桜吹雪か
「公園の桜がもう散り始めた」というので、全て散ってしまわぬうちにと出掛けて見た。外に出るとけっこう風が強くて、満開を過ぎた桜の木は盛大に花弁を散らし、公園の芝の上にピンクの欠片を敷き詰めている。そのピンクの欠片の中を、ツグミが、そしてシロハラがちょんちょんと跳び歩いていた。
見ていると、時折り桜の花弁を嘴に咥え、咥えた写真を撮る前にそれを食べてしまう。花弁は一面にあるのに、何故か時々しか食べようとしない。花弁に美味い不味いがあるのだろうか?、それをどうやって見分けるのだろうか?と、望遠レンズを向けながら考えてしまう。
公園の池に落ちた桜は、オオバンがやって来て啄んでいる。考えて見ると、桜のつぼみはいろいろな小鳥が来て食べていた。そう思って見上げると、満開の桜の花の中をヒヨドリが飛び交って、やはり気に入った花を探して食べているように見える。
人間さまだって塩漬けにした桜の花を食べるくらいだから、鳥が食べても不思議じゃない。桜を食べるそんな奴ばらに振りかけるように、風が桜の花びらを一気に振り落とし、そして持ち去って行く。桜吹雪の中で、何もかもが桜色に染まり、春の霞んだ太陽すらも心なしか薄く桜色に見えてくる。
公園の道端に積もった花びらの山を、何気なく写真に撮った。きっと、後で見ることも無い写真だが、何となく撮りたくなる気分なのだ。こんな桜吹雪の中で写真を撮る、そんな行為だけに味がある。そこだけ切り取った写真を部屋で眺めても、それはただのピンクの吹き溜まりの証拠でしかない。
満開の桜の林を歩き回り、やがて疲れてカメラを置く。視線の先では、桜の絨毯の上でシロハラ2羽が空中戦を繰り広げている。何が気に食わないのか?、それとも鳥たちも桜吹雪の中でいささか狂気を帯びてしまうのか?。そんな桜の風景を満喫し、陽が傾く中を一人てくてくと漂っている。