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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

フィールド・リハビリ

2008-05-07 | フィールドから
・秩父へ。Iくんの調査プロットを見せてもらいに行く。西武秩父から事務所まで歩いていける距離だということを実は知らなかったので、間抜けな電話をしてしまった。しかし、現場までは1時間半ほどかかる。Sさんの運転で調査地まで運んでもらい、現地に落としてもらう。3時半に迎えに来てもらうことにして、半日、フィールドで過ごす。



・この付近の天然林では、イヌブナ、ブナ、ツガの3種が優占している。イヌブナは萌芽するので多幹状になっているのに対して、ブナは単幹である。



・ツガも富良野におけるアカエゾ的な風貌を持っており(樹肌の印象だけだけど・・・)、これまたかっちょいい樹種である。



・この付近では下草がほとんどなく、たまにスズタケの集団が出てくると、むしろ珍しいという印象。ここまで下草がないと、もっとビシバシと樹木の更新が起こりそうなものだが、ブナ、イヌブナともに非常に稚樹密度は低く、ツガはもっと少ない。富良野のトドマツからすると、もっと出ていても良さそうなものなんだが、ここまで少ないのは不思議なくらいだ(たまにあるツガ稚樹は傘型樹形をしているので、それなりに”待つ”ことができるみたいだが・・・)。



・尾根沿いにはシカが食べないためか、アセビが繁茂している。現在、筒状の小型の花をびっしりとつけている。



・林床は思ったよりも乾燥している。倒木も北海道とは異なり、まるでセーフサイトにはならないようである。



・北海道から考えると信じられないくらいの傾斜で、当方はIくんの調査地を撹乱しないように歩くだけで精一杯である。野帳をつけながら、ただただ秩父の天然林の木漏れ日を味わう。この季節は蚊もおらず、日差しも柔らかく、ぼーっとしているだけで実に気分がよい。



・帰り際、富良野と同じセットの、ブナ産地試験地を見せてもらう。地形が平らではないので(当たり前だけど)、均質とはとてもいえない条件である。それにもかかわらず、フェノロジカルな産地順位は富良野と良く似ているようだ。右の北海道産が完全に開芽しているのに対し、左の九州産はほとんど開芽していない。



・葉のサイズもこの通りで、見事に形質は遺伝的に支配されている。芽鱗痕の残り方も同様で、実に興味深い。それにしても、たまにはフィールドにどっぷりと浸からないとダメだ。色々と発見があったような気がするのだが、体が反応するまでにかなりの時間が必要である。

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