一平のペンとギター

僕らしい小説を書き、僕らしい歌をうたう、ぞ♪、ペンとギターの一平です。ギター弾き語りと小説書きの二刀流。

翼をください ♪

2014-05-25 22:22:13 | Weblog

 

     僕は、トンビになった。

 

  空の高いところまで伸びている送電線のてっぺんに、トンビが一羽、とまっている。

 トンビは、しばらく、あたりをきょろきょろ見渡して、また、じっと動かなくなった、その途端、

 送電線のてっぺんから、羽を広げて飛び立った。そして、舞い上がったと思いきや、

 急降下した。スイーっと降りてきた、というより落ちてきた。僕のすぐ前の家の屋根まで。

 そして、屋根に留まるかと思ったとたん、また急上昇して、僕の視界から消えた。

  

  そのトンビの飛行の軌跡が、青い空に描かれた飛行機雲のように、僕の心に描かれた。

 

  ふと、少年時代の僕を思い出した。

  雪が積もった朝、まだ誰も滑っていない真っ白な雪面。

 スキーを履いた僕が、山のてっぺんに立って、さあ、ここから滑り降りるぞ、

 とストックを、思い切り漕いで、山のすそ野めがけて、すべり降りる。

 直滑降で、スイーっと、風を切って、空を飛ぶように、雪面を、滑りおちる。 

 裾に着いて、スキーの舵をきる。ジューー。ざっ。

 すそ野に立って、山を仰ぐ。

 てっぺんから斜面に、僕が滑ってきたスキーの軌道が、

 くっきり、雪面に描かれている。

 2本の平行なまっすぐな線が、山のてっぺんから裾に。

 

  送電線のてっぺんから、スイーっと、飛び立って、急降下し、また、急上昇して

 トンビが青い空に描いた飛行軌道 と、

  山のてっぺんから裾まで、白い雪面に僕が描いた、スキーの軌道が

 僕の心の中で重なった。

 

  僕は、一瞬、あのトンビになったような気がした。

 

           

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