診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

鼻につくって

2017年08月19日 | 診療
しかし、今年の夏はいったいどうしたことでしょう。
梅雨開けしてから、雨ばかりのような気がしています。

農家をやっている患者さんは、皆
「野菜は全然ダメだねぇ。」と言っています。

海の家も、プールもダメ。
お米も 「凶作だろうね。」との声が聞こえます。

春先の長期予報では、「猛暑でしょう。」といっていたのも
完全にはずれてしまいました。

さて、
そんなお天気の中でも、
皆さん お元気に過ごされているのは
なによりです。

近くの住宅団地は造成が始まってから、25年位は経つでしょうか。
入居当時30代だった方は、今は子育ても終わり、
子供たちは巣立っていって、家族が減ってきました。

その中の一人、田中さんは以前から高血圧の薬を服用しています。
更年期の頃からなので、もう10年以上になりますか。
その田中さんの1年ほど前のお話です。

同じ団地の中に娘さんも住んでおり、
よくそこに行って、家事の手伝いをしてあげたりしているようです。

診察の時 田中さん、いつもと違う訴えを話してきました。
「センセ、なんか鼻が変なのよ。
変な匂いがするわけではないのだけれど、
なんか鼻の奥に、匂いがこもっているみたいなんですよ。
何でですかね。」と聞いてきました。

「そう聞かれても。
耳鼻科に行って見てもらったら?」と素っ気なく逃げた僕。

次の診察日にお目にかかった田中さん。
開口一番、
「センセ、耳鼻科に行ってきたんですけど、
耳鼻科の先生は、なんともないですって言ってました。」

こちらの予想通りの答えです。
そこで「まだ匂いはへんなの?」と聞いてみると、
同じようだという返事。

さらに
「じゃ田中さん、心配事やストレスはなにかないですか?
あるいは、なにかいつもと変わったことはありませんか?」
と聞いてみると、

「特にないと思うんですけど、主人ともなんとかやって行けそうだし。」
「?、うまくやっていけそうって?」

「実はセンセ、主人がこの春から定年で毎日家にいるようになったんです。
最初は、いつもと生活のリズムが違って。お昼ご飯もちゃんと作らなきゃいけないし。
自由に娘のところにも行けなくなっちゃって。
でも今は、慣れてきたのかな。ゴルフにもよく行ってくれるし、
鼻につくことも減ってきたみたいです。」

なんと 田中さん。
ご自分で、症状の原因を教えてくれました。

田中さんの匂いの症状は、
無意識にご主人の存在が鼻についていたからなのでしょうか。

それからは、田中さんの診察のたびに、
ご主人の気になることや、田中さんの気持ちを
少し長く話してもらうようにしていったら、
自然にご主人の話も出なくなり、匂いの訴えも減ってきて、

あれからしばらく経った先日。
久しぶりに田中さんに聞いてみると、
「センセ、旦那とはうまくやってますよ。」
と話してくれました。