時系列的には前後するが,有田駅に行く前に青華(染め付け)のみを焼いている「しん窯」に行った。青華は酸化コバルトと呼ばれる顔料のみを用いて文様を描いている。白い磁胎に対照的なブルーの色合いが好きである。シンプルなだけに技術が見えてくる磁器である。色絵は酸化コバルトで描かれた下絵に色を載せて焼かれたものである。上絵付けと呼ばれるもので,表面に透明な釉薬がかかっていない。長年使用していると表面の文様が薄れてくる。
陶磁器の話はさておき,「ガラガラ君」に乗って「しん窯」を目指した。有田駅の北側に位置し,道中は緩やかな上り坂である。ところどころ立ち漕ぎすればママチャリでも大丈夫だった。
途中に橋の銘板に遭遇する。左が登り方面で右が下り方面の柱に埋められたシンプルな染め付けの銘板である。橋の左右で柱のデザインが違っているのはどうしたことか?
左は丸みを帯びた銘板に合わせて柱もカーブしている。
右は直線的なデザイン。
「昭和二十六年十月成工」と記されていた。先日の記事で取り上げた,いかにもと感じさせる新しい橋の装飾よりもこちらのほうが好きである。
丸尾橋を過ぎ,えっちらおっちら漕いで,途中を省略し目指す「しん窯」到着した。店内撮影禁止でも無かったが,ここでも店内の写真は無しである。ごめんなさい。
「しん窯」が無料で提供しているおみやげ。有田駅の待合室にも置いてあった。ただをいいことに駅では数個をいただいた。
直径約8㎝,厚さ約5㎜の磁器製の円盤である。本来は「はま」と呼ばれる窯道具で,焼き物を焼くときに,焼き物同士がひっついたり,歪んだりしないように下に敷く道具。
本物には模様はないが,これはお土産用に文字を入れてある。「口」の字を四文字が共有し「吾唯足知(吾れ唯足るを知る)」と読む。京都の竜安寺にある「蹲踞(つくばい)」に刻んである言葉から取ったとパンフレットにあった。
「人は欲張らず,今の自分を大切にしなさい」という意味がいたく気に入った。
「しん窯」で購入した桜の文様のフリーカップ。6300円なり。自分の焼酎お湯割り用に使用している。お気に入りのカップのおかげで焼酎の味も一段と旨く感じられる。家族にはただの「はま」のお土産で我慢してもらった。
「しん窯」の人が自転車で訪れた私を見て
「この近くですか?」と尋ねた。
「いえ,観光で有田駅から来ました」と答えたら少し驚いた顔をした。駅からの距離がどれくらいかわからないが,ここまで自転車で来る人は滅多にいないようである。
本日の記事はこれでおしまい。
興味津々てやつです。ところで「しん窯」の意味を教えてください。