hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

「平成建設」の経営戦略から学ぶ 続編

2012-05-15 | 企業経営
平成建設の「内製化」については、前回書いた。

「内製化」のメリットについて、再度確認する。

内容については、平成建設のHPから引用する。

営業や現場監督のみならず、設計や大工、多能技能工(とび・土工・型枠大工・配筋・重機操作)までが同じ会社の社員である。そのため、「お客様=お施主様」という認識が共有される。
結果として、お客様の要望を、あらゆる部門が共有化し、即座に施工に反映させ、顧客満足度を向上させることができる。
さらに、それぞれの業務が密接に連携することによって、複数の業務を並行作業することで工期短縮を図り、さらに無駄な打ち合わせ、無駄な作業工程など、目に見えにくい「無駄」を減らすことが可能となる
また、すべてのプロセスにおける情報のフィードバックをリアルタイムに行うことで、さらなる業務の効率化、良質なサービスの提供を可能となっている。
その結果、社内に蓄積するノウハウ、技術力をもとに、良質な建物、さらなるサービスの向上、安心できるアフターメンテナンスをお客様に提供することができる。

この内製化を基軸として、平成建設は、もう一段階高い企業戦略を考案して実行している。

そこで、今回は、「ショッピングセンター方式」について学ぶ。
「ショッピングセンター方式」は何か?
ショッピングセンターには、色々な店がある。
洋服店、履物店、靴屋、花屋、宝石店、時計店、果物屋、ファーストフード店、ファミリーレストラン、書店、カバン屋、美容院、銀行窓口、歯医者、内科・小児科医院、生鮮3品(青果・精肉・鮮魚)を取り扱うスーパーなどなど、あらゆる業種の店が考えられる。

その際、ターゲット顧客を定めていることを見逃してはならない。
新興住宅地であれば、若い世代のファミリー層をターゲットとしている。
上記の宝石店や洋服店などで、高級ブランド品を売ってもあまり売れない。多くの消費者は、高級ブランド品を、地元のショッピングセンターで買う人は少ない。週末に近くの大都市へ行き、専門店で買うことだろう。

そのため、ターゲットの顧客層に合わせた店を入居させることが重要である。
若い世代のファミリー層をターゲットとしているショッピングセンターであれば、毎日利用する生鮮3品の売り場面積を大きくしたい。
歯医者、内科・小児科医院は必需品(?)である。
子供たちが、急に発熱したり、腹痛を起こす可能性も多々ある。
是非入居させる店舗である。
昼間、母親たちが集うファーストフード店やレストランも必要である。

以前、仕事柄、郊外型のファミリーレストランで食事をする機会が多々あった。
その時、どの店でも主役は女性であり、主婦層であった。
旦那は、立ち食いそばで昼飯を済ませているのに、こちらではランチパーティである。
この情景を見たら、旦那はどのように思うのか、と何度も驚かされた風景である。

つまり、「ショッピングセンター方式」では、ターゲットを明確に定め、顧客ニーズに沿った総合的ソリューションを提案し、顧客満足度を高め、永続的な関係を築くことである。

このような「ショッピングセンター方式」的な考え方を「平成建設」の戦略では採用している。

「平成建設」のターゲットは、富裕層である。
富裕層の中でも、医者や歯医者をターゲットとしている。
つまり、顧客として、『医院・歯科医院の建設を考えている医者や歯医者』を考えている。

医者や歯医者は、内科医として、小児科として、また歯医者としてはその道のプロである。
しかし、開業医として、経営に関するノウハウは有しているだろうか。
開業歯科医としては、すぐに食べていけるのであろうか。

今、歯科医を開業するには、相当な準備資金がいる。
どこから、お金を調達するのか。
お金が集まり、開業できても、顧客が来るのであろうか。
都会の歯科医は、過剰供給気味で競争も厳しい。

実際、開業を決意してから医院が開設されるまでのプロセスは長い。
書類作成、関連機関への申請、市場調査や借入金返済計画などなど、開業医を目指すドクターにとっては、馴染みのない業務であり、過去に経験してことがない業務である。

