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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

シュバルツバルトの択伐林

2008-05-16 | フィールドから
・午前中は珍しく予定がなく,のんびりと起きた。朝食後、フライブルグを散策。一人でひたすら路地へ路地へと入り込んでいく。方向音痴のくせに,知らない街を歩くのは大好きだ。相変わらず日本人率はほとんどゼロに近い。それにしても,ドイツ語だと簡単な言葉が分からないので,各種案内が全く意味が取れない。少しは勉強してから来るべきだった。市場付近で迷っていると,不思議なことにHekkiに遭遇。駅の行き先を教えてもらう。



・2時に待ち合わせていた,フライブルグ大学のSpiecker教授の車でパーマネントプロットへ。黒い森の小さな農家にとって,“生きるため”に択伐方式は必要不可欠なシステムだったことを聞かされる。初日と同じ内容であるが,小さな農家にとっての収入源確保という経済的な目的で,このシステムが自然発生的に出来上がっていたことは、改めて当方の中では新鮮であった。



・さすがに3度目になると,森自体を見る目はかなり養われてきたようだ。ここでは樹冠を形成する高さは30m前後と富良野とあまり変わらない。林道密度は50m/haとこれまた同様である。しかし,後継樹のストックは豊富である(というか,今まででも一番多いかも・・・)。森林は見事なぐらい複雑な階層構造をしており,持続性が保証されていることが一目で分かる。この付近ではヨーロッパブナを欠くが,意図的に伐採して,Abiesとトウヒの2種の世界で択伐施業を回している。ブナがあると耐陰性が強いので他を排除してしまうというのがその理由とのこと。



・教授によれば,極相林はむしろ一斉林に近い状態で,下層には後継樹を欠く構造になっており,ブナの比率が増えるという。実はほったらかしにしてしまうと,ブナ林にモミが混じるような林になるのであろう。Spiecker教授の言葉を借りれば,こうした複層林(異齢林)は人の手によって人為的に作られたものであるという言葉が印象に残った。自然保護の人たちは,この森をみて「この森は素晴らしい森だから,手をつけるのはやめるべきだ」というという話を聞いて,さもありなん,という感じである。

・個体の健全性や将来性を考える上で,樹冠長(樹高から枝下までの高さ)が大事な指標であるとされていたのが興味深かった。調査でも実際に測定をしているらしい。アイデアとしては,樹冠長が着葉量に高い相関があり,着葉量が成長と相関するという図式のようだ。着葉量を健全度の指標とする点は富良野と同じだが,定量的か,定性的か,という点が異なる。

・雑談的に、学生への指導についてのお話も伺う。教授の場合,まず50個(!)の研究テーマを用意して,その中から学生に選ばせて研究させるとのこと。こうしないと,学生が自ら考える力が育たないという考えであるが,論文の生産性は決して高くないというのが悩みのようである。大学当局から,最近,急に成果を求められるようになってきているという話を聞く。いずこも事情はよく似ているようである。

クベェ100年

2008-05-15 | フィールドから
・列車でヌーシャテルまで行き,ETH大学の名誉教授Schutz教授にピックアップしてもらう。教授はPro Silva ForestというPlenterシステムの技術研究集会のチェアマンをされており,本システムに関する概念やモデルに関する多数の論文を書き記されている。しばらく走った後,クベェの技術者のトップOberson氏と合流。Schutz教授とObserson氏はフランス語で,我々と教授は英語で会話という図式。さて,いよいよ著名なクベェ照査法の第一試験林へ入る。クベェの照査法を体系的にまとめたのがHenry Biolleyで,林内には石碑が残されている。



・昨日訪れたエーメンタールに比べてさらに木の成長がよく,思ったよりも巨木がぽつんぽつんと分布している。後継樹も豊富だが,あちらこちらに集中分布し,スタンド全体として様々なサイズクラスが準備されている。そういう点では,まさしく択伐林型の典型といえる林である。ちなみに,50年以上択伐をしていない自然林ではヨーロッパトウヒの一斉林状態になっており,なんと蓄積は約1000m3/ha。これに対し,Plentering林は約半分である500m3/haで回している。“小さな森”で維持するというのは富良野も同じ考えなのだが,もともとのポテンシャルと目標蓄積にはだいぶ開きがある。



