枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

悠紀の彼・13

2023年11月11日 | Weblog
 悠紀は流れて来る感情に触れる度に、物事を願うと失望が広がり落胆に繋がるのに気づかない他人の何と多いことか知った。先ずは自分中心で、言い訳を用意して物事を進めていく。皆が幸せである等皆無なのを、然もそうでなければと声高に言い募る。悠紀は、それらの何も満たされてないことを悟るが黙する。

 潮の関係で、牽き合うのは未知との遭遇に他ならない。心を開放して問えば、必ず反応して繋がり文字が並ぶのも判るようになった。表面だけでの体裁には何等存在していなくて、通じ合えることは皆無だ。真実であると感知できるのは、心が直ぐに糺す。ノアが、神の言葉を聴けたように宙から降りてくるのだ。

 この力を、知られてはならない。特殊な能力は、悠紀の他にも大勢に授けられている。仲間を・同士たちを捜し、この世の終焉を迎えたら新しい星に旅立つのは決められている。その路案内に、悠紀たちは選ばれし者としての使命がある。それを見分ける心の判断は、清らかでなければ務まらぬと訓練させられた。

 仔猫のすばるが遣って来た日から、事態は急変した。悠紀は、薬草の研究をするという建前で凌ぐ毎日だ。前にも況して、仕事に勤しみ形振り構わぬ姿だが誰にも怪しまれることはない。そんな悠紀を、川上君がため息を吐いて見惚れている。悠紀は何食わぬ顔をしていたが「悠紀さんて、美人ですね」と云われた。

 実際、悠紀は光に包まれた輝きで満ちていた。それは誰にでも視えることではなく、何気に判るというものだ。悠紀は、川上君をじっくりと観察し始めた。大卒で入社して来た筈だから、未だ若い。余り物事に拘りがなく、仕事には慣れてはいないが真面目ではある。悠紀は、候補者名簿に記載しておくことにした。
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悠紀の彼・12

2023年11月11日 | Weblog
 悠紀が宇宙の中に融け込んでいた時、視えたものはそれからも頻回に現れて真実に転じた。その映像は、好むものばかりではなく、異質なことが少なくないばかりか些細な気持ちの変化に応じて瞬時の結果と為す。同時に空中に浮かんでいる自分を感じ、想うさま翔ける。彼の危険を察せば、流れを一気に超えた。

 それは突然に心が感応し、過たず予感に牽きつけられ翔け抜けるのだ。悠紀の身体には打撲は元より、衝撃はあらゆる個所に出没で痣や傷はくっきりと見える。それらを止めようとすれば、彼の生命体は失せていく。そうでない場合もあり、見知らぬ者への庇護も数知れない。悠紀は、事実を甘んじる覚悟を誓う。

 悠紀の身体は、熱く燃え上がり不死鳥の如く消滅するがやおら羽搏いて復活する。白龍が雄然と宙を往き、鳳凰が群れを成す。香しい調べと、得も云えぬ匂いに辺りが満ちていくのを覚えた。悠紀は、果たすべき使命に目覚めたと空中に手を差し伸べ祈る。穢れのない心身に降りてきたのが判り、畏怖に頭を垂る。

 悠紀に執っての彼の役目は、目覚めさせること?少し違うわと思えるが切り離せない想いが過ぎる。この世の何かが働きかけたものか、或いは次元の異なる世界への誘いか進んで逝けば判ろう。悠紀は、視えないものがあることに気づけ信じるに値すると覚えた。それで充分なことと、気持ちを新たに切り替えた。
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悠紀の彼・11

2023年11月10日 | Weblog
 季節の移ろいを感じながら、悠紀は外の景色を観るともなしに眺めていた。自宅の周りは、庭木が繁り草花はのんびりと風にそよぐ秋の日だ。家の様式は平屋で、南側に悠紀の部屋があり奥に祖母が住まう。東は両親の居場所でもあり、台所が続く。西と北には風呂場とトイレを設け、樹が囲う造りにしてある。

 悠紀は、自分の部屋は必要ないと思えたが「勘弁してもらうわ、幾ら可愛い孫と云えど独りの時間は必要ですもの」祖母は、頑として聴き入れず増設した。その部屋は、地上から可なりの高さを要し天井が全開する。悠紀はそれに気づいて「お祖母ちゃん!これってドーム?」「そうだよ、宇宙と繋がってるの」

 祖母の連れ添い、つまり悠紀の祖父は風変りでもあり早くに亡くなっている。写真でしか知らない祖父だが、膨大な土地を持っており相続権は祖母に弁護士を通じ渡された。女性関係も派手で、家に居つく人ではなかったようだ。祖母は息子を守る意味でも、これだけは譲れないと条件を出したと両親から聴いた。

