中国貴州省で日本語教師

2007年春~2009年春、青年海外協力隊

言葉より雄弁なもの

2007年10月31日 | Weblog


毎朝、広場では大声でテキストを音読をする声が響いている。
聞こえてくるのはほとんど英語。
中国語なまりはあるけれど、全体的に、日本人よりも英語が上手いと思う。

日頃学生と接していて、日本語を話しているときは彼らは日本人と同じような表情をしているのだが、彼らがクラスメートと中国語で自由に話し出したり、発表の場で日本語から中国語に切り替えてスピーチをしはじめると、にわかに違う表情になって、ぎょっとすることがある。
それで気がついたのだが、ノンバーバル・コミュニケーションの部分…顔や首の動かし方や手振りなどが、英米の人たちと全く同じみたい。
英語、日本人より上手いよなそりゃ。
しかも音読好きは語学上達のこつなのかなやっぱ。
などと考えながら毎朝広場を横切る。

「先生、さっき先生が歩いているのを見ました。」
「あら、声をかけてくれなかったの?」
「先生は忙しそうでした。」
しまった~、出勤だと思っていると、歩き方が地下鉄丸の内線乗り換えペースになっていたか…

青岩と周恩来

2007年10月28日 | 日中関係

今日は2年生と一緒に、バスに乗って観光地青岩に行った。
最近の環境政策のひとつで「ゴミ拾いボランティア」をしに行ったのだが、学生たちは買い物や買い食いを楽しんだり、私を相手に日本語会話の実践練習をしたり、天気もポカポカしてるし、すっかり秋の遠足ムード。私も、授業中には窺い知れない学生たちの特技や個性をたくさん発見し、色々な事を教わり、すごく楽しかった。

「周恩来の父が住んでいた家」という記念館に連れて行ってくれた学生が、周恩来は私が一番尊敬する人です。周恩来は日本に留学しました。上野公園に記念の桜を植えました。私は将来、周恩来のようになりたい。と、語った。

上野公園に、周恩来が桜を植えたことを知っている日本人はどれくらいいるのだろう…?○○首相のようになりたいと語る日本人の学生は…

AllAbout 中国語>読んでみよう!周恩来総理のスピーチ

異食文化理解

2007年10月27日 | 


今日は文化祭の準備のためにうちに来た3年生たちが、数々の料理を作ってくれた。
手料理は外食よりも断然美味しい。
特に、活きて動いている川えびをさばいて蒸したものと、えびの頭の揚げ物などは絶品である。
肉屋でひき肉売っていないな~、肉屋にいちいちひき肉にして下さいと頼むのが面倒だな~と思っていたが、今日、学生が豚肉の固まりを中華包丁一本で器用にひき肉にしているのを見ていて、なるほどこうやって自分でひき肉を作るのか、と勉強になった。

同僚の家に料理を作りに行った時は、

軽量スプーン無いの?え?!計量カップも無いの?おたまある?
おたまって、何ですか?
スープを掬う物で、おたまじゃくしに似ている、おたま。
…これはだめ?
それは大きいレンゲ…小さすぎるかも。

などという、やりとりをやっていたのだが、
今日は学生が私の家のキッチンで、

え!?蒸し器無いですか?
にんにくは無いですか?
これ、中国の醤油と同じですか?
と、大騒ぎだった。

これは市場にいたスッポン。



これは食用蛙。







対照言語学と語用論の日々

2007年10月25日 | ことば


作文の授業の始めにはいつも添削した作文を返し、誤用紹介をするのだが、今日は、日本語の「了解」はOKぐらいの意味なんだよ、とか、日本語の「要求」は中国語の「要求」と比べて命令のような強さがあって全然違うんだよ、などと、いつまでも誤用が消えない語を、恨みをこめて(?)黒板で一覧表にして解説した。

すると、いつもはあまり質問が出ないクラスなのに、
「要請と申請と申告の違いは何ですか?」
とか、
「風習と風俗と風土の違いは?」
と、質問続出。
(わお!質問が自由に出る雰囲気になってきていい感じ、ホイ来た、受けてたつとも)と例文挙げつつ、語法をビシバシ解説する。
そういえば、こういう語用論的解説は、よく塾で、こまっしゃくれたお受験小学生たちから質問を浴びせかけられてやっていた。今は大学生だから、相手は大人である。しかも、これから日本に行く人も多い。それを考えあわせて、「風俗」がだいたいは書き言葉であることと、口語で使う時の俗なる意味も教えておいた。
今日教えたことを全て忘れて、そればっかり覚えていたりして・・・





