11年7月12日 火曜日 17/12・各社社説
昨日は新聞休刊日なので各社社説はお休み。
今日の社説は6社全社が原発の再稼働に関わる社説でその内容も各社微妙に違っている。読者も長文を読むのは邪魔臭いと思いますが、各社の思惑の違いが分かって面白いとかと思います。
朝日新聞(社説)
その1
原発テスト―第三者の検証が要る
(全文はここからお入り下さい)
定期検査を終えた原発の再稼働をどう進めるか。すったもんだの末、新しく設けるストレステスト(耐性評価)を、その基準とすることが決まった。
拙速にこの夏の運転再開へ動いた海江田万里経済産業相も問題だが、行き当たりばったりで政策を変えて混乱を招いた菅直人首相の責任もきわめて重い。
政府は、電力の安定供給と脱・原発依存を両立させるという難しい問題に直面している。原子力行政で自ら不信を買うような行為を重ねることは、二度と許されない。
新基準となるストレステストは、どの程度の地震や津波に耐えられるか、その余裕度をコンピューターで計算して確認する。設計時に一律に課される安全基準とは異なり、経過年数や地質構造など、それぞれの原発固有の条件を反映させる。
安全性」の範囲も、多岐にわたる。政府が参考にする欧州では、航空機の墜落やミサイル攻撃なども評価の対象だ。
具体的なテスト項目など、細部の設計はこれからだが、震災後の安全検査が名ばかりだったことを考えると、一歩前進に違いない。
その2
国際離婚条約―子どもの幸せを第一に
国境を越えた結婚が破綻(はたん)し、一方の親が無断で子どもを連れて出国した場合、子を元の居住国に戻し、面倒を見る者をその地の手続きに従って決める。
国家間でそんな約束を取り交わすハーグ条約への加盟に向けて、国内法を整える作業が法制審議会などで始まる。
政府は5月の閣議で加盟方針を打ち出した。問題は、元の国に送り返すことが子の福祉に反する時だ。例えば、夫の暴力や迫害から逃れるため日本人の妻が子と一緒に帰国した。そんな状況でも返還すべきか。
政府は閣議了解の際、子が夫から暴力を受けた▽子の心に著しい傷を残すような暴力を、夫が妻にふるった▽経済的事情などから妻が子に同行できず、現地で子の世話をする適当な人がいない――などの場合は返還を拒否できると、法律に盛り込むことを確認した。
>読売新聞(社説)
原発の再稼働 混乱招くあいまいな統一見解{/arrow_r/}(全文はここからお入り下さい)
これで原子力発電所の再稼働問題を巡る混乱を収拾できるのか、懸念を拭えない。
政府が原発の安全性を2段階で評価する新基準を、統一見解として公表した。
定期検査中の原発は、各電力会社が再稼働に向けた1次評価を行う。大きな地震や津波など過酷な条件を想定し、どこまで耐えられるかを確認するものだ。
この評価結果について原子力安全・保安院が「確認」し、さらに原子力安全委員会が「妥当性を確認する」としている。
これとは別に、運転中の原発を含めた全原発を対象に、運転継続を認めるか、中止させるかを決める2次評価を実施するという。
欧州で実施中のストレステスト(耐性検査)を参考に、安全評価を行うこと自体は意味がある。
熱中症に注意 お年寄りは迷わず冷房ONに
(全文はここからお入り下さい)
日本列島全域で梅雨が明けた。いよいよ夏本番だ。毎年のことだが、この時期、熱中症にならないよう、体調管理には十分注意したい。
今年は梅雨のさなかから異常な暑さが続いている。
東日本と西日本の6月下旬の平均気温は、気象庁が統計を取り始めた1961年以降、最も高かった。6月に熱中症で病院に運ばれた人は全国で6877人に上り、昨年6月の3倍だった。
7月に入っても、夏の高校野球地方大会や、スポーツの部活動などで熱中症の症状を訴える生徒たちが相次いでいる。十分な水分補給と適度な休憩は必須だ。
毎日新聞(社説)
政権の地方軽視 「主従」の発想を捨てよ
(全文はここからお入り下さい)
松本龍前復興担当相が宮城、岩手両県知事に高圧的な放言を連発し辞任するなど、菅内閣の下で国と地方の関係がこじれている。原発再稼働問題の混乱も地方の頭越しに政府が「安全宣言」を出し、地元説得に動いたことがボタンの掛け違いの始まりだった。
松本氏の辞任劇は政界ですでに過去の話となりつつあるようだ。だが国と地方の観点からは、歴史的事件と言えるかもしれない。
原発安全評価 2段階の意味を明確に
(全文はここからお入り下さい)
ストレステスト(耐性試験)を参考にした原発の安全評価について、政府が統一見解を公表した。定期検査中の原発に対する「1次評価」と、運転中の原発に対する「2次評価」の2段階で評価するというが、わかりにくい。
ストレステストは今回の津波のように設計の想定を超える事象が起きた場合に、耐えられる余裕がどれほどあるか示すものだ。原発が停止中でも運転中でも、基本的な考え方は変わらないはずだ。
政府内には安全評価を原発再稼働の条件とするかどうかで不一致があった。統一見解は、異なる意見の双方に配慮した折衷案のようであり、1次評価は、もともと「再開ありき」と受け取られかねない。
枝野幸男官房長官は、1次が2次より簡易になるわけではないとの見方を示しているが、不信を招かない明確な説明が必要だ
政府は、安全評価の項目や計画、評価結果を原子力安全・保安院が作成・確認するだけでなく、その妥当性を原子力安全委員会がダブルチェックする方針も打ち出した。
産経新聞(社説)
やらせメール 信頼獲得に労を惜しむな
(全文はここからお入り下さい)