・ちなみに,昨年伐採したという場所では,枝条は林内に放置されている。特に処理はしないが,なんら問題はないそうだ(本当か!)。それにしても,材はサイズの大きさだけでなく,極めて通直で“勝てんなあ”という印象。Obserosn氏はしきりにPlenterシステムでは,年輪の詰まり方が最初は細かく,後から大きく均等になることを強調していた。これは富良野でもお馴染みの話ではあるのだが,とにかく150年以降の成長がすさまじい。



・樹種構成の推移グラフを見ると,これまでに徐々にであるが,トウヒが減少,ヨーロッパブナが増加している。Abies albaはそれほど変わらない。これは必然でもあるが,人為的な意図も働いている。トウヒが減少したのは,耐陰性が他よりも劣る(陽樹性が強い)ことと,生態的理由でヨーロッパブナを増やしたことによるらしい。

・生態的理由といえば,クベェではごく試験的ではあるものの,一部の倒木を残すという試みを行っている。これは別に,倒木更新を期待してるわけではなく,まさに生物多様性を高めるための手法だという。伐採で邪魔にならないのか?と聞いていみると,邪魔にならないくらい小数の倒木しか残していないらしい。なるほど,倒木は実生のセーフサイトとしてはたいして機能していなかったが,1本だけ実生を見つけて嬉しくなった(倒木ふぁん,としてはね・・・)。生物多様性維持のためであるという話だが,特に詳細な研究を行っている様子でもなく,感覚的・概念的な手法のように思える。



・第一試験林ではやはりエーメンタール同様に空中湿度が高いようで,着生植物は豊富である。着生植物の量で空中湿度を定量し,成長量や更新の多寡との関係を見たら面白いんじゃないか,と妙なアイデアが湧く。実生を探しつつ,林内をずしずしと歩く。ふと殺気がしたのでズボンを見ると,昔懐かしい(?)ダニだ(全く姿が一緒に見えた)。こんなところで食いつかれてはかなわんので,早々にお引取り願う。と,足元を見ると何か黒い塊がいる!一瞬ヒルかと思ったが,幸いにして違うようだが,これは・・・。う,ナメクジではないか・・・。でかい。くろい。気がつけばあちらこちらに泰然と“いる”。まるで,アメフラシのようである。フランス語では“Limace”というらしく,あまりにも印象に残ったのでObsersonから差し出された記帳ノートに,驚いたというコメントとイラストを書いておいた。



・クベェの第二試験林へ。第一試験林は北向き斜面だが,この試験林は南向き斜面である。距離はさほど離れていないのだが,北と南では樹種構成や更新パターががらりと異なるらしい。簡単に言えば,北向きでは針葉樹(ヨーロッパトウヒ)が優占し,南向きでは広葉樹(ヨーロッパブナ)の割合が多くなる。空中湿度はと着生植物をみると,なるほどこちらでは圧倒的に少なく,乾燥していることが分かる。それにしても,ヨーロッパブナは“わんわんと”更新しており,タカ&トシ的にいえば「ダケカバか!」とでも突っ込みたくなるほどである。ちなみに,ここでもヨーロッパブナは林業樹種としてはあまり認められておらず,あくまで生態的な理由によるようだ。また,日本のように森林のシンボル的な要素はあまり感じられなかった。



