日々礼讃日日是好日!

まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

国道246号線大山山麓伊勢原行き

2018年02月15日 | 日記
 きさらぎ立春がすぎても、寒さは厳しい日々だ。ここしばらくは、冬の日の晴天が続き、空気が澄んで高くぬけていくようななかに梅の花がほころび、ほんのすこしづつ春への気配が潜んでいるのだろう。

 晴れ渡った日曜日が仕事休み、自宅から県道を下って伊勢原まで向かう。その道中聴いていたのは前日に手にした、パット・メセニー・クインテットの二枚組CD「80/81」(1980年リリース、ECM)を聴きながらの一時間余りのドライブ。北欧オスロのスタジオで収録された透明感のあるスリリングな演奏がいまの季節にふさわしい。これがもう三十八年前の演奏となってしまったなんて、時の流れを思うととても不思議な気がする。大学生時代にその音楽に触れて以来、ずっと好きなアーチストであって、来日のたびに演奏会場に足を運び続け、同時代の空気を吸って生きてこられたことを幸せに思う。

 相模川を渡り、厚木市街を通り抜けると国道246号線へと合流する。すぐに東名高速高架をくぐり、愛甲石田からはぐんと丹沢の山並みが迫ってきて、駅前あたりではアマダ・フォーラム246の特異な黒々とした姿が目立つ。しばらく進んだ歌川地区ではロードサイドにあるスターバックスコーヒーの背後、新東名高速の建設工事がすすんで、圏央道からの高架が連なって西へとのびている。
 前方上り坂の右手方向に白亜の東海大学病院棟がみえてくると、もう目的地の伊勢原市民文化会館前だ。手前の市役所前には、ご当地ゆかり室町時代の武将太田道灌像がたち、会館前広場では、集まって開場を待っている観客の前で、甲冑をまとった野武士姿の一団がほら貝の音を鳴らし、ときの声を上げていた。う~ん、なるほど、これは予想以上に開場前から力がはいっているなあ。
 この日、ここでイラストレーター、キン・シオタニと落語家立川晴の輔のライブトークがあって、今回のテーマはもちろん大山街道・大山阿夫利神社・大山講の歴史。ふたりのテンポのいい街の話題を盛り込んだ脱線トークとスライド、ライブドローイングそして落語高座「大山詣り」、ご当地道中もので盛り上げてくれたのだった。
 はじめて茅ヶ崎でこの舞台を見て以来、次が昨年の町田市民ホールときて今回は三度目、ニット帽にスニーカー姿のキン・シオタニと着物姿の晴の輔師匠が、その土地土地の生きた魅力とトピックスを的確に切れ味鋭く俎上にのっけて、旅人視点からおおいに楽しませてくれる。

 終演後、せっかくなので地名縁の伊勢原大神宮まで歩いて訪れてみた。江戸時代のはじめ、開拓地として人が棲みつくうちに、その土地の鎮守として伊勢の国より勧請され奉ったことから、ここが「伊勢原」と呼ばれるようになったそうで、そのルーツの社なのだ。
境内には神木の大楠をはさんで外宮と内宮が並んでたち、天照大御神と豊受姫大神が祀られているのだから、お伊勢様とまったく同じ、境内には神宮遥拝所もあり初めてのときはびっくりした。
 ここから駅までの大通りは大山街道のひとつ、古くからの商店街であってちらほらと気になる老舗も点在している。のどかなローカルタウンで、すぐさきに大山を望み時間の流れがゆったりとしているように感じられる。
 しばらく歩いた農協の物産販売所でようやくみつけた、地元大山山麓子易の特産「おおやま菜漬け」を買って帰る。今年は不作で生産量が少ないと聞いていたのできょうはラッキー、野趣あふれるの地野菜のからし菜を塩漬けしたもので、ピリリときてこの寒さの季節になると食べたくなるのである。


聖と俗もあわせての現代風景、国道246号沿いのレストランから大山を仰ぎ見る。(2018/02/11)


都心皇居桜田堀から始まる246号大山街道はこの地点が都心から55km!