見えない部分を感じ取る

あるじいちゃまは重度の病気で体を思うように動かすことが出来ない。
いつも閉眼していて意思の疎通も取りにくい方かなあと思っていた。

それが、ある時ピアノを弾いて一斉に皆で歌った時に一緒に大きな口を開けて歌い始めた。
嬉しくなった私はその声をサポートするように弾き続けた。
歌い終わった後、すぐに「良い声が聞こえましたよ」と賞賛すると口角を少し上にあげて微笑んだ。

初めて見る笑顔だった。

いいきっかけが出来たのでその日の午後、歩くのを介助させてもらった。
思うように足が出ないし閉眼しているので、きっと不安だと思い「今から○○まで行きますね。私と一緒に歩いて行きましょう」と声がけし、両手をぎゅっと握ると、それに対しての返事だったのか、同じようにぎゅっと握り返して来られた。
それからゆっくり立ち上がり、じいちゃまが動かす足の歩幅、体の重心の移動を感じながら一緒に歩いていった。
初めは力が入っていたじいちゃまも、”この人に委ねても大丈夫”と思ったのか、リラックスして歩いていた。

今日、僅かな時間でのじいちゃまとの関わりだったが、色んな見えない部分を知ることが出来た。

表面的な関わりではなく、その人の発しているものを内面で感じ取ることがとても大事なことだなあと改めて思った。