・Oさんが山林に書かれていた論文でも,クベェ照査法の成功はシステムが合理的であり,地位や更新の容易さが極めてシステムに向いていたことに加え,専門の高い技術を持ったスタッフが誇りをもって仕事に当たっていることによる,と紹介されている。トレーニングコースは3年間で,みっちりと理論,様々なテクニックを学べるようになっている。日本の場合,教育と職の乖離があり,教育は実践と必ずしも合っていないことが多く,また,実践する職人は教育よりも“目で盗め”的なところが強調されすぎているのかもしれないと感じたりした。Hekkiとも議論をしたが,この問題はもう少し具体的なトレーニングコースを知ってから考えた方が良さそうである。

・Shultz氏はPlenterシステムを持続させるにあたり,サイズ構造を安定させるための均衡モデルなるものを提唱し,それが実践でも利用されている。この原著論文はAnnals of Forest Scienceに発表されているので,一度,読んでみる必要がある。それにしても,これらのグループでは研究と現場が密接にリンクしているようで,アメリカのチャールストンでの会議を思い出させた。Schultz教授とObserson氏も二人でいつまでもしゃべっており,本当に仲が良い。



・午後から牧草地に1901-19007年に植林(ヨーロッパトウヒ)をして,ランドスケープを改変したというプロットを見せてもらう。標高は1150m程度。面白いのは,全体の3分の1程度のエリアで,10×10mのモザイク状(市松模様)に,植えた場所が今では混交状態になっていることである。最初,ストローブの格子状皆伐みたいなことをここでもやったのかと思ったのだが,そうではなく,植えるときに最初からモザイクにしたという。100年も前にそんなことを考えつくとは,スイス人は先を見通す力に長けているのであろうか。

・この森林は全体として,公園のようになっており,行きかう人たちとボンジュールと挨拶を交わす。そうそう,この地域は完全なフランス語圏である。言葉の問題には政治的な問題が付きまとう。ちなみに,植栽当時から比べて,カエデとヨーロッパトネリコがかなり増えており,ブナとハンノキは減っているということである。ヌーシャテル駅で教授と別れて,ICEでフライブルグへ。途中,Oさんと色んな話をする。久しぶりに日本語で話すと,やはりストレス解消である。もう少しレベルアップしないといかんのだけれど・・・。

・フライブルグでは,フロントのお姉さんのおススメに従って地ビールを飲みに行く。お約束のソーセージとザワークラフトとともに,フルーティな味を堪能しつつ,3人で再びエーメンタールとクベェの相違点などについて議論。とにかく,二日間の行程で分かったのは,ここの人たちはほとんど全くといってよいほど,更新を問題として捉えていないことである。そりゃそうだよねえ・・・。

・ところで,Hekkiによればフィンランドの方式は単純で,サイズ構造の逆J字型の最適曲線を推定し,曲線の上の部分を収穫するという。ちなみに曲線の下の部分は収穫できないので,その部分を担保するために,少し上のサイズクラスでその部分を残しておくらしい。また,Increment(増加)の定量とそれに基づいた伐採量の算定をする上で,どういうサンプリングデザインが適切なのかというような議論にもなる。とにかくサイトに応じたIncrementを正確に測ること,そして樹種の特性(耐陰性など)をよく考慮することが大切であることが強く印象に残った。

エーメンタールの択伐システム

2008-05-14 | フィールドから
・Oさん,フィンランドのHekkiと朝食で合流。列車でBirmensdorf駅まで移動した後,スイス連邦研究所(森林・雪・環境)のZingg氏の案内で著名なエーメンタール(Emmental)の択伐林を見る。択伐の定義でしばらく話題が持ちきりなるが,ここではドイツ語が起源である“Plenter"という用語をしきりに強調していた。同行したフィンランドのHekkiはUn-even aged standsという用語を用いており,これらの用語の定義の裏には実は色んな思いが凝縮されている。ちなみに、Zingg氏は色んな言葉を話せるらしく,最初の一言が「今日はドイツ語にする?英語にする?」であった。英語は苦手といいつつ,よどみなく流暢に次から次へと説明してくれる。当方のリスニング能力では,ついていけなくなることもしばしばだったが,こうした会話のシャワーに身を慣らすことがまずは大切である。この点、二人は何の問題もなく英語を操っており、ため息ものである。