 悠紀の仕事も、祖母の口利きで就職できた。高校を卒業しても、自分の進む路が決まらなくしたいことも定まらなかった。庭に植えてある植物に関心が動き、それらの持つ効能にも興味を抱くと「悠紀さん、この方をお訪ねなさい」祖母は名刺を差し出した。面接を受けるでもなく、行った日から今の勤務に至る。

 祖母の思惑では数年のことと行かせたものが、既に十年以上を経過し縁にも薄いのが歯がゆさそうだ。植物意外に、悠紀の心を捉える存在はないのもあるが。異性との付き合いそのものに、時間を費やすより薬草の方に気持ちが傾く。それなのに、初めて想えた彼は悠紀の身体をすり抜けて違う世界へ行ったのだ。
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旬を用いれば、病退散。

2023年11月10日 | Weblog
 旧暦での暮らしをしていると、傍から見れば無駄に思えることが実際には大事だと気づける。この世を司る森羅万象への畏怖に況して祈り、感謝を常に忘れない。用いる言葉を選ぶのは、感情を冷静に保てることに尽きる。以って廻った言い方ではなく、心を正直にしておけば素直でいられるからだ。丁寧語は不要。

 最近殊更に違和感を持つのが、謙譲語や謙遜語の乱発使用に意味不明さを感じる。一体誰を相手に書き、賛同を促しているのだろう?日本語は正しく用いたい。連載を一気に書こうとして、日に2回の投稿を試みた。自らへの納得であり、真面目に読む者は皆無と高を括っている。唯、短い文章でないと読み厭きる。

 先日来、天気の如何に限らず身体への変調を来す。それがブロ友さんに由って、はっきりして明確な現象に息を呑む。今日は、昨夜からの雨に止むなく枇杷葉の湿布となる。咽喉への違和感に枇杷葉スプレーを繰り返しているが、身体は熱を帯び怠い。枇杷葉での繋がりかは定かでないが、如何急く確率は高いのよ。

 季節は過たず廻るので、気温云々ではなく用心を怠らないのが大切なのよ。二十四節気は、書かれていることだけでもなく身体への影響は起きて来る。それを信じて実行するか、鼻の先で笑うかにも差が生じる。枇杷葉茶を飲用しているのは、些細なことにも適応できる自然治癒力なのも疑えない。医者には罹らず。

 枇杷葉は、稀に体質的に合わないことも。個人的には、医者に罹るよりも信頼できると疑う余地はなく有難い。不思議でも何でもなく、宇宙からの声が聴こえる為に訓えて貰える。夢でありながら、啓告であるのは確かな事象。その元を司る者に選ばれしを、謙虚さで受け止め使命を果たしたいと日々励む潔さにも。
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悠紀の彼・10

2023年11月09日 | Weblog
 悠紀は、漆黒の闇に浮かんでいた。身体が其処に融け込んで、冷たく寒いのは判るが自由を奪われていて動けない。恐怖ではなく、畏怖の念が果てしなく広がっている。心の中に言霊で伝わり入る為、心地よさをもたらせ同時に何処からともなく調べが聴こえる。悠紀は、身体の存在しないことを疑わなかった。

 本箱の少ない書籍に、特殊能力に関する物がある。小さい頃から悠紀には、物を触らずに壊したり思考が判ることがあった。それらのどれも、心で念じれば起きるのと相手が思うことに応じてしまう。悠紀に対して、意地悪や困らせようとすると本人に返る。祖母は、悠紀の力を知ると隔世遺伝に狼狽え怯えた。

 両親は悠紀に何も話さない侭に、愛情の限りを注いで育んだ。悠紀がそのことに気づいても、祖母を始めとして態度は変わらず日常を過ごしてきた。悠紀の視た映像は、鮮明で具体的な内容だが彼に知らせるには困難を極める。彼と何処かで遇うの?その可能性はない気がするものの、想いが迸り勢い広がって。

 悠紀は、心の中に渦巻く青い光を視た。仔猫のすばるがにゃあぁ~と鳴きながら翔け、悠紀の周りをぐるぐると旋回する。次の瞬間、その光が空間を突っ切り流れて往くのが観えた。悠紀ははっとして瞳を瞠った、彼の許に繋がっていくんだわ。わたしの想いを連れて、彼方へと星が流れるように届けられるわ。
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悠紀の彼・9

2023年11月09日 | Weblog
 悠紀は着替えると、朝食もそこそこに急用優先で部屋の片づけを始めた。仔猫は、餌を喰むと毛繕いを入念に終え眠り出した。仔猫の遊び場を作り、排泄と餌置き場を確保したら悠紀の居場所が机だけになった。本箱が窮屈そうに、部屋の隅で小さくなっている。その殆どは植物に関する物、資料でもあるが。

