先月、「ヘヴン」という小説を読みました。
川上未映子さんが書かれた小説。
どんな話か、簡単に紹介します。
14才、中学2年生の「僕」と
同じクラスの「コジマ」という女の子
が主人公。
僕は、生まれつき斜視。
クラスの男子、二ノ宮とその取り巻き連中
から、ひどいいじめを受けている。
―「ロンパリ」
ある放課後、うんざりした気持ちで振り向くと、
二ノ宮の取り巻きのひとりに首をつかまれてその
まま教室に連れもどされた。―
コジマも、クラスの女子生徒から、
ひどいいじめを受けている。
―コジマは背が低くて色の浅黒い、もの静かな
生徒だった。ブラウスにはいつもしわがよって、制服はくたび
れていて、身体はいつもかたむいているように見えた。量の
多い真っ黒な髪をしていて、強いくせのせいで気先はあちこち
にうねりながら飛び出していた。いつも鼻の下に汚れのような
髭のようなものがうっすら生えていて、そのことをいつも笑わ
れ、家が貧乏であること、不潔だということでクラスの女子か
らいじめられている生徒だった。―
僕の筆箱の中に、1通の手紙が入っていた。
手紙の主が、コジマだった。
2人は、手紙の交換を始める。
―四月が終わりかけるある日、筆箱を開けるて
みると鉛筆と鉛筆のあいだに立つようにして、
小さく折りたたまれた紙が入っていた。
ひろげてみるとシャープペンで、
〈わたしたちは仲間です〉
と書かれてあった。― (この小説の書き出し)
2人は、文通を通じて、付き合い始める。
この話の最後は、その年の12月。
9ヶ月の僕とコジマの話、です。
「ヘヴン」とは、コジマが好きな一枚の絵。
夏休みに、コジマが、僕を「ヘヴン」
へ連れて行ってくれる。そこは、美術館。
一平の読後感。
●僕は、中学生、高校生、の頃、いじめたこともなく、いじめられたこともなかった。学校の先生になってから、先生という立場で、いじめられた生徒、いじめた生徒、の両方と向き合って、話し合ったことがあった。
「僕」や「コジマ」が、現実にいることも知っている。心が、痛い。
担任だった時、僕は、昼食時、教室に行って、生徒と一緒に弁当を食った。5月、初めて、昼休みに、弁当を持って教室へ行った。すると、生徒たちは、何しに来たんだ?と冷たい視線だった。教卓の中で、しゃがんで弁当を食っている生徒がいた。T君だった。僕は、黙って、教卓に坐らずに、T君の座席に坐って、僕の弁当を広げて食った。それが続いた。が、ある日、弁当を持って、教室のドアを開けると、T君が、自分の席で、弁当を拡げて食っていた。後でわかった。T君は、あるグループの連中から、弁当を食われてしまっていたのだった。それがなくなった,と、ある生徒が僕にこっそり耳打ちしてくれた。教室へ生徒と一緒に食う弁当はうまかった。3年間、生徒と、弁当を食った。僕は黙って、一緒に、ただただ、弁当を食った。ただ、一緒に食うだけ。教室中にプーンと匂う、いろんなおかずの匂い。黙ってモクモクと、みなが食べている。男子も女子も。食事時は、勉強は、関係ない。そのおかげで、生徒の様子が手に取るように判った。小説に描かれているような苛め、があったら、絶対になくさないと・・・・・と僕は思っただろう。幸い、僕が先生をしていた場面では、僕の眼には、あのような苛めは、留まらなかった。あったけれど、僕には知りえなかった、のかも知れない。でも、きっと、なかったと、思う。生徒が卒業してから、何度かクラス会に呼ばれた。その席で、「実は、俺、あいつの弁当、4月に、食ってたんだヨ、先生」と卒業して10年ぐらいたったとき、酔ったK 君が、僕に、ポロリと漏らした。男子も女子も、わいわい、やっている。その中で、T君も、わいわい、やっていた。みな28才に鳴っていた。あの時、一緒に弁当を食ったみんなは16才だった。
だから、僕は、先生という立場で、「苛め」につい考えてしまう。
●僕やコジマが置かれた状況は、変えられないのか。ずっと続くのか。世界を見ると、多々、ある。強者が弱者を、力で、ねじ伏せる状況が。弱者が強者に力でねじ伏せられる状況が。しかし、長い歴史を見ると、変えられてきている。
「僕」の考え。「コジマ」の考え。そして「百瀬」の考え。
●中学生が、こんなにも哲学的に、宗教的に考えるかな?という疑問が、ふと残った。
●善と悪。天国と地獄。愛。を考えた。ドストエフスキーの「罪と罰」の主人公ラスコリーニコフのことも考えた。トルストイの「復活」の主人公ネフリュードフのことも考えた。
●石田衣良さんの、小説「14-フォーテイーン」の主人公も14才。綿矢りさ、さんの小説「蹴りたい背中」の主人公も、同じクラスの私と、にな川、の男女の話。高校生の。
●さて、
僕が書きたい Fourteen,Sixteen,
Seventeen,は・・・・・・・・!
そう、僕が書いた小説がある。
「初恋」(仮題「かもめ」)
あれは、18才の良介の初恋物語。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
14才が主人公・・・・・・・!
乞う、御期待?