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軽石被害

2021-10-28 | 日記

沖縄や奄美諸島に海底火山から噴出した軽石が大量に流れ着いて港や浜を被いつくしているという。砂浜には打ち上げられた小さな軽石が何センチも積もり、港の中では厚さ10cmもの軽石の層が海面を被って海中に光を通さなくなっている様子がテレビで流されていた。漁船や遊覧船などだけでなく、離島への生活必需品・医療品などを運ぶ定期船までも、冷却水に軽石を吸い込むエンジントラブルの危険性の為に海に出られなくなっているらしい。おそらく、今後は軽石に光を遮られたサンゴ類の被害や、軽石から溶け出る成分による海産生物への影響も広がるのだろう。

 この軽石の害が、海底火山の噴火から数カ月もたった今週、実際に浜や港が完全に軽石に埋め尽くされてからニュースに取り上げられたことが少々意外だ。海底火山から千キロ以上も離れていて、大規模の軽石の集団が海を漂っている事や、海流に乗って次第に沖縄周辺の島々に近づいているという情報は無かったのだろうか?と。

 もちろん一般のニュースで全国的に取り上げたのは、実際に被害が大きくなったからという事情があったろう。しかし、島に到達する前に軽石の集団が押し寄せつつあるという情報が県や国の担当者・責任者には届いてなかったのだろうか?。「軽石が流れている」というだけでは、被害実態を予め想像できなかったとしても、あれだけ大規模に海面を被えば衛星写真に写ったかもしれ合いし少なくとも観測機を飛ばせば軽石の量や漂流の方向はつかめたのではないかと思ってしまう。

 軽石が流れ着いた後のニュースでは、軽石の集団が今後どのように漂流しどこに漂着するかというシミュレーションが流されている。当然ながら、それが被害発生後の1日2日で行われた観測とシミュレーションとは思えない。とすると、関係機関にはある程度の予測があったのだろうか?と勘繰りたくなる。観測データとシミュレーションがあり、いわゆる「監視」は続けていたということなら、被害が予想される地域にはかなり早く警告を伝えることができたのでは?とも考えてしまう。

 それならばオイルフェンスを提供して港の入口を塞ぐとか、打ち寄せられた軽石を同時的に撤去する手段が用意されていて、漂着と同時に撤去作業の様子がニュースで流れても良さそうだ、とか。かつての原発事故の際に「公的機関による放射性粉塵の拡がりを予測したシミュレーションがあったにも関わらず、それは対策本部に伝えられず避難対策に全く生かされなかった」という一件を思い出す。

 大きな被害を予測させる重要なデータが、実際にその被害や被害対策の当事者達には知らされず、結果として「予測していながら、現実に被害が起きるまでただ見ているだけ」という災害ドラマさながらのシナリオが繰り返されている気がしてしまう。政府や関係省庁にとって今回も「被害が出たのは想定外」と言えるのだろうか?。

 マスコミ報道も各局が競うように「軽石の層の厚さ」「軽石の下の暗闇」を取材するだけでなく、被害が大きくなる前の「観測と予測の有無」や「軽石の効果的な撤去方策に関する取材」などに早く目を向けて欲しいものだ。現地漁業者へのインタビューで「北大東島の知り合いから、今、北大東に第2波が来てるから、いずれそちらに流れて行くだろうと連絡があった。第2波も心配だ」というものがあった。ということは、第1波も沖縄・奄美以前に北大東を通過したのかも知れない。

 もしそうであれば、今回についても、実際に軽石が押し寄せるより前から関係者達には不安があったのだろうと推察される。「結局、実際に被害が出てからでなければ、行政も報道も注目してくれない」という隠れた現場の声が聞こえて来るようだ。今後は政府機関による「軽石の成分分析」を急ぎ、それを基にした「軽石の処分方法」を早く確立して欲しいと願うしかない。

 成分によって漁業被害や観光被害の拡がりや「毒性」への警告が必要とな可能性があるし、成分如何によって軽石の有効利用の方法だって検討できるかもしれない。あれだけ大量の軽石、何かの材料に有効活用できるのなら、撤去・回収・処分方法の開発に資金を投じてる企業が出て来るかも。日本近海の海底火山噴火は今後も起き得るし、火山灰や火山噴出物の産業利用の可能性は火山大国の日本にとって消えること無く重要な命題なのだから。

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