そこで、多くの医者がなじみのない開業までのプロセスをサポートするという、ソフト面に焦点を当て、開業医をめざすドクターをサポートしている。

「内製化」を大きな差別化の柱として、高級住宅専門で設計施工するというはハード面が強みとなっている。
が、それ以上に、開業準備から市場調査、建築、開業に際しての広告・看板作成、ホームページ開設のサポート、アフターサービスまで一貫した医院運営等のソフト面での支援体制が充実している。
このようなソフト面に着眼した経営戦略は、本当の強みと思う。
さらに、このビジネスモデルを構築した秋元社長は、並の経営者ではないことは間違いない。

平成建設の考えられる「強み」を、「開業準備段階」「施工段階」「開業の運営段階」の3つの段階に分けて、考えたい。

1 開業準備段階

●特定地域(静岡県東部)に特化していること
・最新の土地情報や賃貸物件情報、地域の開院状況、住人の転入転出の増減など、開業に必要な様々なデータを把握している。そのため、開業に適した土地・賃貸物件などお客様に対して迅速に提供できる。
・地元の銀行や会計事務所と太いパイプがある。開業希望地域の情報収集から開業後の会計処理まで、広く医院運営の支援が可能となる。

●診療圏調査
・20年同地域で建築工事をしているため、豊富な土地情報を持っている。
さらに、近隣の医療施設のデータがあるため、診療圏調査に強い専門企業と協力して、医院建築を予定している土地から500m、1Kmと距離を測り、その圏内の医療に関する詳細な情報を提供できる。 該当地域内の年齢別人口や男女別人口、世帯数、既存の医療機関の数、診療科目の比率など、これら詳細な情報をもとに見込み患者数を算出し、開業後の経営をシミュレーションできる。

●開業のための融資試算と事業計画立案
事業計画案に必要な基本項目は、どの地域で開業するか、診療科目は何にするか、休日はどのくらい取るか、などがある。
さらに、保険診療収入などの収益の予想や、人件費、地代家賃、減価償却費や支払利息の計算まで、 詳細で多岐にわたる内容が必要である。
このような複雑な試算や書類の作成に対して、豊富な経験を持つ医院開業のプロ、医院経営のプロと連携して、支援体制ができている。

2 施工段階

●医院建築に特化していること
医院建築の施工実績が豊富であり、そのノウハウが蓄積されている。
その結果、お客様のニーズに合った医院建築が可能となる。

●医院設計に特化した設計士がいること
専任の設計士が、ドクターのニーズを把握して、物件ごとに、最良のデザインを提供している。医院は立地条件や診療科目によって来患される方々の傾向が変わり、結果として好まれるデザインも異なる。 医院建築に関する豊富な実績を持っているため、的確なアドバイスで、地域の顧客に親しまれる医院デザインを提案できる。

●内製化
「内製化」については、上記を確認していただきたい。

3 開業後の運営段階

●人材サポート・関連省庁への手続き
開業に必要な諸手続き、また、開業後のスタッフの雇用、人材教育を行っている。

●開業後の経営コンサルタント
開業後の経営コンサルタント、会計業務をトータルでサポートしている。

●医療法人設立支援
医療法人の設立には、様々なメリットとデメリットがある。
それぞれのケースを個別に検証し、医療法人設立に向けての経営アドバイス、また関連手続きの代行を行っている。

●事業継承対策
事業を継承するにあたり発生する、贈与・相続などの税金問題がある。
さらに建物のリフォーム、医療器具の入れ替えなど、中期的な計画をもとにスムーズな事業継承への支援が可能である。

●各種税務相談・会計業務
事業主となられると、税務や会計についての色々な疑問に直面する事がある。
それら疑問点や相談に丁寧に対応し、医院の会計処理についての指導を行っている。

●アフターメンテンアンス
平成建設は地元に根ざした企業であり、 建物の完成後にも定期的にアフターメンテナンスが可能である。

仮に、アフターメンテナンスなどの対応が悪かったとしよう。
顧客も施工者も地元であるため、悪い評判はすぐに広まり、信用が失われ経営に影響する。
そのような事態を予測し、万全な体制で顧客をサポートしていると推定する。
その結果、10年、20年先の増改築やリフォームの際にも、新築当時のデータとその後の継続的な情報を持って細やかに対応が可能となる。

技術的なハード面を充実している会社は多くある。
しかし、平成建設のように、ソフト面を充実している会社がどれだけあるだろうか?

平成建設は、創業以来、黒字経営である。

その要因は、建築を基軸にした総合的なソリューション提案であり、ソフト面での差別化であることには間違いない。