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人民元変動相場、『日本の愚を犯すな』 A Game of Negotiation

2010-06-22 | グローバル経済
2010年6月22日(火)

先週土曜日に、中国人民銀行による「2年間に渉る人民元の対ドル固定相場(the peg)からの決別」宣言があってから最初の取引となった昨日の為替市場において、人民元は、一日の変動許容幅(中間値から上下0.5%)のほぼ上限に近いところまで上昇して取引を終えた。

中国政府は、今週末のトロントG20に置いて、「為替操作国」として非難が集中することを回避するために、あえて国内の人民元固定を望む産業界の意見を無視した。中央銀行が、珍しく土曜日の発表に続いて、日曜日に「切上げ巾は大幅ではない」とあわてて修正したことが、中国政府内部の混乱ぶりを象徴している。

中国の対欧州輸出は、ユーロの急速な下落で、人民元の対ユーロレートが自動的に大きく切りあがった結果、すでに大きな打撃を受けている。Financial Timesは、政府方針変更に対する中国国内の反発する意見を伝えている。

まず一般経済紙National Business Dailyは、昨日のその論説で、「人民元の変動相場への回帰は時期尚早である。中国経済の構造改革がもっと進み、内需拡大が実現してからにすべきだった」と主張している。

そしてネット上のブログ書き込みには、怒りもあらわに切上げ反対の意見が飛び交っていることを伝えている。「アメリカ人を信用するな。彼らは、利己主義者だ。中国が、日本の1985年に追い込まれたプラザ合意の悲劇の二の舞を踊らされないよう祈る」との意見や、「政府はアメリカに国益を売り渡した」という政府攻撃も行われているという。

さらに、本日火曜日の中国人民銀行が設定する、為替変動許容バンドの中間値がどこに設定されるかで、中国政府の為替政策が読めるとするトレーダーの意見を紹介している。

「もし昨日の高値に近いところに設定するとすれば、相当のレベルまでの切上げ容認の姿勢であるし、中間値を動かさなければ、『大きな変動は許容しない』とした日曜日の補足発表通りの方針が再確認されることになる」。

G20を前に中国政府は、米国政府に「為替操作国」と認定されて、報復措置をとられる事態を回避する道を選んだ。日本が追い込まれた「プラザ合意」の愚を犯すなというのが中国政府内部の意見であるという。(It did not want to be pushed into a “game of negotiation” – as was the case with Japan and the Plaza Accord.)

一方、オバマ大統領も、関連の中国を非難する議会への報告書の提出を遅らせて、中国政府に政策変更を迫った効果があったし、議会からの対中外交弱腰との批判をかわすことができた。

人民元の切り上げがもたらす世界経済へのインパクトは非常に大きいものとなるであろうが、米中間での相互利益確認をしながら行っている経済外交の呼吸の合わせ方のうまさが目立っている。



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