診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

一枚の写真

2016年05月10日 | 日常
大型連休も終わり またいつもの日常が戻ってきました。

田んぼには水がはられ、田植えもだいぶ進んでいるようです。
さまざまな花も、たくさん咲いていています。

そんななか、
親しくしていた友人が亡くなったとの報が飛び込んできました。。
僕の写真の先生です。

1年半ぐらい前に肺がんが見つかり、化学療法を続けてきたのですが、
ホスピスに入院した翌日にこの世を去りました。

その2ヶ月ほど前、まだ身体も動いて写真も撮っていたようで、
僕に「今度の地元の写真大賞に応募しようと思っているんだ。」
といって 写真を見せてくれました。

それは一人の女性モデルの写真で、
いい感じで夕方の光があたっているすてきな作品でした。

「このモデルさん、治療を受けている病院の看護婦さんなんだ。
生まれて初めて女性に声をかけて、モデルをお願いしたら、
お母さん同伴でならと、OKがでて、撮らせてもらったんだ。」

それを聞いたとき、正直僕は、
こんなたいへんなときに、写真なんか撮っている場合かよと
思ったことを覚えています。
でも今は、彼がそれほどまでに写真が大好きで、
自分の撮りたいものを撮ろうとしていたことを
少し理解できるような気がします。


それから1ヶ月。
その写真大賞の結果が新聞に出ていました。
彼の作品は 見事入賞。

お祝いの電話をかけたら、
もう彼は自宅で起きられないようで伏せっていました。
かすれた声で、「ありがとう」といって、
仕事の心配をしていました。

そして入賞作品の写真大賞展が開かれる前に
とうとう彼は逝ってしまいました。

先日、その写真展に行ってきました。
係の人の許可をいただいて、彼の写真が展示してあるところを
持っていったカメラで撮ってきたのですが、
後から見ると、ガラスに証明が映っていて、ひどい出来です。
彼に「そんな写真撮っているから、ダメなんだよ。」と言われてしまいそうです。

写真展、終わるまでにもうちょっとましな写真撮って、出展目録と一緒に
ご仏前に供えてもらうようにしようと思っています。