母語の干渉

2007年10月24日 | ことば

    

       ↑やきいも、売っています。

授業をしていないときは何をやっているかというと…
あれやこれや、です。

一番多いのはネイティブチェック。

秋になってからよく持ち込まれるものは、教師からは大学院入試の研究計画書、4年生からは日系企業の面接での自己紹介文、3年生からは1級試験過去問の語彙のニュアンスの解説、2年生からは某財団に奨学生として出す作文。

事務室で、やって来る書き手と一緒に書類をのぞいて、じみ~に、赤ペンチェックや、模擬面接などをやっています。

そこでいつも頭を悩ませているのが「母語の干渉」。

日本語教師の資格試験で毎年のように出題される、あの「母語の干渉」。


私は日本へ行って、働きたいです。
日本で風俗の言葉を覚えます。
(3年生女子)


(ふうぞく!?)あの~、日本へ行ってどんな仕事をするんですか?

はい、観光会社で研修生をします。

そうですか(ほっ、思わず心配しちゃったよ)。
それで、日本へ行って、日本の慣習や日常会話を覚えたい、のですね。
研修が終わって中国に帰ってから、どんな仕事をしたいですか?

故郷に戻ったら、経理をやりたいです。

(もしや…)けいりって、どんな仕事ですか?会社の中でお金の計算を専門にする人のこと?

いいえ、ちがいます。父は会社を持っています。私はその会社をもらいます。

それなら、「けいり」じゃなくて…。

オオ、先生、間違えました。社長です。

そうですね(やっぱり)。

私、もっとよく日本語を了解しなければなりませんね。

了解、は違います。中国語の了解は、日本語では理解です。(たのむ、皆で了解します了解しますって言うのやめて~何度言ったら分かるんだ~心の叫び)


こんな感じで、中国語に日本語と字面が全く同じで意味が違う語彙があふれかえっているため、単語レベルで母語干渉しまくり

もとはといえば、大昔に日本語が中国語を輸入しまくっていたせいなのですが…。

組長

2007年10月21日 | 楽しい誤用の世界


先生に組長をやっていただきます。

くみちょう…。
教壇に立つ組長ですね。わたしに「ごくせん」をやれと?なかまゆきえですか?

中国語の「組長」は、日本語で業界っぽく言えば、プロジェクトマネジャー。チーム長。グループ長。ってところでしょうか。

以後見知りおきのほど、よろしゅう~。

よし!と思う瞬間

2007年10月20日 | Weblog


よし!と思う瞬間
1.
皆で自動詞他動詞カードゲームで盛り上がっていると、後ろのほうのグループには自他動詞の区別が分かっていない学生が多く、間違いが多い。そのうち笑顔が消え、いまいちついていけていないもよう。少しほうっておいてゲームを進めていく。クラス全体がどんどん盛り上がる。そのうち、後ろのグループの学生たちが、皆黙って紙を見ているので、あれ?ついていけなくて他の事をやり始めたのかな?と思ってのぞくと、私が言った動詞とカードのイラストをメモしあって、それを見ながらゲームに参加していた。
よし!
決勝戦は、カードを奪い合って破るほどの騒ぎになったのだが、休憩をはさんでゲームに使った自他動詞を文字で見せて復習を始めたら、皆、いつも以上に真剣。全員がのっている時は、指示を出さなくてもリピートの大声が返ってきたりして、いつもその30人のパワーに私のほうが圧倒される…


2.
教えている学生たちが、互いに日常的に日本語を使っているのを見かけた時。
廊下で、「おはよ~」とか、「次は授業ですか~?」「終わりました~。そっちはこれからですか?」なんてやりとりをした後で、中国語をべらべらと話し出したり。よしよし、と思う。特に発音に自信がなさそうで授業中はうつむきがちの男子学生どうしが日本語で挨拶しあっているのを見かけたりすると、柱の陰でふふふ…と含み笑いしている。

エリン人気

2007年10月19日 | Weblog


毎回「日語会話」の授業の最後に見せるNHK&基金の『エリンが挑戦!にほんごできます。』。
私としては、朝も早くから1時間半よく集中してがんばったね、
最後はリラックスして、エリンの映像を見て楽しんでね、
という感じで見せはじめたのだが、
皆で楽しそうに盛り上がりながらも、
耳に入った日本語をリピートしたりして一生懸命勉強している。

