hakuunの未来ノート

将来のため、人生やビジネスに関して、考えたこと、感じたことを綴ります。

日本人の価値観

2012-05-09 | 人生観
価値観について

ドラッカー氏著:『マネジメント:エッセンシャル版』「第3章:仕事と人間:第12節:人と労働のマネジメント」では、成功事例として、日本企業のことが取り上げられている。

例のごとく、少し長くなるが引用する。

『P68日本企業での成功
・仕事の内容を明らかにした段階で、職場に任せている
・退職まで研鑽を日常の課題とする
・終身雇用制を持つ。少なくとも大企業ではひとたび雇われれば、定年退職まで職場が保証される。
・福利厚生を重視
・強力なリーダは育てるように見えない。
凡庸なために選ばれ、波風をたてない小心な者を育成するうえで理想的に見える。
わずか20年の間に、世界第二位の経済大国を築いた独立心に富む攻撃的なトップマネジメントが、この制度で生み出されたとは信じがたい。
しかし、日本では、終身雇用のもとで解雇されないため、また最初の25年はもっぱら年功序列によって昇進させられるため、若い者の面倒を見、育てることこそ、マネジメントの第一の責任とされている。
・意思決定を考えることへの参加であり、権限による参加ではない。
責任による参加である。
これらの日本の慣行は古来のものではない。
第二次大戦以降とまではいわないが、1920年代以降のものである。だがそれは日本の基本的な信条と価値観を反映している。』

成功事例として、日本を取り上げていただくことは嬉しい。
しかし、その理由として『これらの日本の慣行は古来のものではない。
第二次大戦以降とまではいわないが、1920年代以降のものである。』という点について反論したい。
とはいうものの、『だがそれは日本の基本的な信条と価値観を反映している』と認めているので、私なりの日本人の価値観について述べたい。


日本人と欧米人との価値観は当然違う。

●ISO導入

そのことを意識しだしたのは、会社でISOを導入した十数年前のことである。
当時のISO9000は、嵐のごとく多くの企業を巻き込み、多くの企業はその対応に苦慮した。
欧州で発達したISOに対して、日本人はどのように対応しただろうか。
ISOを導入で一番最初苦慮したことは、文書化である。
100以上(?)の規格要求事項で文書化を求められた。
さらに、各文書には、「作成」「審査」「承認」欄を設け、責任の明確化が求められた。
印鑑が羅列していた従来の仕組みから、「作成」「審査」「承認」と責任の所在を明確にすることは戸惑いが多かったことを覚えている。
契約社会で育った欧米人習慣と日本人の価値観は違うということを実感した最初の出来事であった。

●責任と権限

一方、契約社会である欧米では、責任の所在を明確にすることは、当たり前のことだと思う。
「責任と権限を明確にすること」、今では当たり前のような言うが、実際に実行することは難しい。
「責任」ばかりで、「権限」が伴わないケースが多々ある。
建設会社などで、支店で業者と予算を決めて決めて、実行責任を「現場所長」に任せることは、「責任」ばかりで「権限」が伴わない典型的な事例である。

●狩猟民族の民族性

その背景として、歴史観や価値観、さらに民族性あると思う。
その昔、欧州は狩猟民族であり、食うか食われるかの世界である。
隣の○国も同様に狩猟民族であり、民族間の対立で戦争になれば大変である。
勝てばよいが、負ければ一族皆殺しである。
そのような世界では、相手を信用しないし、相手のことなど考えないだろう。
数年前の中小企業白書には、○国の商取引のとんでもない事例が掲載されていたことを覚えている。
『商取引で、金を払わないことが、経理マンの評価である』と「代金回収不能」に関する信じられない記事があった。
某建設重機会社が、○国に進出した当時の有名な話がある。
『建設重機を○国企業に納入したのに、納入先の○国企業が、某建設重機会社に対して金を払わないケースがあった。
その時某建設重機会社のとった対応は、どうであったか。何とGPSを使い、無線で納入した建設重機を止めてしまった。
そこで仕方がなく、○国企業はしぶしぶ代金を支払った』という愉快な話がある。
○国の事例ばかりで、申し訳ないが、狩猟民族の民族性を表した事例と捉えてもらいたい。
狩猟民族は、徹底的に個人主義であり、まずは自分と自分の一族の幸せのみを考えるだろう。
欧州では、悪しき民族性に関する記事はみないが、○国や○連ではまだまだ新聞誌上にを賑わしている。

●農耕民族の日本人はどうか

ほとんどの日本人は大和民族であり、単一民族と言ってもよいと思う。
また欧米等の狩猟民族と比較すると、「農耕民族」と表現するのが適切である。
田植えや稲刈りなどの農耕作業は、集落全員で協力して、はじめて成果が上がる仕事である。
まして昔は、すべて手作業であったわけだから、なおさらのことである。
自分さえよければ、という考えではなく、年長者の指示に従い、みんなで協力して弱い者を助けて、全員で成果を分かち合う。
まさに『和の社会』であった。
このように協力して成果を出すことは、農耕民族の習性だと思う。
近江商人の「三方よし」は、「売り手よし、買い手良し、世間よし」をモットウにしている。
相手を気遣い、世間への配慮を忘れないで商売することで、三方で「共存共栄」となり、それぞれの利益に結びつく考え方である。
まさに、農耕民族と同様に、『和の社会』であると思う。

