hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

「事業の定義」と「人格者」

2012-05-02 | 企業経営

今日は、「事業を定義する」について検討する。

『小宮氏著書:ドラッカーが「マネジメント」で一番伝えたかったこと』から引用を行う。

『「われわれの事業は何か」を問うことこそ、トップマネジメントの責務である。(エッセンシャル版p23)
ドラッカー氏は、「自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。鉄鋼会社は鉄をつくり、鉄道会社は貨物と乗客を運び、保険会社は火災の危険を引き受け、銀行は金を貸す」と述べている。
単純に事業内容のことを指すなら、鉄鋼会社の事業内容は鉄を作ること、となる。
しかし、ドラッカー氏の言う「われわれの事業は何か」というのは、事業内容を指しているのではない。
それは、「お客様に求められる事業の本質は何か」を考えるという意味だと解釈する。』

この解釈を読んですっきりした。
「事業」ということばを、「事業の本質」と置き換えることでよくわかる。
私は、「われわれの事業は何か」という言葉に対して、正直、心の底から理解できていなかった。
たった一言、「本質」を加えることで、言葉が意味することがわかる。

さらに小宮氏は、鉄鋼会社の「事業の本質」を具体的に掘り下げ、解釈している。
ありがたいことである。
本当に優れたコンサルタントは、難しい内容を、誰でもわかるように、本質を捉え、やさしい言葉で表してくれる。
この姿勢は見習うべきであるし、さらにそのレベルに達するよう、日々努力したい。

この事例を読むとよくわかる。

『鉄鋼会社であれば、単に鉄を作ればいいというわけではなく、お客様や社会は何のために鉄を欲しているのか、鉄をどのように使っているのか、鉄の代替物は何かなどを徹底的に考えた上で、お客様に真に喜ばれ、求められるような鉄を提供するには、どうすればいいのかを考えなければならない、という意味である。』

では、私の場合はどうであろうか。
将来、講演者を目指しているので、「鉄鋼会社」を「講演者」に置き換えてみる。

≪講演者は、ただ話をすればいいというわけでなく、お客様や社会は何のために私の講演を欲しているのか、講演を聴くことでどのように役立てているのか、講演の代替物は何か、などを徹底的に考えた上で、お客様に真に喜ばれ、求められる講演を提供するには、どうすればいいのか考えなければならない≫
まさに、その通りである。
2年前から自分探しをはじめて、やっとここまで到達した。
考えることで、少しずつではあるが、雲の隙間から将来が見えてくることがある。
夜明けの来ない、夜はない。
今は夜明け前の闇夜かもしれないが、必ず輝かしい朝日は昇る。
もうひと踏ん張りである。
このブログを書くことを通じて、自分の将来像が明確になると信じている。

話を戻すことにする。

『ドラッカー氏は「われわれの事業は何か」との問いは、ほとんどの場合、応えることが難しい問題である、としながらも「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる』と述べているからである。

このフレーズは、エッセンシャル版のp23「われわれの事業は何か」にすべて書かれている。

私もこのページは10回近くみている。
しかし、小宮氏とでは、キーワード、キーフレーズの選び方が違う。同じ文章を読んでも捉え方が異なる。本質を見抜く力が、小宮氏は数段上である。
これは、「現役の一流コンサルタント」と「将来の一流講演者の見習い中」との差か。
この結果を素直に受け止めたい。
真摯に受け止めることで、新たな課題が見つかり、モチベーションアップにつながる。
良い書物、良い人間と付き合うことで、たくさんの課題が見つかり、イノベーションとなり、自分の成長につながる。これを毎日続けることで、1年後3年後の成長が楽しみである。

さらに小宮氏の解説は続く。
事業を定義する際も、「外部すなわち顧客と市場の観点から見て」いかなければならない。
つまり、「われわれの事業は何か」というのは、「お客様をはじめ外部から、求められるような事業やその本質は何か」と考えることである。

実は所用があり、5月1日に記した記事は、ここまでである。
続いて5月2日、午前3時から再開である。

事業の定義は重要である。企業理念やビジョンも大切である。
なぜ、大切なのか。

一般論からすれば、景気の悪い時、企業はどうであろうか。

現在は、一部の業界を除いて、景気は芳しくない。
そのとき、社員はどのような行動をとるか?

