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WWEスーパースター列伝 ジョン・シナ

2007年01月29日 | スポーツ
ジョン・シナは現WWE王者である。ハンサムでしゃべりがうまく、歌も演技も上手。アクション映画の主役を務め、非常に仕事熱心で真面目。同僚や上役からの評判も良い。体格にも恵まれ団体内でも屈指の怪力、特に女性や子供からの人気は絶大のヒーローである。
しかし彼にはたったひとつだけ致命的な欠点がある。プロレスが下手なのだ。

シナのデビューは五輪金メダリストのカート・アングル戦。カートが開いたオープンチャレンジ戦に挑み、カートにボッコボコにされるやられ役かと思いきや、猛攻に耐えて何度もニアフォールを奪い、敗れたものの強烈なインパクトを与えて見せた。
その後はラッパーキャラに転身し、達者なしゃべりを活かしたヒールとして名を上げていき、悪役ながらも人気を高めついにベビーフェイスに転向。220キロの巨体を誇るビッグショーを両肩に担ぎぶん投げるという怪力で、トップ戦線に絡み出した。
絶大な人気に支えられ、WWE最大の祭典レッスルマニアで王座挑戦の機会を得ると、9ヶ月の長期政権を維持していた王者JBLを10分足らずで下し、ベルトを奪った。
波に乗ってRAWに移籍し(WWEは団体内でレスラーを分割し、野球のセパ・リーグのようにそれぞれ独立させ番組を作り、タイトルを争わせている。RAWはその番組の一つ)長期政権を着々と築きつつあった。
しかし観客は気づいてしまった。とんとん拍子で頂点に駆け上がり、クリス・ジェリコやカート・アングルら試合巧者をものともせず勝ち続けるシナが、プロレス下手なことに。
もともと不満はくすぶっていた。王者になったのも時期尚早だったと見る向きも多かったし、その後の快進撃にも疑問を抱かれていた。
並み居る強豪を退け王座を守り続けていたJBLから初対決でベルトを奪い、世界最高のレスラーと呼ばれるカート・アングル相手に、ハンディ戦や悪徳レフェリーを使われた不利な条件でも連戦連勝。その度を超したプッシュはあまりに不自然だった。それに加えて試合運びの下手さ、技術のつたなさである。
技が少ない。技のかけ方が下手。つながりが下手。いつも試合の展開が同じで起伏に乏しい。勝ち方が決まっていてワンパターン。さんざん痛めつけられてもダメージの蓄積した演技ができない。などなど欠点は山ほどある。王座に就いたことで試合巧者と当たることも増え、そうした欠点がますます浮き彫りにされたこともきついところだ。
試合では絶対的ベビーにもかかわらず、有利になるとブーイングや「シナ最低」コールが浴びせられ、不利になると大歓声。完全に悪役扱いで、観客に拒絶されることもしばしば。
色男ならなんでもいい女性や、解りやすいヒーローを好む子供には人気なのだが、会場でブーイングを飛ばしたり、プロレス人気を支えているのはやはり、目の肥えた観客たちである。彼らが不平を唱えれば、その声はどうしても会場全体を巻き込んでしまう。シナの不人気は深刻な状況に陥っていた。
そこでWWEは手を打った。抗争相手として、最低のキャラを持ってきたのだ。
相手の名はエッジ。王座を奪うためには手段を選ばない、下品で最低なR指定の男――そんなキャラである。
彼にシナは王座を奪われた。それも金網デスマッチで5人を相手に戦い抜き、40分の死闘でボロボロになったところに挑戦されるという、謀略の末に敗れたのである。
しかし皮肉にもタイトルを強奪したエッジには歓声が飛んだ。「シナからベルトを奪ってくれてありがとう」というニュアンスが含まれていたことは間違いない。こんな状況でベルトを奪われたのに、悪役に歓声が飛んでしまうところに、シナが王座に就いていたことの問題が如実に表れていると言えるだろう。
WWEとしては、これは苦肉の策であり、アンチ・シナに対する緩衝剤、つまりシナ不人気の対策としてワンクッション置いただけのことであった。というのも、シナはわずか1ヶ月後にベルトを奪い返したのだ。
3ヶ月後には祭典レッスルマニアにて、団体の至宝HHHを初対戦で下し防衛。プッシュはまだまだ続いていた。しかし6月に行われた防衛戦は勝手が違った。
今回の相手はRVD。この対決は異色のものである。RVDがかつて所属した団体ECW(01年1月に崩壊)を再興させる大会で、会場にはかつてのECWファンが集結し、シナは完全に敵役であった。
試合は最低男エッジの乱入もあり、RVDの勝利。再びシナはベルトを失った。ちなみに観客からは「ありがとうエッジ」コールが上がっていた。シナはどこまでも悪役扱いである。
その後は9月の試合でベルトを奪い返し、現在も防衛中。いまはイカれた怪力原人キャラのウマガと抗争している。(シナにブーイングが飛ぶのはしかたないから、せめて相手には歓声の飛ばない、飛ばしにくいキャラを選ぼうという意図が見えるのは気のせいか)WWEはあいかわらずシナをトップベビーとして売り出していくのだろう。
僕はシナの試合が見たくなくて、もっと言えばシナが王者としてプッシュされるのが嫌で、あまりWWEを見なくなった。同じ考えのファンは決して少なくない。
WWEがいつまでシナを推すのか。もはや慣例と化してしまった感もある、根強いシナへの不平をどう封じ込めていくか。なんせ団体の象徴である王者だけに、WWEの浮沈のカギはそこにある。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ギバ一族)
2007-01-29 18:17:37
僕はエディが死んでから見なくなりました
Unknown (ミニ・ゴールドバーグ)
2007-01-30 23:08:22
あの年は個人的に訃報が相次ぎ、トドメを刺すようにエディの死を聞きました。
今でもひょっこりエディが戻ってこないかと思っています。あんなレスラーは二度と現れないでしょうね……。
Unknown (包丁)
2011-04-01 08:52:11
"上手い下手"でしか、プロレスを見れない人にはシナの良さはわからない(笑)
Unknown (ミニゴバ)
2011-04-01 18:32:36
これは4年前の記事ですが、シナは上手い下手よりも、当時から一歩も進化していないのが最大の問題ですね。
フライング・ショルダーブロックから始まる反撃のパターンは一つのアレンジも加えられず常にワンパターン。
4年間で増やした技は(記憶が正しければ)フィッシャーマンバスター、フライングレッグドロップ、ベリートゥベリーの3つだけ。それどころか飛び技とスローバックは使わなくなり、むしろ技は減っている始末。
現状に満足し進歩をやめたことが、シナの最大の欠点であり、僕がシナを嫌いな理由です。
Unknown (包丁)
2011-04-18 20:17:01
ロックボトム→返される→スパインバスター→ピーブルズ・エルボー。