日本の物品を紹介する「何だろう?」のコーナーで、「まごのて」が出てきたら、
皆、真剣な顔で一斉に「まごのて」とメモしはじめたので、どうしようかと思った。
あっ、いや、これは覚えなくても…。

たらちねの

2007年10月18日 | ことば


中国に来て、日本語が好きになった。

これまで、言葉にこだわって生きてきた。

言葉といっても、日本語が母語だから、自然、日本語にこだわって生きてきたことになる。

日本にいる時は、日本語の持つ限界やあいまいさ、不自由さに意識がいっていた。

考え出すとわけがわからなくなる慣用の正しさ。
辞書を引いても判別ができない語感。
どの編集部にいる時も、いつも編集者どうしで「~って言う?言わない?」と周囲に確認して最終的に確信が持てるコロケーションのあいまいさ。

日本語が美しいとか、豊かだとか、そんなこと思ったことがなかった。

ただ言葉にこだわって生きている、毎日格闘している、それだけで。

日本語教師の資格取得を目指しているときも、日本語が美しいとか、素晴らしいとか、そんなこと全く思っていなかったと思う。

だけど。

中国に来て半年が過ぎて、最近しみじみ日本語の良さを感じることが多い。

一番好きだと思うのは、ほとんどの音が母音で終わること。

中国語は子音が大きくて子音でリズムをとる。
日本語は、対照的に、母音がよく響く。

どんな単語も、母音がふわふわと響いて、優しい。
ゆっくり、ていねいに話していると、静かで、優しい気持になれる。

母音の響きの優しさに気付いたのは、
韓国人教師が電話で韓国語を話すのを聞いたとき。
韓国語も母音がよく響く言語で、意味は分からないけれど、なんてエレガントで優しく響く言葉なのだろう!と、かなり驚いた。

そのとき、学生たちがよく「日本語は気持が優しくてきれいです」、とか、「日本人の女性は皆優しいんですか?」などと言っているのは…熟年の女性教師から、「やっぱり日本の男性は皆優しいんですか?」と真顔で聞かれたりするのは…こういうことなのかもしれないなと思った。

お持ち帰りのおしごと

2007年10月14日 | Weblog


今週末はJICA事務所に出す報告書と、別件で来週の講演会のプレゼン原稿を書く予定で、ひきこもって報告書を書いているうちに、日曜の夜になってしまった。

おかしい…

どうして書いても書いても終わらないんだろう?

何をそんなに書くことがあるんだろう?

ほったらかしていると、さらに書かなきゃならないことが増えていきそうなので、
とっとと出そうと思って、もはや箇条書きで書き飛ばしているのだが。

まだ終わらないよう

まにあうのか?プレゼン…

ボーナス・ステージ

2007年10月13日 | Weblog

あ、えっと、遊んでばかりじゃなくて、仕事もちゃんとやってます。

今学期は、学生たちとの信頼関係ができているからなのか、先学期に比べると、どんどん、やりやすくなってきています。もともと日本人の学生よりも表情や反応がはっきりしていてわかりやすいですし。授業が今の私にとっての最大の遊び・気分転換方法かもしれない・・・な~んて言ったら、過酷な環境でがんばっている同期の医療系ボランティアや、必死に授業準備している日本語教師たちから袋叩きにあいそうですが。

昔、スーパーマリオをやっていると、ボーナス・ステージを発見することがありました。ある部屋に入ると、すごい数のコインが並んでいて、敵がいなくて、ずーっとBダッシュして、うわーい!と駆け抜けていくステージ。

なんだかんだ言っても、毎回、授業が始まるとゴキゲンになり、授業が終わる頃には学生の反応からエネルギーを補充されて、完全にゴキゲンになっている私にとって教壇はボーナス・ステージのようなものだと思うのです。

今学期は、2年生の「会話」と3年生の「作文」の授業の計4クラスを受け持っていて、1回2時間の授業です。
なんとなく、
「会話」は演出力・演技力の体力勝負、
「作文」は解説力・分析力の知力勝負かなあと感じています。
どちらにしても必要なのは、観察力。
特に学生の理解度に対する観察なしには授業が進められないです。

