メラビアンの法則の解釈は、どちらにしても、非言語的な表現が重要なことに違いない。
であるならば、相手の声の調子、表情、呼吸、姿勢、手や目の動きなどは、いずれも相手の気持ちを知る手がかりになるので、よく観察する必要がある。


7)自分に気づく

『傾聴するためには、カウンセラーは自分の状態に気づく必要がある。クライエントに対応しているとき、クライエントに触発され、動揺し影響を受けやすい自分自身の傾向があることに気づかなくてはならない。それに気づけば、クライエントの感情に巻き込まれたり、動揺することに対して、すばやく冷静に対処し、落ち着いて対応できるようになる』

相手と対峙する自分以外に、客観的に自分をチェックする第三の自分が必要である。
カウンセラーだけでなく、日常生活一般においても、この第三の自分を持っていると、チェック機能が働くようになり、失敗が減り、よりよい結果に結びつくこととなる。

傾聴の意義

2012-08-20 | コミュニケーション
●コミュニケーションの必要性

前回書いたように、無料の経営相談を企画している。
経営者の悩みや企業経営の相談が主体となる。
そこで、企業経営の実態を把握するためには、正しい情報をつかむ必要がある。
チェックリストからの情報も大切であるが、経営者の生の声はそれ以上に重要である。
そこで、適切に経営実態を把握するために、コミュニケーションスキルは必須条件である。

今回、このコミュニケーションスキルについて、学んでいきたい。
コミュニケーションの基本は、傾聴である。
この傾聴について、以前、産業カウンセラーで学んだ。
コミュニケーションの重要性について再確認したい。そこで当時のノートやテキストを紐解き、このブログに掲載する。


●傾聴の意義

傾聴とは、どのようなことだろうか。
次の4つのことが基本である。

・クライエントその人やクライエントの生き方や感じ方をを聴くことである。
・クライエントを受け止めることである。
クライエントの言葉、表情、態度、言い方から、クライエントの気持ちを受け止めることである。
・クライエントとより深い信頼関係を構築することである。
受け止めたことを、クライエントに伝え返す。そこで確認してもらい、必要に応じて修正し、正しい理解を行い、より深い信頼関係を築くことである。
・継続的に上記のようなサイクルを繰り返す努力を行うことで、クライエントの理解を深めることである。


●相手を理解する方法

相手を理解する方法として、3つのパターンが考えられる。

一つ目は、日常会話で行われている表面的な理解である。
日常会話を通じて、クライエントの一般的な情報、年齢・職業・地位・学歴・生育歴・能力・健康状態・家族等などを客観的なデータとして知ることである。

二つ目は、自分の知覚や準拠枠で理解することである。
これも、日常会話やコミュニケーションから得る情報に基づいている。
一つ目が、客観的データであるのに対して、こちらは主観的データである。
つまり、聞き手の判断基準に基づいて判断して理解することである。
専門用語でいえば、「準拠枠」に基づいて判断することである。
具体的に言えば、聞き手の経験、価値観、感情、知識、思考、創造力等のフィルターを通してクライエントの情報を集めることである。
このような方法は、クライエントに対して、間違った思い込みや、決めつけになりやすいので要注意である。
当時、この「準拠枠」を知り、愕然としたことがある。当時の私は、この「準拠枠」が強く、このような聞き方は、要注意ということを知った。
この新たな成長課題として取り組むことで、少しは人間的に進歩したような気がしている。
まだまだ、未熟な点もあるので、課題の一つとして残している。

三つ目は、相手とともに理解していく方法である。
この方法が、傾聴の基本である。
そのためには、自分の準拠枠を外すことが大切である。
そこで相手に寄り添い、内面の世界を理解することである。
常に、相手の感情・欲求・葛藤はどうなっているのだろうかと、自問することである。
さらに、「いま相手はどう感じているか」「周りの世界をどのようにみているか」と問いかけることが必要である。


