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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

ゲルスバッハ

2008-05-17 | フィールドから
・現地検討、最終日。ホテルでIさんと待ち合わせて,ゲルスバッハへ。1時間ほどアウトバーンを飛ばす。待ち合わせ場所はドイツとヨーロッパでグランプリを取った美しい村である。絵本さながらの景観を楽しみつつ,大規模架線集材跡の現場を見せてもらう。9時半,リーガー氏と合流し,現地へ。リーガーさんは子犬を連れていて,それがまた可愛い。





・ゲルスバッハは,ローム層の地質のためにかなり成長がよく,他のシュバルツバルトとは比べにくいという。リーガーさんの話で印象的だったのは,ここはいわゆる“Plenter林”ではないという言葉である。施業自体も単木択伐というより群状択伐に近いところもある。中にはPlenter林的なサイトもあるが,既に成熟した一斉林もある。施業区を見せてもらうと,その変革がよく分かる。



・中にはヨーロッパブナの純林に近いような林もあったりして,これまたなかなか面白い。ブナの林では林道側に針葉樹がびっしりと更新し,カエデ(Acer psuedoplatanus)が実生バンクを形成し,ブナ自体もあちらこちらで更新している。そうそう,ゲルスバッハがこれまでの森林と違う点のもう一つは,カエデが少し目立つことである。



・これまでの3箇所ではヨーロッパトウヒがメインで択伐が回っているという印象があったが,ここでは,“この環境に適応している”というモミをとても大事にしているのが印象に残った。ノロジカはモミの稚樹を食害するので,それがやはり大きな問題になっているようである。モミの木の大木を見せてもらいながら,そのような話を聞く。



・お昼は,リーガーさんがハンター仲間と自分達で建築したという山小屋に連れて行っていただいて,フランスパンと地元のゲルスバッハ産のハムとチーズを頂く。最後に,ゲルスバッハはサイトによって林相が異なり,それが時間とともに変化していくが,全体としては様々な齢級が途切れることはないこと,皆伐をすると造林するためのコストがかかり,しかも成林しないリスクがあることを強調されていた。



午後からはIさんの案内で,フランスの平地ナラ林を見せてもらう。ドイツからライン川を渡りフランスへ入る。なんと普通乗用車で怪しい車でなければパスポートのチェックをされることはないらしく,今回もフリーである。平地ナラ林ではナラと燃料用のシデを同時に仕立てるという施業を行っており,シデは5-7年ぐらいで薪炭用として萌芽更新で回し,ナラは大径木に仕立てようとしているらしい。



・ナラは10m間隔で植栽し,その間にシデを植え,萌芽更新によって束状になったシデがナラの樹冠下を占めることから不定芽の発生が抑えられるという話だったのだが,肝心のナラがまばらなのと形質があまりよくなかったのが気になった。おそらく,この現場ではシデの燃料材生産に重点を置いているのであろう。こうして,スイス,ドイツ,フランスと3国をまたにかけた現地調査は完了。それにしても,当方にとっては天気に恵まれたのは奇跡というしかない。