hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

アメリカ軍トモダチ作戦から学ぶこと

2012-05-16 | 企業経営
●建設業の評価
3.11の東日本大地震から1年以上経つが、建設業界が行なった復興支援に対して、評価が芳しくない。
建設業界は官民一体となって、被災者に対する支援活動を行い、また個々の企業も独自の救援活動を行った。
くしの歯作戦と銘打って幹線道路の復旧、それに伴う各市町村への横断道の復旧に日夜構わず、全力で物資輸送の生命線の復旧に寄与した。
このことは、胸を張り堂々と言えることであり、決して後ろ指を指される行為ではない。
しかし、建設業のこれらの行動に対して、マスコミをはじめ地元の被災者から高い評価を受けていない。
むしろ低い評価である。

なぜだろうか。

●アメリカ軍や自衛隊の評価
一方で、自衛隊の救援活動やアメリカ軍のトモダチ作戦は、好意的に受け止められている。
彼らの活動は、本当にすばらしいし、心から感謝するに尊敬に値する。
アメリカ軍に対する評価は、以前は「戦争」というイメージに結びついていたが、彼らの子供や被災者に対する心温たまる行為に対して、高い評価に変わった。
自衛隊に対する評価も、以前は冷たい目で見ていたが、彼らの献身的な行動に対して、多くの国民が称賛を贈っている。
なぜだろうか。
被災者救援に対して、行った形は違ったとしても、行った行為は、アメリカ軍や自衛隊と同じだと思う。
社会的にみて、なぜそのように評価に大きな差がでたのであろうか?

●マスコミの考え方
確かに、マスコミはアメリカ軍のトモダチ作戦は、特集を組みTVで放映している。
自衛隊の救援活動に対しても、新聞やテレビなどで連日伝えており、国民の関心事も高かったことは事実である。
その結果、TV局は視聴率も上がり、報道業界としては、成果がでたと思う。
一方で、建設業界に関するテレビ報道はあったのだろうか。
あったかもしれないが、わずかであり、記憶に残るものは少なかったと思う。
また、うがった見方をすれば、「建設業界」の努力を放映しても、視聴率は上がらない。
それよりも、いくら報道番組であっても、TVは営利企業である。
さらに顧客である視聴者が喜ぶのは、アメリカ軍のトモダチ作戦であり、自衛隊の必死の救援活動である。
TVは、視聴率が大前提であるので、視聴率を稼ぐ対象を選ぶのは当然であろう。

●「事実」と「真実」の違い
アメリカ軍のトモダチ作戦や自衛隊の救援活動は、「事実」である。しかし、復旧支援活動は、それが「真実」ではないことを認識することが必要である。
実際、建設業界だけでなく、運送業界、食料品メーカーなどの国内メーカー、さらに海外からもたくさんの支援を受けたことは記憶に残っている。
「真実」はアメリカ軍、自衛隊、建設業界、運送業界、食品業界などの国内すべての業界や国民、さらに世界中の人々や企業から支援を受けたことである。
ということは、一つの業界の中で、評価が高い、低いということ事態が、自分軸で考えている証拠である。
だから、建設業界は口下手で、プレゼンテーションが下手である、そのために評価が低いなどと討論をしているが、的が外れているといわれてもしかたがない。

●建設業界に対する国民的感情
建設業界に対する感情は、決してよいとはいえない。
その昔、某全国紙が地方の談合問題をすっぱ抜いてから、建設業は、世の中では悪者扱いである。確かに、政・官・財が癒着して、談合問題はあったと思う。最近でも、某政治家が、献金問題を発端として、国を揺るがす問題まで発展していた。
そのように、一旦、「悪者」というレッテルが貼られると、イメージを回復するには相当の時間がかかる。

子供のころ、小学校でも、中学でも、いじめられっ子がいた。
一人をいじめることで、他の子供たちは、共同戦線をはり、自分の身を守っていたような気がする。そのような風土が、日本全国であるような気がする。
建設業も、社会のいじめられっ子と扱われているのではないか。
今後、どのようにすればイメージアップできるか。
自衛隊も長い間、「税金泥棒」と言われてきた。
彼らは歯を食いしばり、必死に国民のために尽くしてきた。
その結果が、今回の大震災の支援活動に結びついている。
建設業界も、政官財共同で、真摯な気持ちでイメージアップの方法を考える必要がある。

●増える土木学科受験生
しかし、見ている人たちはいる。
多くの優秀な技術者たちは、国民の生命・財産を守るために、日夜一生懸命に働いている姿を子どもたちは見ていた。
ある首都圏の大学のデータによると、受験生の総数は減っているのに、土木学科の志願者は3割ほど増えているという。このような現象は複数の大学で起こっている。
折角イメージアップが図られているので、引き続き継続的な努力が重要である。

