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空きの目立つ造船所 Echoes of Hammers in Empty Shipyards

2010-01-04 | グローバル経済
2010年1月4日(月)

世界的に、新造船の発注が急減する中、銀行の貸し渋りに苦しむ造船会社の倒産が相次いでいる。2002年から2008年までの造船ブームの最中、2007年には新規発注が総重量トンで約2.7億トンに達したが、昨年は1-11月の集計段階で約2700万トンと1/10に収縮してしまった。

造船会社のキャッシュフローは、契約段階で受け取る前渡金で回っているので、発注の激減は直ちに資金繰りを直撃する。2009年には、世界の造船業を牽引する韓国で3社、中国の中小で数社、日本で1社が倒産したが、ドイツでも3社、ノルウエーと米国で各1社が倒産している。デンマークでは最後の1社が廃業した。影響は倒産に留まらず、造船所の建設・拡充計画はすべて停止され、その事態は中国も例外ではない。

瀕死の造船業を国の援助で延命させようとすることは、造船能力の過剰状態を引きずり、業界の合理化を遅らせて、造船業界を援助付けにしてしまう。これは70年代にも80年代にも起こったことで、「いつか来たこの道」の繰り返しとなると、Financial Timesが警告している。

しかし、こうした状況に陥っても、国家の支援を受けて延命させるべきか否かについては、国家間で議論の分かれるところであるとOECDの造船業の専門家が発言している。

昨年まで、業界は、「世界の貿易はまだまだ伸びる」と超楽観主義に浸っていた。しかし当時から船腹の過剰に陥ることはすべての市場で明白であった。いまやタンカーはじめ多数の船舶が係船状態にある。廃船による保有トン数の調整も限界に達している。

海上輸送量の激減に苦しむ船会社は、発注のキャンセルや納期の先延ばしによって、船舶の引き取りをできるだけ抑制して、完工時の残金支払いを圧縮しようと懸命になっている。その結果造船会社との係争も多数発生している。

工作機械、建設機械と造船は、景気循環に遅れたタイミングでその影響を受けることは誰でも知っている経験則である。そして山と谷の落差の大きさもみんなが知っている。そして常に「まだまだ」が支配し、「いつかはきっと」という楽観が支配してきた。しかし21世紀のパラダイム変換は確実に起こりつつある。


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