たけのこ山となんでもやってみるもん

「国道10号自転車通勤」,「奄美の自転車オヤジ」から3度目のタイトル変更です。主夫をしながら竹林整備を始めました。

ジテ通オヤジ,耳鼻科に行く

2011年01月04日 | 日記

耳が詰まって,困った
昨夜のことである。風呂上がりに久しぶりに耳掃除でもしようと綿棒を取り出し,耳掃除を始めたのは良かった。ところが,耳垢が取れるどころか,音が聞こえなくなった。どうやら耳垢で耳道をふさいでしまったらしい。なんとか取れないものかと試みたが,出てくる気配はない。そのうち痛みを感じるようになったので,明日耳鼻科に行くしかないとあきらめ床についた。夜明け前になると,耳の中が定期的に軽くうずいて目が覚めた。
片耳だけとはいえ,耳が聞こえないのは本当に不自由である。音量は半分しかなく,音の聞こえる方向がわからない。
妻によれば私の耳の穴は小さいそうである。本人としては他人の耳と比べようがないので,そんなものかと思っていた。耳の穴は小さくても機能的な問題はない。「尻の穴の小さい奴」といわれるほうが悲しい。しかし,耳の穴が小さいと言うことは詰まりやすいという構造上の問題が明らかとなった。小指で耳の穴を掃除している人を見たことがある。「耳の穴をかっぽじって良く聞け」という場合は,即座に綿棒など準備できないから指で「かっぽじる」人もいるんだろうけど,私の場合は無理である。

意外に耳鼻科には患者がいる
職場に着き,仕事始めの前に近くの耳鼻科(正確に「耳鼻咽喉科」)いってみて驚いた。私の予想に反して待っている患者が多いのである。待合室に6,7人は先客がいた。内科の場合は時節柄,風邪の患者が多いのだろうけど,「耳鼻咽喉科」というどちらかといえばマイナーな診療科目の病院にもこれだけの患者がいるのかと感心した。それぞれの病状は知るべくも無いが,それぞれ色んな病気でここにきているんだろうと納得。ちなみに私の前に診察を受けていた小学中学年とおぼしき女の子は中耳炎の治療に来ていた。
問診票に「初診」と丸をつけ,「今日はどんな症状でこられましたか」とあり,症状の選択肢がいくつか箇条書きにしてある。「耳垢つまった」なんていう項目があるかどうか不安な気持ちで視線を下に下げていくと,最後にちゃんと「耳垢」という項目があるではないか。これでなぜか安心した。耳垢が詰まるというのはけっして珍しい症状ではなく,耳鼻咽喉科の世界では極めてありふれた病気らしい。

異物の掲示板
名前を呼ばれて診察室に入り,「次の患者控え椅子(と呼ぶかどうか不明)」座って周囲を見渡す。右の壁にチャック付きの小さなビニール袋がいくつも掲示してあった。ビニールの中には色鮮やかな5ミリくらいの大きさの丸い物体が入っている。「耳」「鼻」「のど」と区分してある。どうやら患者から取り出した異物を掲示してあるコーナーらしい。「耳」「鼻」から取り出された異物で多いのは,BB弾やおもちゃのネックレスのビーズだった。幼児はなんでも耳や鼻に入れてしまうものである。そういえばうちの娘も油粘土を耳に詰めて保育園から帰ってきたことがあった。あおのときも耳鼻科のお世話になったことを思い出した。これらは不用意で入れてしまったものであるが,自分から飛び込んできたものも展示してあった。多くは小さな昆虫である。その中で思わず嘘だろうと思ったのはゴキブリの幼虫。幼虫とはいっても体長は1センチ以上あった。こんなものが耳に飛び込んだ人の驚きはいかばかりか?病院で取り出してもらうまでどんなきもちだったろうか。うーん,想像を絶する。
「のど」コーナーの異物はほとんど魚の骨。ご丁寧に魚種まで添え書きしてあった。耳鼻咽喉科の先生は一本の骨だけで魚種を同定できるんだと一瞬尊敬してしまった。しかし,患者に何の魚を食べたか聞けば造作もないことである。さすがに魚種の見分け方までは履修科目にはないだろうな。
その他に「唾石(だせき)」というのもあった。唾液が通る管の中に石ができる病気である。唾液の中に含まれるカルシウム成分が何らかの原因で結晶化してしまい,唾液を分泌する管がつまってしまう。すると耳のリンパ腺が腫れ上がり,食べることはおろか苦痛のあまり口を開けることもできなくなる。遺伝する体質があるらしい。父も私も娘も同じ病気になり,病院のお世話になった。出口付近(口の中)の小さなものは口腔外科でも手術してくれるが,内側の大きな石は耳鼻咽喉科の守備範囲らしい。