玄海原子力発電所2、3号機の再稼働をめぐる九州電力の「やらせメール」問題が事態を混乱させている。電力供給を担う企業の行動として遺憾といわざるを得ない。
同原発2、3号機の再稼働に理解を求める政府主催の説明番組が先月26日、インターネットなどで中継され、九電社員が子会社社員らに対し、一般市民を装って再稼働支持の意見メールを番組に寄せるよう指示していた。九電社長は今月6日、会見でこの事実を認めて謝罪している。
原発統一見解 国民に不便強いるだけだ
(全文はここからお入り下さい)
政府が発表した国内の全原発を対象とする安全性確認のためのストレステスト(耐性検査)に関する統一見解は、あまりに問題が多い。
九州電力玄海原子力発電所2、3号機の再稼働問題に直面した菅直人首相が、唐突にストレステスト導入を口にしたのは6日のことである。
「新たな手続き、ルールに基づく安全評価」という形で、その位置付けなどがようやく示されたわけだが、内容の細目や実施時期などは依然、あいまいなままだ。
明らかになったのは、玄海をはじめとする停止中の原発の今夏の本格運転は事実上、絶望的ということだ。日本のエネルギー需給にとって過酷な現実のみである。
今回の安全評価は欧州諸国が福島第1原発事故後に行ったストレステストを参考に導入されたものだが、問題点ばかりが目立つ。
まず、安全確認の評価手順が1次と2次の2段階からなるということだ。こうすることの効果のほどが分からない。
日経新聞(社説)
この統一見解で原発は再稼働できるか
(全文はここからお入り下さい)
政府は11日、原子力発電所の再稼働の可否を判断する「統一見解」を発表した。「統一」とは名ばかりで、首相と経済産業相の間であらわになった閣内不統一を覆い隠すつじつま合わせにしか見えない。
原発再稼働について政府に揺るぎない方針があるのか。そこが明確でないと、原発立地自治体の不信も産業界の不安も消えない。
統一見解は、枝野幸男官房長官と海江田万里経産相、細野豪志原発担当相の3人が話し合い、菅直人首相も了承したという。
統一見解によると、再稼働の準備が整った原発が地震や津波にどの程度耐えられるかを調べる第1段階の安全評価と、全原発を対象にした総合的な評価の2段階で安全を確認するという。しかし評価項目や作業手順などはまだ決まっていない。
電力会社はすでに経産省の指示に従い、非常用電源を増設するなど緊急安全対策を講じてきた。新たに設ける第1段階の評価は、これとどこが違うのか。「できるだけ早期に実施」というが、いつになるのかも明確でない。
捜査・公判を根本から問え
(全文はここからお入り下さい)
捜査から起訴、公判へと至る刑事司法はどうあるべきか。裁判員裁判の導入などで日本の司法が生まれ変わる中、手つかずで残されていたのがこのテーマだった。
法相の諮問機関、法制審議会で刑事司法の見直しに向けた議論が始まった。来年中をメドに方向性を示す。抜本的な改革を期待したい。
そもそも日本の捜査・公判は容疑者・被告の自供を前提にしている。同じ殺人でも犯意や認識で量刑が分かれ、収賄罪が成立するには賄賂と思っていたかどうかの解明が必要だ。このため取り調べの比重が大きく、自白するまで保釈されない「人質司法」もまかり通ってきた。
こうした自白偏重の捜査が強引な取り調べや客観証拠を軽視する体質を生み、冤罪(えんざい)にもつながった。法制審での議論のきっかけとなった大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件は、まさにこうした体質を背景にして起きたものだ。
東京新聞(社説)
原発テスト 再稼働の思惑が透ける
(全文はここからお入り下さい)
玄海原発(佐賀県玄海町)など、停止中の原発は簡便な一次評価で再稼働-。菅直人首相が打ち出したストレステスト(耐性評価)とは、この程度のものだったのか。国民の不信と不安はまた募る。
脱原発で起死回生を図りたい菅首相、盛夏の電力危機を原発再稼働で乗り切りたい経済産業相。統一見解というよりは、その場しのぎの折衷案に見える。
政府としてはあくまでも、原発の安全は、経産省原子力安全・保安院による現行の検査で保たれているとの基本姿勢を崩さない。
福島第一原発の事故を受け、政府としては、すでに十分な緊急対策を電力会社に指示したが、念には念を入れるため、安全性評価のテストを実施するという。
福島の惨事は現在進行中である。収束してはいない。指示された緊急対策の完了にはまだ時間がかかる。それでもまだ“安全神話”に寄りかかり離さない。これが、そもそもの間違いだ。
シャトル後 日本の独自性発揮を
(全文はここからお入り下さい)
米国は、三十年間世界の有人宇宙開発をリードしてきたスペースシャトルを引退させたあと、火星などへの有人探査を目指す。わが国もシャトルへの日本人搭乗などで得た経験と知識を将来に生かせ。
シャトルの飛行は一九八一年四月以来、今回が百三十五回目だ。ロケットのように打ち上げられ、グライダーのように着陸することで機体を再利用可能にし、打ち上げコストの大幅削減を目指した。
だが、八六年と二〇〇三年の二度の事故で十四人の飛行士が亡くなり、安全対策に力を入れたことなどから打ち上げ費用は膨れ上がり、コスト削減は当初の期待ほどはできなかった。
昨日は新聞休刊日なので各社社説はお休み。
今日の社説は6社全社が原発の再稼働に関わる社説でその内容も各社微妙に違っている。読者も長文を読むのは邪魔臭いと思いますが、各社の思惑の違いが分かって面白いとかと思います。
朝日新聞(社説)
その1
原発テスト―第三者の検証が要る