・まず,印象的だったのは,スイスのランドスケープを紹介しながら,Zingg氏がPlenterは森林だけでなく,牧草地も含めたランドスケープ全体の持続的な経営保全を意味すること,また,このシステムが農家にとって代替のない実にシンプルなシステムだと言っていたことである。つまり,Plenterシステムは自然の法則に則っており,たとえば,森林を皆伐してしまうと土壌が流出したりして,ランドスケープそのものが維持できなくなるという問題があるらしい。Hekkiによればフィンランドでも択伐による異齢林は決してメジャーではなく,あくまで皆伐一斉更新がメジャーだそうで,この辺はスイスならではの流儀とでもいうべきものだろうか。後で聞いたところによると,農家には様々な法律(一定範囲以上の皆伐はできない)などがかなり細かく指定されているらしい。そうした背景も実際には効いているのであろう。



車でドライブしながらアルプスの田舎の風景を堪能。まさにハイジが暮らしていそうな感じである。桜,ライラック,タンポポ,アブラナなど花盛りで,こちらのテンションも上らないわけにはいかない。クライマー憧れのアイガーやユングラウフも見ることができ,つかの間の観光客気分を味う。





・ところで、この周辺の樹種構成であるが,沢沿いでは普通にタモの仲間Fraxinus excelsior(ヨーロッパトネリコ)を見ることができる。少し山地に行くと,ヨーロッパトウヒ,Abies alba(Silver fir),ヨーロッパブナが卓越する。思った以上にヨーロッパトウヒが多いと思ったら,結構の部分は植林によるものであった。しかし,そうした場所でも徐々に択伐が行われるところが増えているようだ。また,カンバ類は少なかったものの,ナラやカエデ類も普通にあり,北海道と実によく似た景観をしている。

・Emmentalのリサーチプロットでは1900年初頭から2000年までのデータが事細かに記載されている。択伐の対象樹種は前述した,ヨーロッパトウヒ,Abies alba(Silver fir),ヨーロッパブナの3種である。これは全て耐陰性が高く,それこそが択伐施業をする上での重要なポイントだという。ただし,ヨーロッパブナはどちらかといえば,ほっとくと多くなってしまう樹種という言い方をしていたのが面白かった。ちょうど,Iくんのイヌブナの更新がいかに大変かということを見ていただけに,何もストレスを受ける様子もなく更新しているヨーロッパブナには恐れ入りました,という感じであった。また,興味深かったのは,モミとトウヒではモミの方が若干耐陰性が高く,しかも,それは氷河期以降の歴史を反映している(AtlanticかContinentalか)という指摘であった。

Emmentalのリサーチプロットの林床は,ササがなく(無論!),コケに覆われており,確かにトウヒが地表から更新している。こうしたことは話には聞いていたが,やはりこの目で見るというのは大事なことだ。





・Abies albaの更新も同様に起こっているのだが,実生サイズの更新と稚樹・幼樹クラスの分布は同じではないようである。とにかく進界前の前生稚樹が豊富であることは間違いないのだが,その分布は決して一様ではなく,必ずしもギャップに対応しているわけでも,地形に対応しているわけでもないのが意外だった。結局,どうしたら,稚樹や幼樹クラスがわっと一斉に更新するのかはつかめなかった。しかし,Emmentalの森林の大部分では,これら3種の更新はほとんど問題にならないほど順調であり,伐採によって光環境をコントロールするだけで,持続性をコントロールできるということは納得できた。



・リサーチプロットでは,生データに近い値だけでなく,モデルによる解析結果も示されている。データを見てみると,サイズ構造の時系列的変化(100年!)を見ても,想像以上に安定している。このサイズ構造の時系列データの示し方はすごく参考になった。北畠ら(2003)ではわずか30年で半分のプロットではトドマツのサイズ構造が崩れてきていたのだが,Emmentalでは思った以上に安定している。まさしくこれが持続性を保証する論拠にもなっているわけで,もっとサイズ構造の保続性に注意を払う必要があると感じた。