●国交省高官の心配事
ケンプラッツという土木の業界誌から引用する。
『しかし、建設業界はそれで終わりにしている。復旧や復興に向けた予算が付き、我が世の春がやって来たかのようにふるまっていると、社会は「建設業界は結局、金もうけのためにやったのか」というムードになってしまう。イメージの改善には、継続的に取り組まなければならない。このタイミングでやらなければ、再び逆風の世界が待っている。』
まさにその通りである。
阪神淡路大震災の時の話である。
神戸のビルのオーナーたちの会話として、「うちにはO社からタオルがギョウサンできたで。会社のネーム入れのやつが。うちにもそうや。K社の営業が、やはりタオルをギョウサンもっていた。やつらは、震災後のビルの改修工事狙っているだけや」
これは、関西出身で被災体験者である有名女性講演講師からから聞いた話である。

世間の目は、自分たちが考えている以上に鋭い目線で業界を見ており、その洞察力は鋭いことをわきまえる必要がある。


●相手の気持ち
アメリカ軍や自衛隊の救援活動は、常に被災者の気持ちを考えて行動していたと思う。
一方、同じ行動でも、建設業界は、どうような気持ちで行動していただろうか?
救援支援をすることで、将来のビジネスにつながると考えていたのではないだろうか?
確かに、企業としては常にビジネスを考えることは重要である。
口では言わなくても、心の中にはそのような気持ちが潜んでいると思う。
一方、アメリカ軍や自衛隊の人々は、どうであろうか。
自分中心では考えているだろうか。
つねに相手の気持ちを考えて行動しているのではないだろうか。
このことは重要である。
人間は敏感である。
特に心の問題に関しては、科学では証明できないほど、高度なセンサーを持っている。
一見同じ行動でも、自分軸と相手軸では心理的には180度異なるのではないか。
そのことを被災者は敏感に感じ取っていたのではないだろうか。
その結果、アンケートの数字が、アメリカ軍や自衛隊に比べて、極端に低い数字として表れていると思われる。
『自分軸か、相手軸か』、今はどの軸で考える必要があるか、考える時であろう。


●目的は、誰のためにあるのか
産業界等からは、コスト高になり、国際競争力が低下するので、原発の早期再開を望む声がある一方で、原発早期廃止は、多くの国民から賛同を受けている。

先日は、全国の市町村の代表が、「国民の生命・財産を守るため」経済産業省に原発廃止の申し入れを行っている。
なぜ、彼らの主張は、多くの国民から賛同を受けるのであろうか。
あくまでも、彼らが主張することは、地域の子供、自分の子孫のために、行動を起こしている。
彼らの主張や目的は、国民目線であり、公明正大である。

尊敬する師である稲盛和夫氏は、「利他の心」で対応することが重要である、といっている。
ピーター・ドラッカー氏は「マネジメント」の本の中では、「常に顧客目線で考えよ」と言っている。
いくらビジネスであっても、相手の立場や気持ちを考えて行動せよ。
そうすれば回り回って自ずと仕事が舞い込み、収益アップにつながる、と述べている。

●「顧客第一」とは??
建設業界全体の理念はどうであろうか?
また、個々の企業の経営理念はどうであろうか?
多くの企業では経営理念の中に「顧客第一」と掲げている。
「顧客第一」は素晴らしい理念だと思う。

その理念は、社員全員に浸透しているだろうか?
経営者は社員全員に浸透していることを、どのように判断しているのだろうか?

「顧客第一」とは、実際にどのような行動をするのだろうか?
それ以前に、経営者をはじめ各担当者が、「顧客第一」を理解して行動しているのだろうか?

顧客は外部だけではない。社内にもいる。
「次工程はお客様」というが、例えば、設計部門は施工部門のことを考えて設計をしているのだろか。
目先の利益や、自部門の都合だけで、行動をしていないだろうか。

「顧客第一」という理念を自分の中に落とし込み、消化して自分なりにアレンジして行動することができて、初めて「顧客第一」が活き、顧客の心に響くであろう。

常に、お客様の立場や感情をくみ取って考えることによって、お客様が喜び、感動してくれると思う。
しかし、簡単にはできない。
なぜならば、企業文化は、長年、身に沁みこんだものであり、国交省高官が心配しているように、簡単に変えられるものではない。

ある意味では、企業文化も「スキル」である。
であるならば、毎日、全員で朝礼を行い、『企業理念』を唱えることが必要である。
そうすれば、本当の意味の「顧客第一」を体で覚えて実行する必要がある。
一部上場企業で、経営者自らが率先して、「企業理念」を唱えている会社を知っている。
当然、超優良企業であるのは、いうまでもない。

建設業界も、経営者をはじめ新入社員一人ひとりが『顧客第一』を理解し、顧客目線で実践することではないだろうか。
そうすることにより、世の中のいじめっ子から脱却できる。
そうすれば、いつの日にかは、アメリカ軍や自衛隊のような高い評価を得ることができるであろう。