ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(18)「ちいチャン町のバスの運転手さん」

2022年02月19日 18時17分02秒 | 日記
ちいチャンの町のバスは、運転席の前方が前に突き出ています。
横から見ると、顔のようにも見えます。
後ろから白い煙を吐いて、ガタガタガタガタじゃりの道を走ります。
途中、バス停に向かって歩いている人が、バス停に着くのが間に合わずに、思わずバスに向かって、手を上げてしまう時があります。
そんな時、運転手さんは、その人の側でバスを止め、入口を開けて乗せてくれます。
「いやあ、どうも、どうも、行かれてしまうかと思ったよ。」
そう言いながら、運転手さんにおじぎをして、ハンカチで汗をふきながら、その人は座席に座ります。
それからまた別の日、バスが発車した後で、後ろから小走りで追いかけて来る人がいたりすると、運転手さんはすぐに気が付いて、バスを止めて待っていてくれます。
ガタガタガタガタ海岸沿いの山道を走っていると、途中で山から下りて来た子供たちに出会います。
手には、本日の収穫「アケビ」を持っています。
運転手さんは、子供たちの横でバスを止めると、
「おー!いっぱい採ってきたなあー!俺にひとつくれ!」
と、窓を開けて言いました。
子供たちの一人が、小枝についてる「アケビ」をひとつ、ちょっとはにかみながら、運転手さんにあげました。
「ありがとな!」
運転手さんは、お礼を言うと、またバスを走らせます。
運転席の横で、枝の付いた「アケビ」は、バスが揺れるたびに、小さく揺れいました。
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