・Zingg氏によると,大事なのは対象樹種が全て耐陰性があるということであった。つまり,陽樹ではこのような択伐施業を保続させることは難しいというのである。これを北海道に置き換えてみると,ヨーロッパトウヒはエゾマツ,Abies albaはトドマツということになり,これらは耐陰性という点からすればクリアーしていると思われるが,やはり更新の難易が全く異なる点がポイントであろう。そして,エーメンタールでは、想像以上にヨーロッパトウヒの蓄積が多く,また,後継樹のストック量がとにもかくにも多かったのが印象に残った。また,この付近は地位が高いのか、全体に樹高が高いのがすごい!と素直に感じた。最大では50mを超える樹高であり,こうしたポテンシャルがこのシステムを支えている一因であるともいえるのだろう。





・もう一つ気になったのは、ヨーロッパブナの存在である。これに対応する樹種を北海道で考えても意外と見当たらない。ミズナラもかなり性格が違いそうだし,カンバは論外,シナノキはある程度当てはまりそうだが,当方からすれば、かなり性格上のイメージが異なる。そもそも,北海道の混交林は耐陰性という点で見れば(といいつつ,耐陰性をどう定義するのか,評価するのかというのはまた別の問題があるのだけれど・・・),実は耐陰性が低い樹種もその構成員として重要な役割を果たしているようにも思える。とすれば、Zingg氏の意見が正しければ,そもそも安定した択伐を続けられる樹種構成になっている場所、とそうでない場所があり,それを峻別する必要があるのかもしれないという印象ももった。



・色々と示唆に富んだ体験をしているはずで、考えるべきことはたくさんありそうなのだけれど,思考の整理が全く追いついていない。とりあえず、印象が鮮烈なうちに書き記した(書き散らかした?)という感じで、せっかく読んでいただいた皆さんには分かりにくかったりするかもしれません・・・(すみません)。ただ,自然の理を模倣するのが天然林施業の理であるとすれば,現在の様々なトライアルが本当に模倣となっているのかどうか,もう一度,原点に立ち返って考えなければならないという思いが強くなった旅であった。気が付くと97枚もの写真を撮影していた。明日はまたもや有名なクベェの照査法試験林、想いは尽きない・・・。

チューリッヒ到着

2008-05-13 | その他あれこれ
・朝5時45分起床。田無,高田馬場,日暮里を経由して,成田空港に8時15分着。スイス・インターナショナル・エアラインズではeチケットなるものしか認められていない。とのことで,旅行会社から渡されたのは印刷されたぺらぺらの紙。これで本当に大丈夫かというのが実に心配だったわけだが,番号を言えばあっさり登録終了。さすがにGW明けということもあってか,成田空港は全般にがらんとしており、あっという間に国外の人になってしまう。こんなに簡単だったっけという感じで,少々,拍子抜けである。

・機内は満員御礼で,エコノミーの悲しさかそれなりに窮屈である。スイスだけあって、機内放送は5ヶ国語である!ところで、今回窓際になった(窓際しか空いていなかった)のだが,最後の景色は楽しめたけれど,トイレに立つときに隣の人にどいてもらわないといけないので,そのタイミングを計るのに妙に気を遣うことが分かった。今度からは、なるべく通路側に座るようにしよう。

・機内では,Yさんが昨晩送ってくれていたアオキのNon-local逸出論文の原稿をじっくりチェック。さすがにこれだけ時間があると集中できる。思う存分赤を入れることができて,かなり進捗したような・・。関係ないけど、スイスインターナショナルの客室乗務員は皆さん美人ぞろいである。

・思ったよりも早い時間に機内の照明が消えてしまったので,気分転換に映画「I am legend」を見たが,これはイマイチであった。14時間のフライトもあっという間に終わり,機内からは既にスイス郊外の田園風景が広がる。色調が統一されていて,絵葉書の世界に迷い込んだみたい。黄色の畑はナタネアブラだそうである。飛行機を降りると意外にも暑い!