授業って、料理に似ています。

メニューと素材を決めたら、あとは段取り勝負。
食べ合わせのバランスと、温かいうちに食べてもらうタイミングが重要。
凝って時間をかけて盛り込むよりも、シンプルに、アクセントをつけて出す。
それで、しっかり味わってもらう。
旬の素材や、たまたま持っている素材もうまく取り入れる。
隠し味や付け合せなど、独創的な事を思いついたらちょっと試してみる。
それで、相手を飽きさせず意外性を楽しんでもらうこともある。
相手の好き嫌いや、その日の顔色・体調まで勘案しながら、味付けを微妙に調整することができれば最高。
そのためにも自分のほうには常に余裕を残しておく。
そして、内心はいまいち自信がない一品でも、最終的には自信を持って出す。
なにより、料理を給仕し、テーブルを共にする自分がリラックスしていることで、お互いに食事を楽しめるというもの。客が安心してテーブルに集中できるというもの。どんなに美味しい料理でも雰囲気が悪ければゆっくり味わえないので。(だから演技力も重要)

でも、人間相手の仕事なら何でも、結局のところは、
「目くばり気くばり心くばり」の誠実なコミュニケーションが勝負の分かれ目なのかもしれません。

ま、えらそうに言うほど私の料理(授業)がおいしいかどうかは、食べた(受けた)人のみぞ知る・・・。
料理も授業も自己評価すれば、ごく人並の腕前です。
出席人数が増えこそすれ減らないので、今のところは客から及第点をもらってるかなと思うんですけど。・・・ひやひや。

貴陽温泉

2007年10月07日 | その他の観光地
よく行くパン屋の女の子たちにも、レストランのお姉さんにも、喫茶店のお兄さんにも、

先生は夏休みも国慶節も日本に帰らないの?

と不思議そうに聞かれる。

うーん、事務所の決まりで帰れないんだよ・・・

と答えると、みんな、どうして??と驚く。

2年間帰国できないのよ。どうしてなんでしょ。

秋だな~と思うと、ああ、ちょっと秋刀魚の塩焼きと新そば食べに日本に行きたいな、と連想し、ついでに上野で絵画展を見て、上野といえば芸大で生演奏聴いて、寄席行きたい。一日あれば、レンタカー借りて友達3、4人乗せて、箱根ターンパイクをブッとばして、西伊豆を海岸沿いにドライブして、海の見える温泉につかってから、沼津で寿司・・・
と、遊び人の連想はとどまるところを知らず・・・多趣味だった日本での生活が裏目に出ました。

まあ、ここにも遊べる場所はたくさんあるはず。
ここでしかできない旅行だってたくさん。
でも、国慶節はなんといっても中国人のゴールデンウィーク。
通常より旅行代金が相当割り増しで、移動は渋滞、犯罪も増加、そんなときに普段でも人が多く騒々しい中国の観光地に、大枚はたいて連泊旅行する元気があるかどうか。

そんなこんなで無計画でしたが、日頃の睡眠不足を解消したり、各方面の方々とお近づきになれたりして、この連休はとても楽しかったです。
秋刀魚も寿司もちゃっかり食べちゃったし。
ありがとうみなさま。


これは、知人が招待してくれた温泉。
5年間に出来たのだとか。



中国温泉初体験。
広い露天温泉があり、気持ちよかった。
だけど水着着用で、子供たちはビーチボールや浮き輪を持ちこんで遊んでいる・・・。
共同浴場の習慣がないので、温水プール感覚なのかな。
温泉好きの一日本人としては、水着、脱ぎたい。脱ごうかと思っちゃいました。がががまん~。

天河潭

2007年10月06日 | その他の観光地

連休の初めに、バスで30分くらいの所にある鍾乳洞と滝の景勝地に行ってきました。



ボートで中へ進む鍾乳洞もあれば、40分も歩いて奥へ奥へと見て回る鍾乳洞もあり・・・



鍾乳洞と鍾乳洞の間をボートで移動中・・・



鍾乳洞を、クリスマスのようなチカチカした電飾ではではでに飾りたて、どこもかしこもカラフルにライトアップする感覚って、中国人の美意識でしょうか?日本人には理解しがたいかも・・・。



5元(チョコレート1枚くらいの料金)で民族衣装を着て写真撮影するサービスがあったので、やってみました。



最後、つりばしから天河潭全景を眺めたところ。

最近、特にどうという理由もないのに疲れ気味だったので、よい気分転換になりました。また行きたいな。



貴陽夜景

2007年10月03日 | Weblog


市街地まで出ると、こんな夜景です。
これは、甲秀楼。









きれいな風景を見ていると、好きな人と一緒に見たかったと思ってしまうのは、誰しもが同じでしょうか。その人が自分の過去にいるのか未来にいるのか、もう分からなくなってしまっていても。

寂しいときに寂しいと素直に言いたい人が
そばにいないことが
いちばん寂しいです。