ここが大学内の私の研究室。
ここでoffice hourです、などと、大学講師ぶりながら、本を開いている。
…その本は、実は、中国の小学校一年生用テキスト『みんなで読もうこてん、ことわざ300詩』だったりするのだが。
今週の質問で多かったのは、日本語試験4級(中国国内のみで実施されるもの)の問題。どうも、この試験問題を見ていると、日本語教育界ではなく、日本の国語教育に携わった人が作っている問題という印象を受ける。
「父は若い娘が一人で海外旅行に行くなんて、A.とんでもない B.思いがけない と言っている」
どうして B.思いがけない、ではいけませんか?と教師も学生も困惑していた。
とんでもないは一般論で使うことが多くて、非難の気持ちがある、思いがけないは個人的な経験で、単純に意外だと思うだけで特に非難の意味はない、と例文をあげながら即答する。が、まだ分からない様子。
どうしてここに非難する言葉ですか
あー、えっと、日本では昔、女は家にいなければならないと考える時代がありました。うんうん、知っていますね。それで、女は一人で旅行しては危険だ、絶対だめだと言う人が多かった…それを一般の、道徳のように考えるおじいさんもいるんですよ。そこで一同初めて納得した顔をして、おお~なるほど日本の文化ですね…と唸っていた。(文化なのか?)
中国の女性の地位は高い。と、一般によく言われる。ちなみにこの大学でも学長と同じ権力を持つ「書記長」は女性で、「副書記長」も女性で、学部長の教授も女性で、学科長も女性である。そんなわけで、この一般論を実感する日々。
文化的社会的背景を共有しないと理解できない文がある、解けない問題になってしまう、その一例だと思う。