 午前中かかって部屋の掃除も済ませ、台所に行くと祖母に不信顔を向けられた。お祖母ちゃんの言いたいことは分っているが、今は聴いてくれるな。悠紀は、自分の為にオムレツを手早く用意し口に運ぶ。お茶が出されているのに「ありがとう」何時ものだと含んだら…にがぁ!千振じゃないのよ、やられたわ。

 祖母の無言の遣り口には慣れているものの、今回ばかりは話せない。言えばきっと、探求心の塊の祖母は現場検証を始め刑事さながらに証拠物件追及する。悠紀は、仔猫が無事であったことだけで満足。想いは複雑にあるけれど、犯人が分かってどうする?すばるはうちの仔なので渡せないのが確かなだけでも。

 昨夜からの疲れに、悠紀は仔猫を抱きかかえたまま椅子にもたれて転寝をしていた。眠っているのに、鮮明に視える景色と人物が居るのが判る。後ろ姿だが、彼だ。声音もちょっとした仕草や、歩き方の特徴まで。何だろう?彼の人生に関与する気持ちはなく、今更元にも戻れない。ところが、頭の片隅に点滅。

 悠紀は胸を締め付けられて、その息苦しさにもがいた。叫ぶにも声が出ない、瞳を開けようにも瞼が塞がった侭でアロンαを塗られたみたい。胸に痛みを感じて、重い瞼をこじ開けたら仔猫の心配そうな顔がある。悠紀はほっとして、すばるを撫でたが胸には爪跡が付いて血が滲む。援けてくれたの?仔猫のすばる。
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悠紀の彼・8

2023年11月08日 | Weblog
 悠紀は、仔猫用の餌と排便砂をホームセンターで買い部屋の中に置いた。パソコンのメールを開き山本君宛に、明日は急用ができて休むと記して送った。遅い時間だが返事は直ぐに来て、OKとあった。悠紀は猫を飼ったことがなく、それも仔猫なので戸惑いの方が大きい。でも、か細い声で鳴いていれば放置できない。

 両親との同居が、決して不自由はないのも条件には都合良い。祖母には黙っておきたい、溺愛の癖があり甘やかしは目に浮かぶようだ。見つかるのは時間の問題でもあり、離れに居る祖母の部屋は悠紀とドア一つで繋がっている。案の定、仔猫はみゃあみゃあと鳴くのを止めない。たっぷりミルクは、飲ませているのに。

 季節は晩秋なのも、寒いのと心細さからか悠紀の胸にしがみつき服の中に潜り込んだ。おかしな感覚だけど、ふわふわの毛が温かくて摘まみ出せない。其の儘の格好で、悠紀は布団に潜ると眠りこんだ。目覚めたのは明け方で、ごそごそ動く気配に飛び起きた悠紀は排泄場所に連行。すばるは失敗もせず、用を足してる。

 悠紀ははっとした。仔猫は、もしかしたら誰かが飼っていて捨てた?側溝にだと、抜け出せないし助ける物好きはいないと判断してだろうか。悠紀には、その行動が信じられない思いだった。猫と云えども命はある筈、人間の勝手都合でできることに怒りがこみあげる。すばる、家に来てくれてありがとう。星の使者か。
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悠紀の彼・7

2023年11月08日 | Weblog
 咲子が会社を辞めた。悠紀は、仕事自体が合うことで救われた。毎日、顔を遭わせるには泪の海は深すぎる。悠紀は「気持ちが落ち着いて納得したら、帰ってくれば」と伝えた。「考えとくわ」咲子の天真爛漫さが、仇のような変身ぶりに悠紀は哀れさを覚えた。彼への想いは本気だったと知り、咲子の後姿を見送った。

 彼は、程なくして菓子屋を継ぐことに部署の机は消えた。悠紀にとっての彼は何の役目で出現したか謎だが、日常も仕事内容等は変化がない。そういう廻り合わせなんだと、彼への思慕も面影も部屋に閉じ込め鍵をかけた。悠紀は、以前にも増して仕事に没頭し舞台裏を選んだ。ある日の帰り路、猫の鳴き声が聴こえた。

 夕闇の迫る中、声の主が何処にいるかが分かり難い。悠紀は耳を澄ませ心をゆっくりと向け、鳴き声に瞳を凝らした。道路の側溝に、僅かな欠けがあり声はそこからしてる。救出するには、側溝を上げないと手が入っても掴めない穴だ。悠紀は、腰を落として側溝を持ち上げようとしたが意外に重い。棒切れがあれば…