定期検査を終えた原発の再稼働をどう進めるか。すったもんだの末、新しく設けるストレステスト(耐性評価)を、その基準とすることが決まった。
拙速にこの夏の運転再開へ動いた海江田万里経済産業相も問題だが、行き当たりばったりで政策を変えて混乱を招いた菅直人首相の責任もきわめて重い。
政府は、電力の安定供給と脱・原発依存を両立させるという難しい問題に直面している。原子力行政で自ら不信を買うような行為を重ねることは、二度と許されない。
新基準となるストレステストは、どの程度の地震や津波に耐えられるか、その余裕度をコンピューターで計算して確認する。設計時に一律に課される安全基準とは異なり、経過年数や地質構造など、それぞれの原発固有の条件を反映させる。
安全性」の範囲も、多岐にわたる。政府が参考にする欧州では、航空機の墜落やミサイル攻撃なども評価の対象だ。
具体的なテスト項目など、細部の設計はこれからだが、震災後の安全検査が名ばかりだったことを考えると、一歩前進に違いない。
その2
国際離婚条約―子どもの幸せを第一に
国境を越えた結婚が破綻(はたん)し、一方の親が無断で子どもを連れて出国した場合、子を元の居住国に戻し、面倒を見る者をその地の手続きに従って決める。
国家間でそんな約束を取り交わすハーグ条約への加盟に向けて、国内法を整える作業が法制審議会などで始まる。
政府は5月の閣議で加盟方針を打ち出した。問題は、元の国に送り返すことが子の福祉に反する時だ。例えば、夫の暴力や迫害から逃れるため日本人の妻が子と一緒に帰国した。そんな状況でも返還すべきか。
政府は閣議了解の際、子が夫から暴力を受けた▽子の心に著しい傷を残すような暴力を、夫が妻にふるった▽経済的事情などから妻が子に同行できず、現地で子の世話をする適当な人がいない――などの場合は返還を拒否できると、法律に盛り込むことを確認した。
>読売新聞(社説)
原発の再稼働 混乱招くあいまいな統一見解{/arrow_r/}(全文はここからお入り下さい)
これで原子力発電所の再稼働問題を巡る混乱を収拾できるのか、懸念を拭えない。
政府が原発の安全性を2段階で評価する新基準を、統一見解として公表した。
定期検査中の原発は、各電力会社が再稼働に向けた1次評価を行う。大きな地震や津波など過酷な条件を想定し、どこまで耐えられるかを確認するものだ。
この評価結果について原子力安全・保安院が「確認」し、さらに原子力安全委員会が「妥当性を確認する」としている。
これとは別に、運転中の原発を含めた全原発を対象に、運転継続を認めるか、中止させるかを決める2次評価を実施するという。
欧州で実施中のストレステスト(耐性検査)を参考に、安全評価を行うこと自体は意味がある。
熱中症に注意 お年寄りは迷わず冷房ONに

