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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

おとしぶみ

2008-05-04 | その他あれこれ
・少し蒸し暑い中、子供と二人で虫探し。オトシブミのものらしきゆりかご発見。中には小さな卵が入っている。製作者である成虫は見当たらない・・・。



・小さなゴミムシの仲間が見つかり一安心。と、ふと道端に目をやれば、センチコガネがゆるゆると歩いているではないか・・・。ユーモラスな体型といい、メタリックな輝きといい、当方にしても好きな昆虫の一つである。ヒラタシデムシ(らしき)虫も見つかり、子供は大喜びである。しかし、これから妙なプレッシャーと闘うことになるであろう、当方にとっては少し複雑な心境である。いつも虫がいるとは限らないのでねえ・・・。

・虫探しに興奮したのか、昼過ぎに子供は寝てしまった。その隙に、トドマツ交雑論文の改訂作業を進めるべく机に向かう。イントロは大体収束に向かっている気がするのだが、考察については、”進んでいるのか、退却しているのか”すらも一向に分からない状態である。再解析の結果、雑種強勢も遠交弱勢も見出されなかった、とすると急にインパクトが弱くなる気がする。そもそも樹木(特に高木)では、交雑実験そのものの事例が少ないので、検出されても検出されなくても”重要”な結果には違いないはずなのだが、論文の書きやすさは随分と異なってしまう(だからこそ、検定して有意になると喜ぶ(?)人が多くなる、ってわけだ)。

・交雑F1は自生集団の次代よりパフォーマンスは低いので、”問題”は生じることになるわけだが、この部分をいかに伝えるかがポイントになりそうだ。全体として、両方のF1が自生と導入の中間のパフォーマンスを示すために、自生集団に適応的な遺伝子が希釈された可能性が高いが、F1で中程度やヘテロシスを示したとしてもF2で遠交弱勢が顕在化する可能性があるので(Keller et al. 2000 JApplEcolなど)、影響評価には慎重な態度が必要、ということになるのだろうか、うーむ・・・。

・昼寝を1時間ほどでたたき起こし、親子3人で3台の自転車に乗って、近くの店に買い物に行く。少し割高だがこだわりの商品を置いているという評判だったが、なるほど、生鮮食料品はもちろん、乳製品、加工食品、冷凍食品まで、見たことのないパッケージが並んでいる。スタッフが一つ一つの商品をとても大事そうに扱っているのに好感が持てる。マドレーヌも、懐かしい手作りの味であった。

甲虫ことはじめ

2008-05-03 | その他あれこれ
・北海道から東京へと舞台は移ったというのに、子供は相変わらず昆虫に夢中である。とはいっても、この時期、クワガタやカブトといったメジャーな昆虫は出ていない。ハムシとか、コガネムシやゴミムシの仲間などがようやく出始めていると思われる。我が家の飼育ケースには、既にハナムグリとコメツキの仲間らしき甲虫がいる。今までは「札幌の昆虫」がバイブルだったわけだが、関東にはいないものも多そうなので、改めて山渓社の図鑑「甲虫」を購入したところ・・・。

・トドマツ交雑論文の再解析確認。Iくんから送ってもらったコードを1行ずつ試しながら、10000回のリ・サンプリングをして、交雑F1の値が両親平均値と有意に異なるかどうかの解析(ノンパラメトリック・ブートストラップ)。Rだと結構簡単なコードで書けることに感動してしまう(といっても、完全には理解していないけど・・・)。

・当方のように、どうしても必要に迫られないと使わないようでは、Rは一向に上達しない。といいつつ、5月29日(木)の夕方に、所内にて「(今更聞けない人のための)超初心者向けR講習」を実施することになった。基本的には、これまでに数回行った講習を少しずつリニューアルするというスタイルになりそうである。

・トドマツ交雑論文のイントロ修正。こちらも超久しぶりだったので、Meadowのショートカットのやり方とか、色々と忘れている。世の中が完全にワードに毒されているので、Texでは人とやりとりをするのに大変なことが多い。ということで、当方もついさぼりがちで・・・。しかし、いつか本を執筆するときにはきっと役立つ技術なので、Texは使えるようにしておきたい。

うなぎ草

2008-05-02 | 研究ノート
・朝一番に再びハンカチノキを見に行く。今日は天気が悪いせいか、お客さんはいない。見れば見るほど珍妙な花(と思っているのは、葉が変化したものだけど・・)である。地面にいくつか”ハンカチ”が落ちているので、しげしげと見つめてみると、ステージが進むにつれておしべが脱毛(?)し、最後は実になっていく部分が残るようである。



・下の写真では、右から左へとステージが進んだ状態。ネットで検索すると、その実は想像以上に大きくて、これまた奇妙である。今後も経過を見守ることにしよう。



・部屋に戻り、トドマツ交雑論文の構成を再び考える。昨日、満員電車の中で斜め読みしていたWillimas (2001) Ecological Applicationsを、もう少し掘り下げてみる。この論文では海草のアマモ(英語ではeelgrass、つまり、うなぎ草)のrestorationにまつわる遺伝的多様性の重要性が示されている。Williams and Davis (1996) Restoration Ecologyで、導入集団の遺伝的多様性が自生のドナー集団に比べて低いことは既に明らかにされており、この論文では「なぜに遺伝的多様性が低いのか」、ということと「遺伝的多様性が低いとどういう問題があるのか」、ということにスポットを当てている。

