砂浜に、握りこぶしぐらいの大きさの、巻貝が落ちていました。
大きいお兄さんが、
「卷貝を耳にあててごらん。」
と、言いました。
ちいチャンは、砂浜の巻貝を拾って、耳にあててみました。
巻貝の中からは、風のような、うねりのような音が聞こえます。
「海の音が聞こえるかい?」
大きいお兄さんが聞きます。
「うん!聞こえる!」
ちいチャンは答えます。
(そうか、これは海の音だ、海の音が聞こえるんだ。)
目をとじて、巻貝を耳にあてると、海の光景が目に浮かんで来ます。
ちいチャンは、巻貝を家に持って帰り、水道の水できれいに洗いました。
巻貝は、耳からの距離を少し離したり、近づけたりするだけで音の高さが違
って聞こえました。
乾いた巻貝からは、その中に砂浜があるかのように、サラサラと砂がこぼれ
落ちました。