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特別支援学級

2009年10月06日 | 福祉
前の記事で、自閉症を抱える方のことに少し触れました。
それに関して続けたいと思います。

自閉症の人は、社会性やモノの概念を把握することが難しく、他者とのコミュニケーション能力の発達が遅れ、自分の世界のルールに強いこだわりを持ち、決まった行動様式に従う…などが特徴です。

現在では、先天性の脳機能障害・認知障害であり、決して本人の性格や、育てられ方によるものではないと分かっています。

他に「高機能自閉症」や「アスペルガー症候群」―興味・関心やコミュニケーション能力に問題があるものの、知的障害のない例もあります。



今、このような症例が増加傾向にあるようです。
他には、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)などがあります。

学習障害(Learning Disorders,Learning Disabilities, LD)とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの能力のうち、特定のものの習得と使用にとても困難を生じます。

その原因としては、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されていますが、全体的な能力は発達しているので、適切な学習支援があれば、高等教育への進学も可能なようです。

LDの中には「ディスレクシア」― 書かれた文字を読むことができない(文字が二重になったり塊になって見える)、読めても意味がわからない(言葉を概念化できない)、という症状もありますが、現在では専門的な訓練や学習によって、障害を克服できた例も増えてきています。
その中には、有名な映画俳優の方もおられます。


注意欠陥/多動性障害(AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)は、多動性、不注意、衝動性が特徴です。

注意力を維持しにくく、時間感覚がずれていたり、様々な情報をまとめることが苦手です。
じっとしていることができず、ひたすら動いたり喋ったりを続け、その衝動を自制することができません。

原因はまだハッキリ解明されてはいません。



これらは「発達障害」と呼ばれ、ひとつには脳のワーキングメモリー(作業記憶・作動記憶)の問題であるとも言われます。

この作業記憶の領域が多くなければ、情報を一時的に記憶に蓄えておくことができず、複数の指示や作業を覚えることができないため、連続した動作が困難になります。

一時的な情報の保存ができないと、新しい情報を見たり・聞いたりするたびに次から次へと意識が移り、注意力を維持することが難しくなり混乱状態に陥ります。

しかし今では、トレーニングによってこの領域の改善が可能であるとの研究報告もされているようです。


いずれも、傍から見ただけでは体が普通に動き、場合によっては支障なく話すこともできるので、「障害」と気付きにくく、周囲から理解されにくいものばかりです。

しかしこれらは、しつけや本人の努力だけで対処するのは困難であり、日常生活を送るには適切な支援が必要とされています。


2005年には「発達障害者支援法」が施行されました。
障害の早期診断・療育・教育・就労・相談体制などにおける発達障害者支援システムの確立を目指したものです。

そして、2007年には文部科学省の学校教育法が一部改正され、「特別支援教育」の項目が定められました。

「特別支援教育」とは、障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立った教育方法です。

一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導および必要な支援を行うものです。

この教育を行うために設置された学級のことを「特別支援学級」(以下「支援級」)と呼びます。
※制度の変わる平成18年度までは「特殊学級」と呼ばれていました。



学校教育法第81条によると、「小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。」と定められています。

1.知的障害者
2.肢体不自由者
3.身体虚弱者
4.弱視者
5.難聴者
6.その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの


現在、一般学級の子どもの定員は40人と決められていますが、支援級の定員は8人です。

文科省のデータによると、平均在籍数は一般学級で28人(小学校)、支援級で3人(小学校・中学校)となっていますが、すべての学校に支援級が設置されているわけではありません。

支援級では決まった時間割・カリキュラムが定められているわけではないので、個々のケースに応じた指導・支援策は現場の教師(担任の先生)に任されています。

今は平均して教師が1人で3人を教えているわけですが、もし定員いっぱいの8人の子どもが在籍している場合は、1人で8人の、それぞれ全く違う症状をもつ子どもを受け持つ可能性もあり得ます。

もちろん、子ども1人に付ききりでいることはかなわないため、それぞれの指導が行き届かなくなってしまうことも考えられます。

現場の声を聞くと、支援級の教師はたびたび保育士のように子どもの身の回りの世話に追われ、文科省の掲げる「適切な支援」という理想を求めるのが難しいようです。

熱心な教師ほど「適切な支援」が「適切な学習支援」にならないことにジレンマを感じているのではないでしょうか。


医療の発達によって診断が的確になってきた現在、新しく「障害者」と診断される人たちは、どんどん増えていくように思います。

これから先、熱意を持って「子どもの教育」の役割に関わる人たちが、理想とやりがいを失わずに働けるような環境になることを切に願っています。