hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

傾聴の基本的態度と心構え

2012-08-21 | コミュニケーション
傾聴の「基本的態度」と「心構え」を述べる。

産業カウンセラー養成講座のテキスト(社団法人:日本産業カウンセラー協会)から、必要な情報を抜出し、引用(『 』部分)する。

●傾聴の基本的態度

ロジャースは、カウンセラーの基本的態度として、3つの条件をあげている。

1) 自己一致、一致(congruence)

『誠実で正直であること。カウンセラーがうわべを飾ったり、見せかけの態度ではなく、ありのままの自分であるとき、クライエントとの真の援助関係が成り立つ。一致とは、こころに感じたことと言動にずれがないことである。ロジャースは、genuineness(純粋、ほんもの)、transparence(透明、隠しごとがないこと)などの言葉を使って、自己一致を説明している』

「こころ」と「言動」が一致する例として、まずいカレーライスを上司の課長からご馳走になった場合どうするか、というのが養成講座での課題であった。
「美味しいカレーライスですね」というのは、明らかに「こころ」と「言動」が一致していない。では、「不味いカレーですね」と言えるだろうか。折角、上司からご馳走になっているのに、このような言葉は口がさけても言えまい。
そこで、「課長は、このような味が好きなのですね」と答えることで、上司の顔を立てることもでき、あなたの素直な感情も表現できる、というのである。


2) 無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard )、受容(acceptance)

『相手をそのまま受け入れること。どんな相手であっても、あるいはその人の考え方や行動が容認できなくても、(その人の存在そのものを)選択したり、評価することなく、すべて受け入れる。regardには、注意、尊重、尊敬、こころ配りなどの意味が含まれる。受容という態度の奥には、クライエントを一個の人間として、こころから大切にし、尊重するという人間観がある』

相手の心を尊重して相手の考え方や行動を無条件に受け入れる、ことである。
果たして、素直に受け入れることができるであろうか?
以前の私のように、準拠枠が強ければ、「この点はよいが、ここはダメ」と自分のフィルターを通して相手を見ることになる。
「このような見方はだめですよ」、と言っている。まずは、相手を尊敬して、無条件で、相手の考え方や行動を受け止めることである。


3) 共感的理解、共感(empathic understanding)

『相手の見方、感じ方、考え方を、その人の身になり立場に立って、見たり、感じたり、考えたりすること。それはロジャースによれば、「クライエントの私的な世界を、あたかも自分自身のものであるかのように感じる」ことである。「あたかも」というように、クライエントの世界に入り込み、本人と同じように感じ取りながらも、カウンセラーは決して怒りや混乱などに巻き込まれず、平静で客観的でなくてはならない』

人間誰でも、自分を理解してくれる仲間を求めている。
そこで自分の見方、感じ方、考え方を理解してくれる人がいれば、好意を寄せるだろう。

このことは、カウンセラー業務だけではない。
中小企業の経営者とのコミュニケーションにおいても、信頼関係をつくるためには、受容し、共感することが非常に重要なことである。


●傾聴の心構え

ここでは、傾聴の際の心構えを述べる。

1)クライエントが言おうとすることの意味を聴き、気持ちに応える

『カウンセリングでは、話す事柄よりも、その背後にある「感情」のほうがはるかに重要なことが多い。こうしたときには、クライエントが言っていることの本当の意味を理解するために、感情的な意味の部分に対して伝え返してみる。クライエントの言っていることが、その人にとってどんな意味であるのだろうか、自分に何を伝えたいのだろうか、このことについてどう感じているのだろうか、などといった全体的な意味を理解しようとすることが大切である』

言葉に背後にある「感情」「気持ち」をつかまえる。
言っていることは、よくわかる。
自分の過去の経験からすると、この部分への配慮が不十分であったと反省し、新たな課題として取り組んでいる。
中小企業の経営者の方は、自分を確立されている方が多く、本音を言わないことが多々ある。
その場合、経営者の言葉から、「この言葉は、経営者にとってどんな意味があるのだろうか」「本当に伝えたいことは何なのだろうか」「このことについてどう感じているのだろうか」と相手の気持ちを推敲し、少しでも気持ちに応えることが、今の課題である。


