息子夫婦が、カラーボックスを買いたいと言っていたので、
「それならあんたの使っていたのがあるでしょ、どうかしら?」と私が言い、
掃除して拭いてあげたのを見て、
「物置(部屋)に置きます」と言うので、持って行ってもらいました。
ああー、一個荷物が減った!
しかし、そのカラーボックスにはコミックスがぎっしりと詰め込まれており、
全部出して床に並べたら相当な量でした。
「半年に一回マンガを片付けにきまーす」と明るい言葉を残して息子は帰りました。
とりあえず机の上に積んでおくか。
縛るのも紐がもったいない!
段ボールに詰め込んで押し入れに入れるか。
とにかく、その作業を誰がやるかと言うと、持ち主の息子ではなく、私です。
金よこせよ…と心の中で呟いておりました。
いっそ、うっちゃっておくか。
どうせ誰も使っていない部屋だし。
そうしよう、そうしよう。
最近の週刊誌の見出しには、
やれ、親の財産の分け方、とか、実家の片づけ方、とか、
これだけはやっておくべき手続き、とか、ほぼ毎週のように同じような見出しが目に付きます。
そんなに今、流行っていることなの?
ほら、うちは今や実家になってしまったので、
子ども達に面倒をかけないよう荷物を減らす努力はしているんです。
しかしね、よくよく考えてみれば、
私の両親は健在なので、実家があるわけです。
そしてそこには、私の持ち物あるいは弟の持ち物だった、
本やら雑貨やらがまだたくさんあるのでした。
そうだ、自分の家を片付けることも大切だが、
両親の家に置きっぱなしのかつて自分が使っていたものを処分することも大切だ、と気付きました。
なぜ、母は、私が読んで置きっぱなしにしたマンガを捨てなかったのでしょうか?
実は母もマンガが好きで、捨てられなかったとか?
うーん、どうなのか分かりませんが、とにかくクローゼットの脚立を使わないと取れないところにひっそりと置いてあります。
古い埃にまみれているので、扱うときはマスクが必要です。
さもないと鼻がかぶれてしまう。
なんで、こんなものがここにある?
タイムマシンで当時に戻ったかの如く、しばし読みふけってしまい、
片付けるどころではなかったのですが。
その時、母が古いマンガを読んでいる私を見つけ、
「汚れているから触らない方がいいよ」と言いました。
お?「あんたのでしょ?捨てなさいよ」とは言わなかった。
と言うことは、納得ずくで置きっぱなしにしてあるのだろうか?
捨てられない女なのか。母は。
いつかきっとその日が来ます。
実家を前に呆然と立ち尽くす私と弟。
人生って何なのでしょうね。
どうして、生前手にしたものをあの世に持って行かれないんでしょうね。
みんな持って行ってくれて構わないんですよ。
私は使わないんだから。
あなたのものなんだから。
誰にも使われなくて、かわいそうじゃないですか。
ねえ。