・空港からは列車でチューリッヒ中央駅へ。まず,旅券を買うのに一苦労。自動券売機は20フランしかお釣りがでず,10フラン札は受け付けなかったのだ(せっかく買い方を学習していたのに!)。それにしても、この時点で、機内にあれほどたくさんいた日本人は一人もおらず(皆さんツアー客が多かったようで),車内の日本人は当方ただ一人である。急にこの列車が中央駅に行くのかどうか不安になったので,エキゾチックな顔をしたお姉さんに聞いてみると,案外と親切に「大丈夫よ」と教えてくれた。

・どこに行っても当方の方向音痴は変わらず、なぜか、スイス中央駅からホテルまでも迷ってしまった。が、どうにかこうにかホテル到着。既に夕方5時半を過ぎてきる。店が6時から6時半にはほとんど閉まってしまうというので,慌ててガイドブック片手に飛び出す。キッチン用品や文房具の専門店(bodium)は改装中,子供の絵本専門店を目指していくも,なぜかまたもや迷う。と、気が付けば,おおっ,チューリッヒ湖畔ではないか。ガイドブックによると店は6時半までと書いてあるが,その実,ほとんど閉まっている。ということで,買い物はあきらめて,のんびりと湖畔を散策。



・この界隈では実に多様な人種が実に多様なスタイルで闊歩したり,のんびりしたり,している。恋人同士も多く,人目はばからずスキンシップをとっているのだが,不思議といやらしくないのは本人達が実に楽しそうだからだろう。とにかく今を楽しむぜ!,という雰囲気に満ち溢れた街である。ずっと怪しい天気だったのだが(当方の場合,大体,雨が降り出してくるというパターン),奇跡的に晴れ間が射す。まるで当方を祝福しているかのよう(と思うのは大いなる勘違いであることぐらいは承知している)。



・湖畔から戻る途中、横断歩道付近で、突然大きな物音がしたと思ったら、なんと珍しいことに交通事故である。青い看板みたいなのはバスのカバーが外れてしまったもの。幸いなことに、おそらくけが人とかはなさそう。今回は観光バスと自家用車という珍しいケースだったようで、回りも騒然としていた。



・今度はリマド川の反対側からチューリヒ発祥の地であるリンデンホフの丘に。なるほど菩提樹(シナノキ)が実を揺らしている。この丘は風が吹き渡り,これまた不思議な静寂と安寧をもたらすような地である。リマド川とその向こうにはチューリヒ大学と連邦工科大学が望める。





スイス中央駅の地下にはショッピングセンターがあり,相当にぎわっている。当方も何となくその熱気に押されて,なぜか夏みかんを1個、買ってしまった。スーパーであるミグロも体験し,なかなかの収穫。ふと時計に目をやると最早7時半だというのに,一向に暗くない。一体いつになったら日が暮れるのだろうか・・・。リマド川のほとりで、満開に咲いたトチノキの花の白がまぶしい。


旅準備

2008-05-11 | その他あれこれ
・明日からスイスへと旅立つ。スーツケースに荷物を詰める。今回はスーツの必要がないので楽だ。チューリヒ2泊、フライブルグ2泊の予定。明日の出発が早いので、なんか緊張しそうである。色々と忘れ物があるような気もするが、チケットとパスポートとお金があれば後は何とかするしかない。

・富良野のOさんと現地集合の予定であるが、今回はセッティングは全てお任せということになってしまった。お陰で、クベェの照査法長期試験林とか、色々と見ることができそうである。ということで、しばらく音信不通になるかもしれません。チャンスがあれば、現地から択伐林リポートしたいと思います。