2)準拠枠できかない

『クライエントの話をきくとき、自分の価値観や先入観に支配されてはいけない。カウンセラーの準拠枠で話をきくと、クライエントが大事に思うことはこぼれ落ちてしまうし、聴く耳をもてなくなるだろう。カウンセラーは、自分自身の個人的な価値判断をまず脇において、クライエントのつたえたいことをあるがまま、自分の中に入ってくるような聴き方をすることが大切である。
一人ひとりのクライエントは、それぞれ独自の経験をしており、カウンセラーが傾聴するのは、その人独自の経験を理解することにあるからである』

人間それぞれ人生があり、自分の価値観がある。
もし、自分の価値観が「絶対である」と考えたら、自分以外の価値観を受け止めることができない。仮に、「私は何事に対してもチャレンジしていく」という人もいれば、「おかしく楽しい生活がした」という人もいるだろう。
ここで大切なことは、良い悪いを説いているのではなく、価値観の相違を認めることである。
自分一点を見つめていると、「準拠枠」が強くなるだろう。
その場合、一段上から、俯瞰的に眺めることで、その対応の仕方に幅を広げることができる。


3)結論を急がない

『クライエントが相談に来たとき、カウンセラーとしては、できるだけ早くその問題を解決してあげたいと思う。しかし、役立ちたいという気持ちを抑えて、相手に自分の考えを押し付けたり、指導しようとしたりぜずに、まずよい聴き手になることである』

気の早い人は、結論を急ぐ。
しかも、相手の言葉を遮り、自分の価値観で判断して指導しようとする。中高年の男性に多いタイプである。だから、若い人から嫌われる(?)のだろう。


4)「無知の姿勢」で聴く

『クライエントのこころの軌跡はそう簡単に理解できるものではない。だからこそ、「無知(not knowing)な姿勢」「聴かせてもらう姿勢」でじっくり聴こうとすることが必要である。早わかりしても、それはカウンセラーの思い込みにすぎず、クライエントとのあいだにずれを生じることが多い』

まずは、価値観が違うことを再認識して、謙虚に、ゆっくりと話を聴かせてもらうことである。
「急いては事をし損じる」と昔から言われるように、心にゆとりを持って対応したい。


5)正しく理解しているかどうか確認する

『クライエントを正しく理解するためには、クライエントの言ったことを繰り返して言ってみたり、自分が感じたとおりの言葉で言い表してみる。そうして、クライエントが納得したときには、こちらの理解が十分であったことが確認できる』

相手の隠された意味を含めて、確認することである。
質問が下手な人は、「こんなことを質問して笑われないかな?」と思ってしまう場合がある。
この場合は、質問の意味を間違って解釈している。
質問は、「確認する行為」もあるということを、再認識する必要がある。


6)クライエントの全体に気を配る

『クライエントを理解するためには、 相手の言葉だけでなく、非言語的な表現にも気を配って聴くことが必要である。 声の調子、表情、呼吸、姿勢、手や目の動きなどは、いずれも相手の気持ちを知る手がかりになる』

メラビアンの法則について、ウィキペディアから引用する。
『感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であった』
さらに、俗流解釈 として、
『この内容が次第に一人歩きをし、この法則から「見た目が一番重要」あるいは「話の内容よりも喋り方のテクニックが重要」という結論が導き出されると言う解釈が有名になっている』

メラビアンの法則の解釈は、どちらにしても、非言語的な表現が重要なことに違いない。
であるならば、相手の声の調子、表情、呼吸、姿勢、手や目の動きなどは、いずれも相手の気持ちを知る手がかりになるので、よく観察する必要がある。


7)自分に気づく

『傾聴するためには、カウンセラーは自分の状態に気づく必要がある。クライエントに対応しているとき、クライエントに触発され、動揺し影響を受けやすい自分自身の傾向があることに気づかなくてはならない。それに気づけば、クライエントの感情に巻き込まれたり、動揺することに対して、すばやく冷静に対処し、落ち着いて対応できるようになる』

相手と対峙する自分以外に、客観的に自分をチェックする第三の自分が必要である。
カウンセラーだけでなく、日常生活一般においても、この第三の自分を持っていると、チェック機能が働くようになり、失敗が減り、よりよい結果に結びつくこととなる。