鉛筆が無くならなかった仰天事情
いまから、45年ほど前、日本の鉛筆メーカーは、危急存亡の危機に
見舞われていた。
原因は、ボールペンの登場。この、安くて長持ちする筆記用具は、いずれ鉛筆を
駆逐するのではないか、と誰もが予想していた。
メーカーの中には、鉛筆を見捨てて、いち早くボールペンやほかの文房具に
転進するところもあったが、この鉛筆の危機を救ったのが、
あの社会党委員長・浅沼稲次郎刺殺事件だった。
浅沼委員長は、講演中、右翼少年の山口ニ矢(おとや)に短刀で刺されて
死亡したが、この事件をきっかけに、子供に危険な小刀を持たせないという
運動が、全国の主婦や学校で広まった。
それまで、小刀は鉛筆を削るための必需品。その小刀がダメとなれば、
いよいよ鉛筆の需要が減るところだったが、この小刀排斥運動が鉛筆にとっては、
かえって幸いした。
というのも、一連の動きを見ていた大手電機メーカーが、電動鉛筆削り器の量産に
乗り出し、瞬く間に、家庭や学校に普及したからだ。
電動鉛筆削り器は、あっという間に鉛筆を削ってしまう。それも、小刀で丁寧に
削るより、余分に鉛筆を削ってしまう。
かくして、鉛筆需要は、予想したほど落ち込まずにすんだ。つまり、
鉛筆が延命できたのは、その書き味が見なおされたというより、
削り過ぎのおかげというわけだ。
まあ、そのおかげで小刀を使えない子供が激増したというのも事実だが…
今日の花 すみれ
花ことば 小さな幸せ、誠実、愛
☆ 今 日 の 一 言 ☆
後悔、悲しみ、悔しさ、喜び、憤慨、さまざまな時に人は涙を流す。
感情の高まりは無理に抑えない方がよい。
素直に泣けば、次のステップが開けてくる。
丸山敏雄