・この論文は結構なボリュームがあり、実に色んなことをやっている。まず、南カリフォルニアのチェサピーク湾とニューハンプシャーに導入された集団が、移植元となったドナー集団よりも遺伝的多様性が低いことが示されている(ただし、アロザイムのせいか、著者が言うほど差がないようにも見える)。各集団の導入に際するかなり詳細な経緯が明らかにされているため、導入集団の遺伝的多様性が低くなった原因は、ドナー集団からの植物採取が非常に小さなユニットで行われたためだと結論されている。

・さらにこの論文では、遺伝的多様性が高い自然集団と遺伝的多様性が低い導入集団において、繁殖能力と栄養成長に差があるかどうかを調べ、導入集団では得られた種子の実験室内発芽率も低い、ことなどを明らかにしている。さらにすごいのは、遺伝子型を調べた個体を用いて、実験的に遺伝的多様性の高い集団と低い集団を作出し、移植実験でパフォーマンスを調べているところである。

・驚くべきことに、これまた綺麗な結果が得られていて、多様性の高い集団の方が時間がたつにつれて、シュート密度が高いという、多様性と成長の正の関係が見出されている。このように、集団内の遺伝的多様性が低いことが、集団全体や個体の適応度に及ぼす影響をクリアーに示した例はそんなに多くないのではなかろうか。これこそ、講義で使えそうなストーリーだ。これら以外の結果もなかなか興味深く、もう少しじっくりと読解する必要がありそうな論文である。

・2001年にこれほどの仕事を成し遂げるとは・・・このWilliamsという研究者(ちなみに女性)只者ではなかろう。それにしても、海草の移植というのはなかなかイメージが湧かない。サンプリングも、スキューバダイバーが3-4mの水深の9万m2のエリアからうなぎ草を採取した、とある。大変そう・・・だが、なにやら楽しそうだったりもする。

お気に召すまま

2008-05-01 | 研究ノート
・5月。気がつけば花粉症もだいぶ楽になっている。子供が部活(バスケット)の朝練に行くというので、一緒に早起きして、最後までドタバタの講義準備。前回の講義の使い回しは極力少なくすることにして、ようやく落ち着いた、か・・・。

・一段落したところで、ようやくトドマツ交雑論文の再検討。審査者の意見を踏まえつつ、イントロの骨組みを大改訂する必要がありそうだ。解析自体もかなり変わるので、最終的な結論がずいぶん異なるものになりそうな予感。

・本論文の構成を考える上で、Hufford and Mazor(2003)TREEは改めて参考になる表現が多い。いずれ他に影響を与えることのできるような、こういう総説を書けるようになりたいものである。総説をひっくり返しながら、その中で紹介されている文献をピックアップ。早速、論文を印刷してEnd-noteに登録する。これを貯めると整理が後々辛くなってしまうわけなのだよ。

・当試験地において、市民の皆さんからの問い合わせで最も多いのは”ハンカチの木の花が咲いているか”どうか、である。毎年、花のシーズンには千客万来状態になる。当方が受けた電話にもこの問い合わせがあり、、「咲いていると思う」というなんともいい加減な回答をしてしまった。22日の実習では咲き始めていたことを確認してはいたのだが、最近は見ていなかったので昼休みに観察に行く。

・ハンカチの木が植えられている場所には、既に数名が訪れている。幸い、白い花はまだ咲いている(ウソではなかった)。しかし、花よりはむしろ新緑の方がまぶしいようにも感じられる。いかにもスタッフ的な格好でふらふらと現れたせいか、ハンカチの木の性質とか由来とか質問されてしまい、1つ2つと怪しげな解答をしつつ、逃げるように退散。もう少し勉強しておかないといかんねえ。

・庁舎の前にオオスズメバチの女王がふらりと登場。こちらは堂々たるもので、完全に迫力負けしてしまう。なんでこんなに強そうなんだ・・・こいつらって。巣でも作られた日には大変なことになるのだが、幸いにして、お気に召さなかったようで、お帰りになったようである。

・夕方から弥生にて講義。GWの合間にも関わらず、15名以上の奇特な(?)学生達がきちんと時間通りに教室に待っていてくれた。昨年度は学生たちの反応があまりにも薄くて、ほとんど自己嫌悪に陥った本講義であるが、今年度は学生達も非常に真面目で寝ずに起きていてくれた(途中で計算問題とかをやったせいもあるけど)。

・学生の授業態度はよかったのだけれど、当方の講義の流れがどうにも・・・。今度は思い切って生物多様性緑化を先に持ってきて、後半に遺伝的多様性と遺伝的分化の話をするべきであろうか・・・。相も変わらず、悩み多き講義である。