 近くにコンビニがあるが、頼んでみようか。いやいや待てよ、側溝には土が入り込んでいるのを取れば?持ち上がるかもしれない。悠紀はカバンの中からボールペンを出し、しゃがみむと土をほじった。思った以上に土が埋まっているのを、やっとの思いで除けた。側溝の穴に片手を差し込み、反対の角を軸に支える。

 どぶの中に、小さな目が光っていた。カバンには何時もタオルを入れているのを出し、仔猫を包み込む。悠紀は電車には乗らず、自宅までを歩いて帰り洗面器に容れて洗いタオルで拭き取った。瘦せこけた真黒の仔猫の目は清んでいて、星が閉じ込められたかに見える。「すばる・ね」悠紀は仔猫に語り、抱き上げた。

 二十四節気 立冬 陰気深く籠り、冬の気立つと言う意で、立冬と云う。次第に、寒気深くなる。十一月七日頃である。
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悠紀の彼・6

2023年11月07日 | Weblog
 悠紀の背筋に戦慄が走り、右の耳から木屑が噴き出しぼろぼろと零れ始めた。それは床に落ちる前に、消えてしまう。何処に?見えないけれども宙に穴があって、吸い込まれていく。木屑に思える物は吐き出せなかった言葉の数々で、心に溜まり過ぎた物。解放して話せば言葉になるが、云わぬ侭だと不消化だけ。

 それがどういう経過で、耳から出て来るのかは説明不可でもあるのは確かなこと。悠紀は溜まってしまった言葉に未練は持たぬとしているが、感情を制御できない時に現れる。彼の結婚への疑問もあり、想いの深さに戸惑う自分を視てしまうのだ。彼に、どんなにか好きだと伝えたく想ったことか悠紀の心は震えた。

 山本君の言う、あいつは駄目だには真実も籠められてが分かる。苦労知らずの彼には、老舗の菓子屋の経営は困難そのもので悠紀の力も及ばない領域に違いない気がする。今までしてきた自由とは異次元の生活で、お互いに妥協したりは無理。何事も彼を優先しての生活となるのは明らか、先行き不安が待ち受ける。

 それに年齢の差も大きく、彼が申し込んでくれても承知の返事はできない。勇気もなく冷静に判断できたとして、彼に多大な負担を強いる結果は後悔するだろうとの気持ちが動く。悠紀は正直さも素直さも持っているものの、心の片隅へと押し遣るしかなかった。彼は悠紀の何処が好きなのか、不安の方が大きい。

 悠紀が彼を好きという想いの中には、見かけではなく誠実さを感じるからで容姿はその次のことだ。何よりも、一緒に仕事をしていて空気の感じがしていた。傍にいてもいなくても、仕事に集中できるのは何よりも遣り易い。これが反対となり、悠紀の方がしていく立場へとなれば自信は揺らぐ一方であるのは確実。
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悠紀の彼・5

2023年11月07日 | Weblog
 悠紀の日々は変化に乏しいものの、薬草への心が躍る出来事があった。古来ではそういう事象は、高貴な出自の者や特定の医務方に限られ用いられてきた。悠紀のしていることは、謂わば人体実験に等しく他人には任せられない。根気と持続と言う単純な言葉ではなく、其処には思い込みも含まれ真摯な心模様が。

 況してや、結果が出るかなど皆無に等しく個人差は否めない。その植物と悠紀の体質とが、偶然なのか必然かは不明なれど合ったものと思える。何がどのように作用して、どういった役割りか解明すべく扉の前に立てたのだ。こうなると悠紀は周りが見えなくなり、仕事に没頭するばかりで更に薬草園も足繁く通う。

 悠紀は、植物に語り掛け手を添えて学んでいる。地球上の凡ての物には生命体があり、見ることはできなくても存在を感じてしまえる第六感が備わる。悠紀はその力を特別な感性でなく、一人ひとりに与えられたと欠片も疑わない。悠紀の行動を咎めず、自由にさせてくれる部署の雰囲気は成果への期待も大きい。

 異変が起きたのは、研究に勤しむ悠紀にも明らかな彼の結婚だった。咲子かと思いきや、他部署の者だと知れた。真っ赤に目を泣き腫らした咲子が言うには、約束の時間に急用ができて代役を立てたらしい。そういう時には、ちゃんと断ればいいのに。おとなしい人で、まさかという思いがあったのも確かなこと。

 悠紀の心には、空洞ができ埋めていく物の何も存在しないと知れた。でも、いきなりの結婚なの?何かが違うと警告してくる。衝撃ではあるが、今更に感情を伝えるのは悠紀の性格からして無理だった。咲子のように泣けもしない、山本君以外では気づかれず済んだことを悠紀は静かに受け止めて家路をたどった。
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