診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

肺がんの Iさん

2016年01月26日 | 日常
肺がんに罹っている五木さんが久しぶりに顔を見せてくれました。
ちょうど1年ぐらい前、
体調不良で、大学病院を受診したら、肺がんと言われ、
それ以降、化学療法を続けている方です。

何種類かの抗がん剤を使ってみて、
効果のあるものもあれば、効果のないものもあるようで、

ときどき見える五木さんは、
「もうちょっと生きていたかったなあ」などとポツンという時もあります。

でも、なんとか仕事は今も続けていて、
いろいろなことを考えると本人も、周りの家族も大変だろうなと思います。

その五木さんの趣味は写真撮影で、
病気になる前は、あちこち出かけて風景を撮影したり、
モデル撮影会に出かけて写真を撮ってきて、
コンクールにも何回も入選する実力のある方です。

実は、僕は彼から写真を教わって、あちこち出かけて
一緒に写真を撮ったりしていました。
モデル撮影会にも一緒に参加したりしたこともあります。
撮影会での彼は、おとなしい性格や遠慮がちなところもあり、
モデルさんに声をかけることもなく、淡々と撮影をしているほうでした。

その五木さんが今回は珍しく写真の話を始めました。
「実は、抗がん剤治療に行った時に、
大学にいる看護師さんできれいな方がいたのですよ。
それで思い切って、モデルになってくれませんかと頼んだら、
やっと了解が得られて、今までに何回か撮影させてもらったんだ。
了解を得るのに、母親同伴で,今までの写真を見せたりして、
変な撮影じゃないことを十分説明して、やっとだよ。」

それを聞いて僕は最初、
そんなことしている場合か!!、
信じられない。
もっとやることあるんじゃないの。
と思って聞いていたのですが、

五木さんが帰った後ふと
別の考えが浮かんできました。

限られた時間だから、
やろうと思ったことは、
できるだけなんでもやってみよう
今はできるけれど、いつできなくなるかわからないから。
と考えているのでしょうか。

知らない人にモデルになってくれって声をかけるなんて、
僕が知っている五木さんからは、
絶対想像もつかない行動なのですから。

そう考えることで、自分の気持ちの整理が
少しできたような気がしたのです。