日本列島全域で梅雨が明けた。いよいよ夏本番だ。毎年のことだが、この時期、熱中症にならないよう、体調管理には十分注意したい。
今年は梅雨のさなかから異常な暑さが続いている。
東日本と西日本の6月下旬の平均気温は、気象庁が統計を取り始めた1961年以降、最も高かった。6月に熱中症で病院に運ばれた人は全国で6877人に上り、昨年6月の3倍だった。
7月に入っても、夏の高校野球地方大会や、スポーツの部活動などで熱中症の症状を訴える生徒たちが相次いでいる。十分な水分補給と適度な休憩は必須だ。
毎日新聞(社説)
政権の地方軽視 「主従」の発想を捨てよ

松本龍前復興担当相が宮城、岩手両県知事に高圧的な放言を連発し辞任するなど、菅内閣の下で国と地方の関係がこじれている。原発再稼働問題の混乱も地方の頭越しに政府が「安全宣言」を出し、地元説得に動いたことがボタンの掛け違いの始まりだった。
松本氏の辞任劇は政界ですでに過去の話となりつつあるようだ。だが国と地方の観点からは、歴史的事件と言えるかもしれない。
原発安全評価 2段階の意味を明確に

ストレステスト(耐性試験)を参考にした原発の安全評価について、政府が統一見解を公表した。定期検査中の原発に対する「1次評価」と、運転中の原発に対する「2次評価」の2段階で評価するというが、わかりにくい。
ストレステストは今回の津波のように設計の想定を超える事象が起きた場合に、耐えられる余裕がどれほどあるか示すものだ。原発が停止中でも運転中でも、基本的な考え方は変わらないはずだ。
政府内には安全評価を原発再稼働の条件とするかどうかで不一致があった。統一見解は、異なる意見の双方に配慮した折衷案のようであり、1次評価は、もともと「再開ありき」と受け取られかねない。
枝野幸男官房長官は、1次が2次より簡易になるわけではないとの見方を示しているが、不信を招かない明確な説明が必要だ
政府は、安全評価の項目や計画、評価結果を原子力安全・保安院が作成・確認するだけでなく、その妥当性を原子力安全委員会がダブルチェックする方針も打ち出した。
産経新聞(社説)
やらせメール 信頼獲得に労を惜しむな

玄海原子力発電所2、3号機の再稼働をめぐる九州電力の「やらせメール」問題が事態を混乱させている。電力供給を担う企業の行動として遺憾といわざるを得ない。
同原発2、3号機の再稼働に理解を求める政府主催の説明番組が先月26日、インターネットなどで中継され、九電社員が子会社社員らに対し、一般市民を装って再稼働支持の意見メールを番組に寄せるよう指示していた。九電社長は今月6日、会見でこの事実を認めて謝罪している。
原発統一見解 国民に不便強いるだけだ