●『和の社会』の弱点

『和の社会』のメリットは、共存共栄であるが、飛び抜けた存在は、出にくい。
逆に一人だけ目立てば『和』を乱すことになり、村八分になる。
まさに「出る杭はうたれる」ことになる。
そのため、狩猟民族に比べて、農耕民族は闘争心が少なく、日本からは、起業家などは出にくいと推察する。
そのことは現代にも通じている。
若者を中心にチャレンジ精神が見られず、安定志向が強まっている事実がある。

●個人主義

資本主義の代表は、アメリカであり、個人主義が徹底している。
アメリカンドリームではないが、起業することで、夢をつかむことができる。
経営者は、パートナーとは利益で結びついている。
視線は投資家に向いており、利益追求が一番の目的である。
さらにストックオプションを行うことで、一部の社員で利益の総取りとなる。
その結果、1%の富裕層と99%の労働者に分かれ、貧富の格差が生まれている。
夢見る若者は挙って起業家を目指す。

●武士道と特攻隊

日本は昔から、「武士道」がある。武士は、主君のために命を投げ出す。
その典型的な例が、「切腹」である。
欧米の人々にとっては、今でも信じられない行為だと思う。
この武士道の精神も脈々と日本には根付いていた。
それは、「特攻隊」である。
「特攻隊」のその意義については議論を避けるが、あったことは事実である。
若い青年将校が「お国のために命を捧げる」という行為は、古来からある「武士道の精神」につながると思う。
このことは、やはり欧米人には信じられないことだと思う。
この武士道の精神は、明治時代から脈々と通じており、戦後の復興の原点にもなっている。

●GHQの対応

「切腹」や「君主のため命をかける特攻隊」の武士道精神に対して、一番恐れたのがGHQである。
戦後、武士道精神を日本人に維持したら、日本は急速に復活し、世界を支配することになる。
そのことをGHQは一番恐れていた。
いかに武士道精神を弱体化させる手段として、3Sの導入を決めたと言われている。
3Sとは、スクリーン(映画・娯楽)、スポーツ、セックスである。
この3つを奨励し、その楽しさを日本国民に教えた。
ドイツ人であれば、否定したかもしれない。
しかし、戦争に負けたことがない日本人は、GHQの提案を素直に受け入れた。
その結果、ゆっくりではあるが、日本人の武士道精神は、崩壊の一途を辿ることになる。

●経営戦略的思考

戦後1950〜1960年代は、高度成長期である。
国民が新たな価値観をもとめ、生活のレベルをあげ始めた時代である。
その典型が白物家電である。
テレビ、冷蔵庫、洗濯機は『3種の神器』といわれ、家電メーカーは量産体制をしいた。
さらに終身雇用制度のもとでは、若手社員を育てながら、QC活動を行い、品質の追求に徹した。
生産者の品質追求は、消費者の要求と一致し、ますますその加速度を上げていった。
つまり、市場のニーズと生産者の思惑が一致したことは、事実である。

●バブル崩壊後の市場

日本人の習性として、品質向上には長けている。
携帯電話などは最たるものである。
市場ニーズが、生産者と価値観が同じであれば、この戦略も正しい。
しかし、市場はグローバル化しており、生産者の価値観と市場の価値観が異なってきた。
本来なら、外部環境分析を行い、市場ニーズをとらえて、投げるタマを変えることである。
しかし、日本人はこのことを行なっているとは言えない。
海外を中心とした市場のニーズは違う。
品質は中程度で、コストの安いものが顧客ニーズである。
しかし、日本人は、品質120%を追いかけ、コストを200%かけている。
一方、韓国メーカーは品質80%でコスト50%を目指しているから、顧客ニーズと一致し、世界市場で伸びている。
その結果、日本製品は、『ガラパゴス化』と比喩され世界市場では、低迷の一途である。

●日本人のスキル

日本人の習性として、品質の追求は得意である。
昔から行なっているので「高品質追求」というスキルは身についている。
一方、低コストで中級品を追求するということは、馴染んでいないし、習性として受け入れられないのかもしれない。
スキル理論で言えば、そのようようなトレーニングを積んでいないので、「中級品・低コスト」というスキルは身についていないのであろう。

●これからの方向性

日本人の民族性や価値観などは、否定することはできないし、その必要性もない。
ただ、環境変化を見据えて、自社の強みは何かを考えて、どの方向に進めばよいのか、戦略を立てる必要がある。
これは経営者の仕事である。

さらに、その戦略が実行できるような仕組みを作ることである。
あとは、従業員がベクトルを合わせ120%の力を発揮できるか、である。

そのためには、従業員が納得する企業理念が必要である。
この『企業理念』は、経営者の忘れてはならない一番大きな仕事である。

従業員が、「企業理念」に従い、心を一致団結して、目的に向かうことができれば、必ず成果を上げることができる。