ハイテクを駆使し治療終了
さていよいよ治療の開始である。名前を呼ばれ,診察台に座る。いったいどうやって取り出すのだろう?掲示してあった耳から取り出したというBB弾を思い出す。キャップランプで耳の穴を照らし,先の尖ったピンセットを片手に取り出すというイメージが浮かぶ。幼児でも我慢できたのだから大人の私が怖がってどうする。
先生は60代の女医である。
「これまでも耳垢で耳鼻科にかかったことがありますか?」と聞く。
耳鼻科を受診するのは初めてで,ましてや耳垢などという少し恥ずかしい症状で受診するとは思いもしなかった。
「初めてです」と答えると
「じゃ,始めましょう」いって「耳腔鏡(というかどうか不明。金属製の小さなラッパのような器具)」を耳の穴に入れた後,もう一つの器具を耳に入れた。
「完全にふさがっていますね。見てください」というので目の前を見るとモニターに耳の中の様子が映し出されているではないか。さきほどの器具はファイバースコープだったらしい。
「すごいハイテクだ」と思いつつ,映されている絵に思わずうなる。
汚い。黒い鼻くそのようなもので完全にふさがっている。先生は職業柄こういう画像には慣れているのだろうけど,本人としては初めて見る画像である。思わず「いやぁ,恥ずかしい限りです」とお詫びとも言い訳ともつかないせりふをつぶやいてしまった。
一方先生は「では,取りましょうね」と何だか楽しげに新たな器具を耳に挿入した。眼前のモニターには一部始終が映っている。ウィーンというかすかな機械音がしたかと思うと細いノズルに耳垢が吸い込まれていく。これはまるで掃除機だ。さきほどの先生の楽しげな口調は,汚いところをきれいにするという爽快感からきているらしい。前方の小さな固まりはおおかた取れたが,一番奥の大きなものがなかなか取れない。
「最後のがこれでは無理みたい。馬力アップした強力なのに替えましょう」と選手交代を宣言した。引き続きモニターに見入る。「頑張ってくれー」と応援しながら見ているとかすかな痛みとともに最後の固まりが見事に取れた。これだけ力があるのだからBB弾だってビーズ玉だって取れて当然である。
「取れましたね。ほら,この先に見えるのが鼓膜ですよ。綿棒でつついたので手前が赤くなってます。薬をつけますね」とモニター画面の説明をする。
「ほら,こんなに取れましたよ」とティッシュにのせた耳垢を見せてくれた。
「こんなにたくさん」と変な感動を覚えつつ見ていると,先生は汚物入れにポイッと捨ててしまった。耳垢なのに自分の所有物が粗末に扱われたような気分を覚えた。でも耳垢なんてありふれている。所詮,「これまで取り出した異物コーナー」に展示されるような珍しい症例でもないなと思い直した。
記念として持ち帰っても仕方のない代物である。
「ほら,これ俺の耳垢。凄いだろ」と見せても,何が凄いのか自慢の尺度が不明。家族だって「何が凄いの?ただ汚いだけじゃない」と馬鹿にするのが落ちである。

「どうもありがとうございました」と気分も耳も爽快に病院を後にした。ちなみに3割負担の治療代は1110円なり。今後の耳掃除は気をつけることにする。ネットで検索したら「耳垢は湯上がりに綿棒で取るのが一番危険だ」と解説しているお医者さんがいた。柔らかくなった耳垢を綿棒で奥に押し込む可能性が大きいそうだ。一番良いのは耳鼻科で取ってもらうことだそうである。

昨年だったか「耳垢取り殺人事件」なるものがあったが,耳垢取りが医療行為だとすれば医師法違反になるはず。都会では不思議な商売があるものだ。

 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする