日本について
①橘木俊詔・京都大学大学院経済学研究科教授によると、公共部門の提供する社会保障が 日本と同じように小規模なのは米国で、このことから日米両国は“非福祉国家の典型国”であるという。
②予防志向の国「スウェーデン」に対して、日本は「治療志向の国」である。このことは 政策の国「スウェーデン」と対策の国「日本」と言い換えてもよいだろう。
③日本は21世紀型の「持続可能な社会」へ向かう法体系を未だ整備していない。治療志 向の国の発想では、ことが起こらなければ新しい法の制定は難しいのかも知れない。
日本の21世紀前半のビジョン「持続的な経済成長」は、20世紀社会を延長した考え 方なので、法体系の大幅な変更を必要としない。したがって、立法分野では必要に応じ て既存の法を改正することが中心となる。なぜなら、日本は20世紀型の「持続的な経 済成長」(経済の持続的拡大)のための法体系の整備に熱心だからである。このことは次 の④および⑤からも明らかである。
④2006年9月29日、小泉政権を引き継いだ安倍首相は「所信表明演説」を行った。 約 8700字の演説で21世紀のキーワードであるはずの「持続可能」という言葉は「持続可能な日本型の社会保障制度を構築すべく、制度の一体的な・・・・」という文脈の中でたった一度出てくるのみである。
⑤安倍首相(自民党総裁)は「美しい国へ」(文藝春秋 2006年7月)を出版し、 中川秀直・自民党幹事長は「上げ潮の時代」(講談社 2006年10月発行)を出版した。中川氏の著書の「はじめに」には、「成長なくして日本の未来なし」を掲げる安倍晋三政権が発足した、「改革」の小泉政権から「成長」の安倍政権へ、名目4%成長で成長していけば、18年でGDPはいまの500兆円から1000兆円に倍増し、そのとき日本の生活水準は2倍になっている、そして、経済成長は、格差是正の良薬でもあるという。
しかし、「美しい国へ」も「上げ潮の時代」も、環境への視点はほとんど無いに等しい。 「上げ潮の時代」には、「これ以上の経済成長は地球環境に負荷をかける。ならば、世界に冠たる日本の環境技術で今後生活水準があがる国でも、経済成長と環境保全を両立 できるようにすればよい」という記述がある。ここに日本の21世紀社会の舵取りを任されている政治家の環境問題に対する認識が読み取れる。
⑥毎月前半に内閣府が公表する「景気動向指数」がある。この指数は1960年頃に創設 され、80年頃に現在の指数に定着した。完全に高度成長期の遺物である。この指数の 推移に経済官僚や民間のエコノミストは一喜一憂しているが、この指数は経済拡大を前提にしているため、環境への配慮がまったくない。
さらに、詳しくは、シンポジウムの発題特集、私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な 社会安心と安全の国づくりとは何か」(朝日新聞社 「朝日選書 792」 2006年2 月発行)、私のホームページ(http://www7a.biglobe.ne.jp/~backcast/)を参照してくだ さい。次回から、いただいたご質問に対して私の考えを述べます。
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