診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

藪の中

2017年05月27日 | 診療
世の中には、
「嘘のような 本当の話」や
「本当のような嘘の話」。

それから
「本当か嘘か わからない話」
こんな話がゴロゴロしています。

本当のことは 藪の中です。

さて、これからのお話は、どうでしょうか。

近くのケアハウスに住む 85歳ぐらいのお婆さん。
名前は  長谷川さんとでも呼ぶことにしましょうか。

この方は入所以来もう15年ほど住んでいらっしゃいます。
いまでも、お一人であちこちの病院へ行ったり、デパートに行ったりしています。
いくときはいつも同じタクシーで。

ここ3年ほど前から、少し物忘れがひどくなってきたようですが、
それでもご自分の足で歩いてここの診療所にもお見えになって、
お話をしていかれます。

その話をきいてみると、
「ときどきお金がなくなるんだよ。妹が来たとき、だまって取っていくんじゃないかと思ってるんだよ。」
「通帳から、身に覚えのないお金が引き出されているんだよ。」
「この頃は、どうもあの人が怪しくみえてきたんだよ。」
と、被害妄想にも聞こえるお話をすることもあるのですが、
ふつうは
当たり前のなんでもないお話ばかりです。

また、これは、うちに来たときだけの話で、施設で問題になっているようでもないし、
嘘か真か 調べることもできず、調べたからどうこうなるわけでもないので、

昼下がりの時間、長谷川さんのそんなお話を
「そうかい、そうかい、それは大変だったね。」と
なんとなく、時間がゆっくり流れていく中、
とりとめもなく話を聞いていました。

それでも、
先日 長谷川さんがはなしてくれた内容にはびっくりしました。

それは、
いつも長谷川さんが出かける時にいつも利用しているタクシーの運転手のことでした。

どこかに出かけて、戻ってきた長谷川さんに、
タクシーの運転手が声をかけました。

「おばさん、先日貸した1万円、返してもらえるかな。」

そう言われた長谷川さんはあわててしまって、
貸したかどうかなんてことは考えずに、返さなきゃと思い、
「あっ、どうもすみません」と1万円を渡してしまったのです。
後から考えて、お金を貸すわけはないのにと、変だと思っているようです。

しかも、その他に
タクシー代 2000円に1万円札を渡したら、
おつりがなかったと言うではありませんか。

今度のことは日時と相手がはっきりしているので、信憑性は高そうなのですが、
僕は、「もう二度とそのタクシーを頼んじゃダメだよ。」というのが
精一杯でした。


そういえば、
僕が処方箋を出している玉山さんが
4ヶ月ぶりに来院したときの話です。
「薬3ヶ月ぐらい 飲んでなかったンだよね?」と聞くと
「いやー、センセ。いつもいくところにいったら、出してくれたから、
昨日まで飲んでいましたよ。」

処方箋がなくても薬を出したのでしょうか?、
それとも 日数を勝手に直されたのでしょうか。

これも、藪の中です。
僕も一緒に藪の中。です