フライング・フォア・アーム→チョップ→リバース・アトミック・ドロップ→エルボー→足踏み→スウィート・チン・ミュージック。 一部だけど定番だらけ(笑)
Unknown (ミニゴバ)
2011-04-19 01:20:01
ショーンは
フライングフォーアーム→跳ね起き→マンハッタンドロップ→パンチ→ボディスラム→フライングエルボー→予告→スイートチン
でしょ。

そこにポストを登りかけて念押しの二回目ボディスラムとか、パンチやマンハッタンを二~三回に増やすとか一部チョップに変えるとか、スイートチンをかわされてフィギュアーフォーに切り替えるとか、いろいろアレンジを加えています。
シナはいつも一緒。
ロック様はそのパターンはよほどの強敵じゃないと初めのボトムを返されないでしょ。
っていうかスパイン→エルボーをパターン呼ばわりは強引すぎるのでは?
Unknown (包丁)
2011-04-28 23:45:09
念押しボディスラム? 悪いけど一回もみたことねぇ。 あっ! もしかして昔の、ふざけてた頃のやつかな? それとロックはそれなりの奴としか、試合をしてるのを見たことがねぇ(爆)
Unknown (ミニゴバ)
2011-04-29 00:41:23
4年も前の記事にわざわざ絡んできた時点で気づいてましたが、単なる荒らしですね。
レッスルマニアのシナの試合を見て何も感じないような人とこれ以上話しても無駄です。以降は無視しますのであしからず。

最後に二つだけ。僕は10年来WWEのテレビマッチを全試合見ており、コーナーに登りかけて戻ってきての念押しボディスラムは数回見ています。もちろんサマースラムでの復帰後です。

ロックはノーウェイアウトでホーガンと戦う前でさえハリケーンと戦っています。ハリケーンはそれなりの選手でしょうかねえ。
それ以前ならショーン・ステイジャックを握手から引き寄せてのロックボトムで秒殺したこともあるな。

あ、もう一言だけ。
黙れ素人。

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