診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

癌のリスク検査

2015年09月30日 | 診療
9月9日から10日にかけての大雨で、
当地では、家が流された映像がテレビで放映されたので、
遠方にいる何人もの親戚が、心配して電話をかけてきてくれました。

ここは高台なので、まったく問題はないのですが、
ここから下った川は氾濫してしまいひどいことになっているようです。

数日後お天気が回復した時に見に行ったのですが、
田んぼは見るも無惨が状態で、胸が痛くなりました。

そこは田んぼと言える状態ではなく、
大きな石がゴロゴロで、辺り一面川原のように土だらけでした。
ここいら一帯の田んぼは、
うちにみえる患者さんの何人かの田んぼです。

「ひどかったねぇ」と久しぶりにみえたご本人に聞くと、
「いやぁ、まいったよ。でもしゃああんめー、今年はあきらめるよ。」と
以外とさっぱりしていました。
本心かどうかはわかりませんが、
何十年も自然を相手にしている人の強さを見たような感じがしました。

さて、当院では10月からAICSというガンのリスク診断をはじめることにしました。
男性なら、胃がん肺がん大腸がん前立腺がん膵臓がん、
女性なら、前立腺がんの代わりに乳癌、子宮癌が入るのですが、


採血をしてABCの3段階で癌の
危険度がわかる検査です。

これをはじめる前に、お試しで僕とカミさんの検査を
テストでやってもらうことになりました。

その結果が昨日帰ってきたのです。
カミさんは、全然まったく異常なし。

で僕は、
大腸癌のリスク
Bランクでした。

どうしようかと思ったのですが、
弱虫の僕は 来年またやることにして、
今回は逃げることにしました。


2匹目のアニサキス

2015年09月14日 | 診療
土曜日、初めてのアニサキス症を経験したばかりの月曜日の今日。

一昨日の夜から腹痛が起き、昨日一日苦しんでいたという田中さんがみえました。
特定検診と前立腺ガンの検診もしようとしていたので、
それほどの痛みはなかったのかもしれませんが、
問診で、腹痛があるといったので、

今までの経験からの教訓
「不思議なことに滅多にないことでも続く時は続くものだ」
これが頭にひらめきました。

そこで話を聞いてみると、
やはり前の晩にサンマの刺身をたべたとのこと、

食事もしていないということなので、
内視鏡を入れてみたら、

いました,アニサキス。

看護婦さんも「いたー!」と声を上げました。

一昨日の経験から、難なく摘出できました。

ホント 続く時は続くもんです。


初めてのアニサキス

2015年09月12日 | 診療
たった今のことです。

今朝は一番にやってきた神田さん。
ご近所のいつもお世話になっているかたです。

「昨日の夜から腹が痛くってさ」
「なにか、思い当たることはないですか?」と僕。

「そうだなぁ、昨日サンマの刺身食べたっけかな。」

頭の中にはアニサキスと言う文字が ピカピカと光っています。

「神田さん、今日 朝ご飯は食べましたか?」
「いんや、腹痛えから、なにも食えなくてよ。」

ラッキーです。胃カメラが出来ます。

次は鉗子です。虫を捕まえることの出来る鉗子はあるのか。
そういえば昔、買ったような記憶が。
「看護婦さん、全部の鉗子見せて、大腸用でもいいから。」

探してくれたら、把持鉗子が出てきました。
「これ使うから。」といよいよ胃カメラ開始です。

胃の中は相当荒れています。
あちこちに急性の胃潰瘍のような出血部があります。
でも明らかな潰瘍はなく、腫れて出血があるだけです。
それらを一つ一つ観察して,アニサキスがいないか見て行きます。

そしてとうとう胃体部前弯の出血部に
なにやら糸のようなものを見つけました。

モニターを見ている神田さんも
あっともウッとも聞こえるような驚きの声を出しました。

これでしょう、アニサキスは。
初めてのアニサキスです。

「さっきの鉗子だして。」と僕。
いよいよ摘出です。

ところが、この場所は取りづらい場所です。
何回かつかんで、引っ張ったのですが そのたびにするりと抜けてします。
何回やってもダメなのでこちらもダンダンあせってきます。

そこで、一回鉗子を抜いて先端の状態を確認すると
隙間が空いてるではありませんか。
これでは掴めたようにみえても、すり抜けてしまいます。

あとは うちにあるのはバイオプシー用の鉗子だけです。
これだと短くちぎれてしまう可能性があります。

仕方がないので、バイオプシー用の鉗子を僕のゴム手袋に噛ませて握り方の調整です。、
「看護婦さん、あまり強く握らないで。そうそうこのぐらいでいいから。」と
バイオプシーする時より、弱く優しく握ってもらうようにお願いして、
いざ、再挑戦。

するとしっかり掴めたのです。

あとは、鉗子を内視鏡の中まで引っ張り込まないで、
内視鏡ごと抜いてきて摘出です。
「いいかい、ぬくよ、はい。」

抜いたカメラの先端に鉗子の丸い部分が出ていて、
そしてその丸い部分はしっかりと白い糸状のアニサキスを掴んでいました。

看護婦さんはいつの間に用意したのか生食の入ったシャーレを出して、
うまいことアニサキスをその中に入れてくれました。

シャーレの中のアニサキスは、クニョクニョと動いています。
それを神田さん、スタッフ全員に見てもらって、
一件落着でした。

やれやれ、
久しぶりに緊張した、アニサキス摘出でした。

しかし今こうやって書いてみて気づいたことは、
最高の殊勲者は アニサキスを柔らかくつかんでくれた看護婦さんですね。
強く握ってしまったら、切れちゃっていたのですから。

















うれしかったこと

2015年09月09日 | 診療
このところお天気がグズグズしています。

カミさんは野菜の値段が上がって困ったとか、
洗濯が乾かないなどと言っています。

外来に見える患者さんも
稲刈りの予定がたたなくてこまっています。
とか、
梨が甘くならなくて困っています。
などと話してくれます。

私たちの生活は自然の影響を受けています。というか、
自然の中で人の生活をさせてもらっているだけなんだと思います。

あれ、こんな話を書くつもりはなかったのですが。


先日 うれしいことがありました。

今年の春だったでしょうか、長田さんがはじめて見えたのは。
胃の調子が悪くて、ファイバースコープを行ったところ、
多発の胃潰瘍があり、病理検査の結果、
悪性リンパ腫の診断でした。

すぐ大学病院へ紹介して、治療が始まったのをご主人から伺いました。

今は昔より治療成績が上がったとはいえ、
入院しての化学療法は大変だろうなと思っていました。

その長田さんがつい先日 ひょこり顔を出してくれました。
「どうしたの?」と僕、
「センセ、有り難うございました。寛解したそうです。お礼に上がりました。」
「おめでとうござます。よかったですね。」

長田さんとお会いしたのは、
初診の時、ファイバーの時、結果を伝えて紹介状を渡した時のたった3回だけです。
それなのに、こうやってわざわざご挨拶にみえるなんて。
この仕事をやっていてよかったなと思える瞬間です。

『本当によかったですね、長田さん。』