政府が発表した国内の全原発を対象とする安全性確認のためのストレステスト(耐性検査)に関する統一見解は、あまりに問題が多い。
九州電力玄海原子力発電所2、3号機の再稼働問題に直面した菅直人首相が、唐突にストレステスト導入を口にしたのは6日のことである。
「新たな手続き、ルールに基づく安全評価」という形で、その位置付けなどがようやく示されたわけだが、内容の細目や実施時期などは依然、あいまいなままだ。
明らかになったのは、玄海をはじめとする停止中の原発の今夏の本格運転は事実上、絶望的ということだ。日本のエネルギー需給にとって過酷な現実のみである。
今回の安全評価は欧州諸国が福島第1原発事故後に行ったストレステストを参考に導入されたものだが、問題点ばかりが目立つ。
まず、安全確認の評価手順が1次と2次の2段階からなるということだ。こうすることの効果のほどが分からない。
日経新聞(社説)
この統一見解で原発は再稼働できるか

政府は11日、原子力発電所の再稼働の可否を判断する「統一見解」を発表した。「統一」とは名ばかりで、首相と経済産業相の間であらわになった閣内不統一を覆い隠すつじつま合わせにしか見えない。
原発再稼働について政府に揺るぎない方針があるのか。そこが明確でないと、原発立地自治体の不信も産業界の不安も消えない。
統一見解は、枝野幸男官房長官と海江田万里経産相、細野豪志原発担当相の3人が話し合い、菅直人首相も了承したという。
統一見解によると、再稼働の準備が整った原発が地震や津波にどの程度耐えられるかを調べる第1段階の安全評価と、全原発を対象にした総合的な評価の2段階で安全を確認するという。しかし評価項目や作業手順などはまだ決まっていない。
電力会社はすでに経産省の指示に従い、非常用電源を増設するなど緊急安全対策を講じてきた。新たに設ける第1段階の評価は、これとどこが違うのか。「できるだけ早期に実施」というが、いつになるのかも明確でない。
捜査・公判を根本から問え

捜査から起訴、公判へと至る刑事司法はどうあるべきか。裁判員裁判の導入などで日本の司法が生まれ変わる中、手つかずで残されていたのがこのテーマだった。
法相の諮問機関、法制審議会で刑事司法の見直しに向けた議論が始まった。来年中をメドに方向性を示す。抜本的な改革を期待したい。
そもそも日本の捜査・公判は容疑者・被告の自供を前提にしている。同じ殺人でも犯意や認識で量刑が分かれ、収賄罪が成立するには賄賂と思っていたかどうかの解明が必要だ。このため取り調べの比重が大きく、自白するまで保釈されない「人質司法」もまかり通ってきた。
こうした自白偏重の捜査が強引な取り調べや客観証拠を軽視する体質を生み、冤罪(えんざい)にもつながった。法制審での議論のきっかけとなった大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件は、まさにこうした体質を背景にして起きたものだ。
東京新聞(社説)
原発テスト 再稼働の思惑が透ける

玄海原発(佐賀県玄海町)など、停止中の原発は簡便な一次評価で再稼働-。菅直人首相が打ち出したストレステスト(耐性評価)とは、この程度のものだったのか。国民の不信と不安はまた募る。
脱原発で起死回生を図りたい菅首相、盛夏の電力危機を原発再稼働で乗り切りたい経済産業相。統一見解というよりは、その場しのぎの折衷案に見える。
政府としてはあくまでも、原発の安全は、経産省原子力安全・保安院による現行の検査で保たれているとの基本姿勢を崩さない。
福島第一原発の事故を受け、政府としては、すでに十分な緊急対策を電力会社に指示したが、念には念を入れるため、安全性評価のテストを実施するという。
福島の惨事は現在進行中である。収束してはいない。指示された緊急対策の完了にはまだ時間がかかる。それでもまだ“安全神話”に寄りかかり離さない。これが、そもそもの間違いだ。
シャトル後 日本の独自性発揮を

米国は、三十年間世界の有人宇宙開発をリードしてきたスペースシャトルを引退させたあと、火星などへの有人探査を目指す。わが国もシャトルへの日本人搭乗などで得た経験と知識を将来に生かせ。
シャトルの飛行は一九八一年四月以来、今回が百三十五回目だ。ロケットのように打ち上げられ、グライダーのように着陸することで機体を再利用可能にし、打ち上げコストの大幅削減を目指した。
だが、八六年と二〇〇三年の二度の事故で十四人の飛行士が亡くなり、安全対策に力を入れたことなどから打ち上げ費用は膨れ上がり、コスト削減は当初の期待ほどはできなかった。