●傾聴の前提となる考え方

傾聴の前提となる考え方として、「自己成長力」がある。
全ての人間が持っている力として、「成長する力」があり、「悩みを解決する能力」があるということである。
カウンセラーのの場合、問題解決は当人である。クライエント自身が、問題を直接解決する。
この点は、コーチングやコンサルタントと異なる。
コーチングの場合は、クライエントに対して質問する。現状を踏まえて、あるべき姿を仮定し、そのために必要な知識、行動、考え方の3点から質問を行うことで、クライエント自身が答えを引き出す。
コンサルタントの場合は、コーチングと同じように現状を踏まえて、あるべき姿を仮定し、そのために必要な知識、行動、考え方の3点から質問を行う。
ここまでは同じである。回答は、コンサルタントが主体となり、クライエントと共同で作り上げていく。

カウンセラーでも、コーチングでも、コンサルタントでも、「傾聴」は問題解決における重要な手段である。

続く。

無料の経営診断

2012-08-18 | 企業経営
●研修講師プログラム

現在、研修プログラムの作成準備段階である。

基本的テーマは、私のライフワークである「中小企業の経営支援」である。
そこで、どのような形式がよいか、試行錯誤を繰り返した結果、研修を通して無料の経営診断を行おうと考えている。
大企業においては、経営企画部があり、優秀なスタッフが大勢揃っており、経営戦略や経営計画を作成し、企業運営に携わっている。
一方で、中小企業においては、人材が乏しく、社長一人で何でもこなしている企業がほとんどである。
順調に企業経営が行われていればよいが、現在のようなデフレ状況の中で、相談相手もなく、苦しんでいる中小企業は数知れず存在する。
そこで、無料の経営診断や経営相談を行うことで、少しでも中小企業の経営者が元気をだしもらえればうれしい。その結果、経営改善に取り組み、課題が解決し、経営基盤が強化できれば、この企画者として、うれしい限りである。

そのためにも、しっかりした研修プログラムをつくらなければならない。
また、一方で、私の知識の整理を同時進行で行う必要がある。

なお、今回使用する事前チェックリストとして、東京都の「経営力向上チェックシート」を参考にする。


1 <戦略・経営者> 〔18項目〕

1-01 経営理念・社是は社内に浸透している
1-02 競争相手や取引先の動向、業界に関する動向を把握している
1-03 自社の強み・弱みを把握している
1-04 自社の事業領域(対象顧客・商品・提供方法・技術などの組み合わせ)は明確になっている
1-05 経営理念に基づいて戦略や事業計画を策定している
1-06 新しい商品・サービスの開発や、新しい仕入先・販売先の開拓を行っている
1-07 社員のアイデアや集めた情報を汲み上げ、新事業・新商品の開拓や顧客開拓に役立てている
1-08 他企業との連携を実施している
1-09 競争相手に勝つための戦略をたて、実行している
1-10 他社には真似できない「セールスポイント」が社内外に明確になっており、顧客から評価されている
1-11 他社事例を自社に合うようにアレンジして取り入れている
1-12 経営者が日常的に現場に出向いて直に意見を聞いている
1-13 経営者は現状に甘んじることなく、常に変革を意識して行動している
1-14 外部専門家を有効に活用している
1-15 外部の助言者(メンタ―)がいて、経営者としての悩みをいつでも相談できる
1-16 経営者・幹部が研究開発、営業活動を率先垂範で行っている
1-17 特定の販売先や仕入先に依存しないように、取引先を分散している
1-18 業務を分類した上で、効果的に外注を行っている

2 <マーケティング> 〔10項目〕

2-01 顧客ごとのニーズに基づき、商品やサービス提供の仕方にメリハリをつけている
2-02 自社商品・サービスの価格は、顧客や競争相手を考慮した客観的データに基づいている
2-03 価格競争に巻き込まれないために、価格以外の魅力や独自性を顧客にアピールできている
2-04 本社・店舗・工場など、拠点の立地特性(交通の便、商圏人口)を理解している
2-05 カタログ・チラシ・ホームページなどにより、積極的に販売促進活動を行っている
2-06 自社の商品・サービスに顧客がどれだけ満足しているかを客観的に把握している
2-07 クレーム対応の方法を定め、迅速、適切に処理している
2-08 顧客データを活用して継続的接触など、顧客との長期的な関係を維持する仕組みがある
2-09 流通経路、中間業者の数やタイプを適切に選択するなど、自社の商品・サービスを顧客のもとへ効率的に提供する流れができている
2-10 口コミの発生促進や紹介制度など、客が客を呼ぶような工夫をしている