雨降り

2008-05-10 | 研究ノート
・LさんからMolEclのトドマツ種子散布論文の著者校正が送られてきた。弥生への行き帰りでチェック。著者校正を見ると、その仕上がりにはいつも感動するわけで、あきらめずに頑張ってよかったという実感がある。しかし、当方が関係するところで文献リストの抜けがあったりして、取り急ぎ、リストを送りつつ、気がついたところをメールで指摘。

・Iくんから交雑論文の新解析結果を送ってもらったのでチェック。ううむ、それなりに複雑である。個体ベースの成長についてはシンプルなのだが、シュートの形質になると、それなりにやんちゃな挙動を示している。シュート形質のヘテロシスと遠交弱勢についてはあまり言及できないし、そもそも意味があまり分からないということで、思い切って削除する方向で原稿を修正。仕上がりはイマイチだが、どうにもはまりつつあるので、迷走しないうちにIくんに修正方針を送る。



・今日は一日雨である。公園に行ってもカタツムリくらいしかいない。雨粒は綺麗なんだけど、やっぱり車がないと雨の日は不便である。北海道では傘をさすということ自体がめったになかったのだが、こちらでは傘と合羽が大活躍。梅雨になったらどうなることやら、少々、憂鬱である。

2007

2008-05-08 | その他あれこれ
・昨晩、寝る間際になって鼻水が止まらなくなった。ふと気がつくと重度の花粉症が再発している。のん気に森林浴を楽しんでいる場合ではなく、マスクをしておくべきであった。鼻が詰まって寝れないと思っていたら、突然の地震である。たぶん3回は揺れたと思うんだが、最後の揺れは大きくて長かった。家が4階だからだろうか、結構、ゆっくりと揺れるのもあれはあれで嫌なものである。

・来週からスイスと南ドイツに行くために、諸準備など。それにしても、最近、色々と締め切りが厳しい仕事が舞い込んでくる。ところで、最近、読めない拡張子のワードやエクセルのファイルがたまに送られてくると思ったら、ワードとエクセルの2007版だとのこと。当方のPCは、もはや遅れている・・・らしい。アップグレードするのはいいけど、拡張子を勝手に変更するのはやめて欲しいよねえ。

・とりあえず、このままでアップグレード版ファイルを開けるようにするには、ここから互換機能パックなるものをダウンロードすればいいらしい。ここに辿り着くまでにずいぶんと時間がかかってしまった。相変わらず、ネット上でも迷ってしまい、方向音痴なことはどこでも変わらない。

フィールド・リハビリ

2008-05-07 | フィールドから
・秩父へ。Iくんの調査プロットを見せてもらいに行く。西武秩父から事務所まで歩いていける距離だということを実は知らなかったので、間抜けな電話をしてしまった。しかし、現場までは1時間半ほどかかる。Sさんの運転で調査地まで運んでもらい、現地に落としてもらう。3時半に迎えに来てもらうことにして、半日、フィールドで過ごす。



・この付近の天然林では、イヌブナ、ブナ、ツガの3種が優占している。イヌブナは萌芽するので多幹状になっているのに対して、ブナは単幹である。



・ツガも富良野におけるアカエゾ的な風貌を持っており(樹肌の印象だけだけど・・・)、これまたかっちょいい樹種である。



・この付近では下草がほとんどなく、たまにスズタケの集団が出てくると、むしろ珍しいという印象。ここまで下草がないと、もっとビシバシと樹木の更新が起こりそうなものだが、ブナ、イヌブナともに非常に稚樹密度は低く、ツガはもっと少ない。富良野のトドマツからすると、もっと出ていても良さそうなものなんだが、ここまで少ないのは不思議なくらいだ(たまにあるツガ稚樹は傘型樹形をしているので、それなりに”待つ”ことができるみたいだが・・・)。



・尾根沿いにはシカが食べないためか、アセビが繁茂している。現在、筒状の小型の花をびっしりとつけている。



・林床は思ったよりも乾燥している。倒木も北海道とは異なり、まるでセーフサイトにはならないようである。



・北海道から考えると信じられないくらいの傾斜で、当方はIくんの調査地を撹乱しないように歩くだけで精一杯である。野帳をつけながら、ただただ秩父の天然林の木漏れ日を味わう。この季節は蚊もおらず、日差しも柔らかく、ぼーっとしているだけで実に気分がよい。