事業の目的が明確であり、日々経営者が企業理念やビジョンを語っていれば、従業員は、納得して、一生懸命働くと思う。
全力を出し切れ、知恵も働き、アイデアも出てる。
その結果、イノベーションがおこり、マーケティングも改善され、収益アップにつながる。

しかし、経営者が、「利益を上げろ!」「売上をあげろ!」と声を荒げ、「お前たちは根性が足りない。もっと工夫しろ」とどなったら従業員はどのように受け止めるであろうか?

従業員も生活がかかっているので、それなりに、一生懸命やっている。
自分なりに工夫してやっても成果が上がらない。夜も遅くまでやり、土曜日・日曜日にも出勤。もう疲れ切っている。
その結果、最悪は、うつ病にかかり、ストレスからの自殺である。新聞紙上でよく見るパターンである。
当然このような会社は、倒産することになる。

何が悪いのか。

経営者は利益が・売上が上がらないのは従業員が悪いと思っている。

そうだろうか?
そのような会社に限って、景気の波にのり、上昇した会社である。

景気がよい時は、景気の波に乗り、それなりの売上があがり、利益もでる。
その結果、給与も上がり、ボーナスもたくさん出る。
そうすれば、社員も喜び、一生懸命働く。
景気がよいのは、経営者の努力であろうか?
厳しい言い方をすれば、たまたま運が良かっただけ。
この運を呼び寄せることも経営者の手腕と思うが。

しかし、景気が悪くなると、どうなるかは周知のごとくである。

やはり、事業の定義は重要である。
企業理念やビジョンも大切である。

経営者が、常日頃、篤き思いで、「企業理念やビジョン」を宣教師のように、直接語っていれば、従業員の心にも響き、会社の経営計画に従い、自分なりに業務を工夫して生産性を高め、会社の収益に貢献すると思う。
このことに、気づいていない経営者が多い。

もう一つ大切なことがある。
それは、経営者を人間として尊敬できるかどうかである。

最近、このことはよく考える。
心から尊敬できる人物であれば、経営者の言うことを信じて、従業員は心を入れ替えて全力投球する。

私が尊敬する経営者の一人に、稲盛和夫氏がいる。
周知のごとく、稲盛氏は一代で京セラをつくった偉大な経営者である。
その後、電電公社(現NTT)独占であった電話業界において、私財を投じて第二電電をつくって通信業界を大きく変貌させた。
さらに、最近の例では、日本航空の変革である。
すべてにおいて、稲盛氏は結果を出している。
氏の好きな言葉に、「敬天愛人」がある。天を敬い、人を愛す。
私利私欲をなくし、他人のために、どれだけ尽くすことができるか、と私は理解している。

しかし、稲盛氏や松下幸之助氏は、資産家である。さらに『利益を目的としてはいけない』と言っている。話が違うのではないか、と感じるかもしれない。
利益は、良い仕事をした成果である。その成果が積もり積もって資産家になっただけである。

小宮氏も、このことに関して次のように記述している。
『松下幸之助さんや稲盛和夫さんは“私利私欲”をなくすことが大切だとおっしゃっている。このことは、利益を目的としてはいけない」ということと同じことである。
「良い仕事」をした結果、金持ちになるのは私利私欲ではない。
逆に、金持ちになりたい、地位や名誉が欲しい、と思って仕事をしているうちは、私利私欲である。学者が良い研究をしてノーベル賞をもらうのも、スポーツ選手が良いプレーをして富や名誉を手に入れるのも私利私欲でないのと同じである。
ビジネスマンは、良い仕事をした結果、金持ちになるのは私利私欲ではない、」ということである。』

このような人生観を持った稲盛氏である。

当然、日本航空の社員は稲盛氏の行革に賛同すると思う。
その背景として、稲盛氏は自ら「敬天愛人」を実践し続けた人物である。
100人中100人が、氏のことを人間として尊敬できる人物と感じることであろう。
私は、直接お会いしたことはないが、自生の師として尊敬している。

さらに考える。

『人格者』

師には、この言葉が一番あっていると思うし、人間として一番大切なことではないかと思う。

苦しい時、つらい時、人がついてくるかどうかは、その経営者の『人格』だと思う。
人格者である経営者が、事業の目的を明確にし、企業理念やビジョンを説けば、そのような組織はベクトルを120%そろえ、強い力を発揮すると思う。
子が親の背中を見て育つように、従業員も経営者や上司の背中を見ている。
その目線は、子どもと同様に、鋭い視線である。

私の祖父や父も『敬天愛人』を実践し、人格者であった。

私も、『敬天愛人』の教え則り、祖父や父、そして稲盛氏のような人格者になれるように、日々精進したい。