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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

きんじろうカフェ、雨のち穏やかな晴れ

2016年05月12日 | 日記
 小田原城天守閣が、再建後56年後の大改修を終えての新装お披露目ということで、うす雨模様の城下まち歩きを楽しんできた。

 まずは、小田原駅東口コンコースの先の富士屋ホテルグリル“エフ”へ、11時半開店と同時に入店してすこし早目のランチで腹ごしらえ。本日のメニューは、周辺の飲食店が競って共同キャンペーン中の小田原丼なる地産地消もののどんぶり飯。地域柄、新鮮な魚介類の刺身を盛り込んだものが多い中、ここは老舗のホテル店舗だけあって、ロースト牛肉が盛りつけられている。となれば、平日昼から赤のグラスワインに手が伸びる。
 店舗を出ると右手先に、二宮金次郎少年像がいつもの勤勉な姿で見えている。その日は母の日を控えてのカーネーションに囲まれて、なんだかいつもとちがう様子にちょっと照れているかもしれない?

 JR線沿いに小田原城公園に歩いてゆく。天守閣はすっかりきれいにお化粧直しされて、石垣のうえに威風堂々とそびえたっていた。この天守閣、昭和35年(1960)に復興されたもので、江戸時代初期、稲葉藩主時代のものが原型となっているそうだ。それ以降、四百年の間に直近の関東大震災を含めて、五度もの震災被害に遭っていて、そのたびに復興してきた。昨今の熊本城の被害に驚かされてる現代人からすると、むかしのひとは少々の天災は当たり前で簡単にはへこたれなかったのだろう。天守閣が小田原市民ならずとも、城下町に暮らす人々のこころの支えとなってきた歴史が偲ばれる。
 三層四階建ての天守閣最上階に昇って、地上四十メートルちかくから周囲を眺め回す。かつての北条氏本丸跡と推定される八幡山方向、その先の箱根連山から時計回りに丹沢・大山・相模方面の山並み、東方向ふもとには小田原市街地が広がり、南方向に早川、江之浦から真鶴半島の先、相模湾が一望できる。この城下町の全体が見渡せる眺望は格別で、やっぱり高いところは登ってみるものだ。足元には、のんびりレトロ児童遊園地のかわいい豆列車が走っている。
 館内のパネルには、戦国時代の小田原城総構と小田原合戦について解説文があり、先に放送されたブラタモリ小田原特集のネタ元はここにあったのかもしれない。歴代小田原藩主の系譜も示してあって、三代藩主稲葉氏は長興山のしだれ桜で知られるけれど、小田原のあとに越後高田藩へ転封されているので、その意味で両地域は歴史的につながっているわけだ。
 つぎに小田原を訪れるときには、風祭から石垣山一夜城歴史公園まで歩いてみよう。そうしたらそのあとに早川港方向面へぬけられる。

 天守閣を下りてその足で報徳二宮神社へ足をのばす。本殿にお参りした後に、境内を歩いていると最近できたばかりの素敵なお休みどころを発見した。それがネーミングもかわいい「きんじろうカフェ」、軽やかな構えでどことなく無印良品風のセンスを見て取った。店内には二宮尊徳ゆかりのオリジナルグッズもあって、すこしばかりお土産に買い求めてから、無垢のテーブルが置かれたその場でひと休み。周囲の新緑が身に沁みる。すこし、晴れてきた、もうすこし、街歩きを楽しもうか。


 壁に“きんじろうカフェ”の立体文字、木製棚上段の枠の中には、金次郎像のミニチュアが浮かぶ。
このオープンカフェ、誤解を招かずに書いてしまうと、現代の市中における山小屋とでも呼ぶべき建物で、中村好文氏設計“ハット”シリーズのひとつのようでもある。なんとも和んで、境内の緑につい長居がしたくなる居心地の良い空間。そこには、早川でとれた農産物、加工品の販売や片浦レモンを使った飲み物もある。尊徳さんの経営センス、なかなかのものです。


 母の日のカーネーションの植木鉢に囲まれて、勤勉で親孝行の金次郎少年(小田原駅東口)。


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