・帰り際、富良野と同じセットの、ブナ産地試験地を見せてもらう。地形が平らではないので(当たり前だけど)、均質とはとてもいえない条件である。それにもかかわらず、フェノロジカルな産地順位は富良野と良く似ているようだ。右の北海道産が完全に開芽しているのに対し、左の九州産はほとんど開芽していない。



・葉のサイズもこの通りで、見事に形質は遺伝的に支配されている。芽鱗痕の残り方も同様で、実に興味深い。それにしても、たまにはフィールドにどっぷりと浸からないとダメだ。色々と発見があったような気がするのだが、体が反応するまでにかなりの時間が必要である。

科学体験

2008-05-06 | その他あれこれ
・連休最終日。自転車で多摩六都科学館へ。特設展示”ボクのとなりのコウモリくん”では、コウモリの生態などに関する解説があれこれとあって興味深い。やはり、先日の夕刻に家の近くで飛びまくっていたのはコウモリ(たぶんアブラコウモリ)だったようだ。しかし、当方の場合、こういうところに来ると、こういう仕掛けならば子供は喜ぶのか、とか、このお兄さんは学芸員か、それとも学生バイトなのだろうか、とか余計なところに気が回ってしまう。

・折り紙チックな、コウモリ飛行機の作成コーナーに家族で参加。クリップをつけて飛ばしてみると、見かけと違って、すいーっと気持ちよく飛ぶ。教室で飛ぶ種子の工作して、種子飛ばし実験とかをやらせることができるかとか、また余計なことを考えてしまった。



・2Fではちょうど科学実験ショーなるものをやっている。おそらく初めて見るであろう子供も、割れないシャボン玉とかを見て、結構、ドキドキしている。3番目の出し物(?)では、固まってしまうはずの液体が固まらず、勇気を出してゲスト参加してくれた子供の頭に水がかかってしまう、というアクシデントなどありつつ、なかなか楽しめた。今度は同科学館の目玉であるプラネタリウムをぜひ体験してみたいところだ。

路地は続く

2008-05-05 | その他あれこれ
・午後2時ごろから吉祥寺へ。バス1本で行けるというのは気楽である。雑誌に載っていた(という)喫茶店に入る。我ながら(というか、わが家族ながら、ミーハーである)。カフェラテを頼むとウサギがにこやかに登場。それにしても、相変わらず、吉祥寺は老若男女が集まっている(みんな、何しに来ているのだろうか・・・?)。少し違った路地に行くと、また、こだわりの店が出現したりして、なかなか楽しい。



・さらに吉祥寺の路地探検を行うという妻と上の子供と分かれ、当方は下の子供と井の頭公園を探索。午前中も虫探しをしていたのだが、子供にとっては、まだまだ自然探索の方が楽しいらしい。小雨交じりの公園をくるりと一周すると、アコースティック・ギターデュオが練習をしている。ゴンチチよろしく、一人が伴奏、一人がメロディーを奏でているのだが、半端な腕ではない。

・感心しながら聴いていると、100mほど離れたところで20名ほどの集団がパフォーマンス(ダンス?)をしていながら奇声を上げている。こちらのダンスもなかなかのもので、何より当人達は楽しそうである。お客さんもついているらしく、”芸術の春”である。こういうのを見ていると、自分も何かをやらなきゃ、といった焦りに似た感情を抱くのだが、いつの間にか日々の生活に流されてしまっている。



・ウインドウ・ショッピングを楽しんだ後、最後は6時から居酒屋へと変身するカフェで夕食。店員の兄ちゃんが”天然”で、笑える店であった。タコライスなど意表をつきながらも癖になる味である。まだまだ路地は続いており、吉祥寺の懐の深さを感じるのであった。