3 <人材・組織> 〔16項目〕

3-01 魅力ある職場づくりを行うなど、人材確保や社員の定着を図るための工夫をしている
3-02 継続的かつ具体的に、しつけ教育に取り組んでいる
3-03 社内の命令系統や権限・責任が定められ、社員もこれを理解している
3-04 業務分担などの社内体制は、柔軟に変更し改善を図っている
3-05 社員の健康増進に向けた取り組みを行っている
3-06 適性に応じ、女性、高齢者、海外人材など多様な人材を採用し、活用している
3-07 事業を継承する候補者を定め、計画的に承継を進めている
3-08 採用したい人物像の基準が明確になっている
3-09 経営者(または管理者)は、社員の特徴や能力を把握し、具体的な目標を本人に提示している
3-10 技能やノウハウの承継を含めた、OJT教育を計画的に実施している
3-11 社員を社内外の勉強会やセミナーに積極的に参加させている
3-12 経営者の参謀・右腕となる幹部が育っている
3-13 賃金制度や人事・評価制度を明確にしている
3-14 仕事の面白さを体験させるなど、社員のやる気を引き出す工夫をしている
3-15 営業や生産など部門間が対立することなく、同じ目標に向かって協力できている
3-16 社員の経営参加(参画)の仕組みを構築している


4 <運営管理> 〔7項目〕

4-01 社内は整理整頓され、清潔が保たれている
4-02 商品や生産現場の状況が誰にでもわかるように「見える化」に取り組んでいる
4-03 商品や販売などの計画、日常の具体的な行動目標を作成し、検証を行っている
4-04 顧客別、品目別などの販売状況が、すぐに把握できている
4-05 商品、原材料、消耗品などの在庫状況を把握しており、適正量を維持している
4-06 業務の効率化を図るために、IT化を推進している
4-07 事業の内容、進行状況、運営上の問題点などの情報を、社員間で共有している


5 <財務管理> 〔9項目〕

5-01 月次試算表に基づいて、最新の財務状況を把握している
5-02 資金繰り表を作成し、必要資金の管理を行っている
5-03 自社の粗利益率の現在水準と傾向を把握している
5-04 損益分岐点(収支トントン)の売上高を把握している
5-05 売上高や利益など、経営の具体的な数値目標や計画を設定している
5-06 設備投資や備品の購入は計画的に行っている
5-07 経理や会計手続きがルール化されている
5-08 過度に借金に依存しないよう心がけている
5-09 複数の金融機関と取引するなど、特定の金融機関に依存しないようにしている


6 <危機管理・知財・CSR> 〔10項目〕

6-01 経営者の有事の際の対応について定めている
6-02 自社にとって悪い情報がすぐに経営者に伝わる組織になっている
6-03 災害時の事業承継に必要な具体的対応策を定めている
6-04 個人情報保護など事業活動に関連する重要な法令を把握し遵守している
6-05 地域社会に貢献する取り組みを積極的に行っている
6-06 省エネルギ―設備の導入など、省エネルギー対策に力をいれている
6-07 3Rに積極的に取り組んでいる
(3Rとは、リディース=廃棄物の抑制、リユース=再利用、リサイクル=再資源化)
6-08 特許・ブランド・デザイン・営業秘密など、知的財産の活用に意識的に取り組んでいる
6-09 自社および競合相手の知的財産を把握・整理している
6-10 商品の製造方法や業務のやり方など、秘密にすべきノウハウを管理する仕組みがある


7 <最近の業績> 

7-01 今期(現時点)の売上高(前期同時点に比べ)は?
7-02 前期の売上高(前々期決算に比べ)は?
7-03 今期(現時点)の利益状況(経常利益)は?
7-04 前期決算の利益状況(経常利益)は?


8 <経営課題> 

今貴社が抱えている経営課題、相談したい事項は、具体的にどのようなことですか?

以上の項目と財務諸表を確認することで、一般的には経営概況は理解できる。
その後、ヒアリングを行うことで問題点を洗い出し、どのようなアドバイスができるかは、私次第ということになる。