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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

米国西岸を襲う怪物暴風雨 "Frankenstorm"

2010-01-25 | 環境・エネルギー・食糧
2010年1月25日(月)

今年の米国は豪雪被害が続出しているが、先週のカリフォルニアの天気は大荒れで、ロスアンジェルス地区は豪雨によってさすがの山火事も収まった。

日本から州都サクラメントに出張した人の話によると、サンフランシスコで乗り継ぎ便は大幅な遅れを出し、現地ではハリケーン並みの風雨が連日吹き荒れていたとのことである。

AP通信社は、こうした冬のカリフォルニアの天候異変に関して、the California Institute of Technologyの科学者たちが、 "Frankenstorm" シナリオと称する天候異常モデルの研究に取り組んでいると報じている。

今年と同様な、豪雨と洪水に見舞われたのは、1861年から62年の冬に遡る(The Great Flood of 1861-1862)とされており、当時豪雨のため州都は一時サクラメントからサンフランシスコに移動されたほどであったという。そして州知事の就任式に、知事は手漕ぎボートで出かけたとの記録がある。

今回の「フランケンシュタイン型暴風雨」の研究は昨秋始められたものであるが、その結果作られたのは、太平洋上で形成された暴風雨圏が、ハリケーン並みに成長し米国西岸に順次押し寄せるというモデルである。「約1週間暴風雨が続き、数日間で衰えたら、また次の暴風雨が洋上に発生する」パターンが、最大23日間継続するというシナリオが想定されている。

それによると場所によっては降雨量が2000mmに達するとされているので、先週続いた暴雨風などは、それに比べると「バケツの一滴」に過ぎないのであるが、それでも道路の冠水、トルネードの発生、2000所帯の緊急避難など各地に大きな被害をもたらした。

この研究は、今後土砂災害、海岸線の後退、インフラの破壊などによる経済的な損害の推定作業を経て今夏に最終報告が作成され、来年以降の災害対策と訓練に活用される予定となっている。

北半球の厳冬と南半球の異常高温、米国西岸の豪雨など異常気象が続く。地球温暖化問題とどのように関連するのかはわからない。超長期の気候変動と一過性の気象とを結びつけて考えようとするのは、政治的行動というべきものである。


韓国、砂漠産油国UAEから大型原発受注 Washington’s Model

2009-12-28 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月28日(月)

韓国電力・現代・三星・斗山重工業が組んだコンソーシアムが、アラブ首長国連合(UAE)のなかの一国アブダビ政府から、総出力560万kWの原子力発電所の設計・建設・操業指導を含む請負契約を204億ドルで受注した。

アブダビ政府は、単機容量140万kWという世界最大の原子力発電所4基を建設する計画であり、最初の1基は2017年から発電を始め、残りの3基は2020までに発電を開始する。

今回の原発建設契約は、次の3点で、世界の大きな変化を象徴している。

第一は、石油・ガスが現在は潤沢であるアブダビが、資源枯渇を見通した上で、原子力を導入することとしたこと。アブダビは現在年率9%の経済成長を続けている。世界第5位の産油国であり、第3位のガス埋蔵量があるにもかかわらず、すでに国内の石油精製や発電用の燃料はネットベースで輸入国に転じている。2020年には、4000万kWの電力を必要とすると予測されている。こうした、石油・ガスの枯渇の予感が,アブダビに原発導入を急がせている。

第二は、原発建設はするが、燃料のウラン濃縮と、使用済み燃料の再処理を一切行わないことを宣言していること。これはあくまでも核爆弾保有する権利を留保しようと、濃縮・再処理施設の自国内建設にこだわり、米国の圧力に抵抗するイランとは対照的である。米国政府は、UAEを「中東のモデル」として今後も産油国に広めていく方針と見られる。

第三は、韓国の原子力産業が、日米、仏の企業グループとの競合に競り勝ち、高度の技術力を要する原発の2兆円のフルターンキー契約を手に入れたこと。サルコジ大統領が自ら売り込んできたAreva連合と、GE・日立の日米連合を退けたことの韓国経済にとっての意義は大きい。

世界は、エネルギーの脱炭素化に大きく舵を切ろうとしている。大容量の発電は原子力を基軸とし、太陽光と風力発電は気候条件の良いところで大規模集積を図る方向が見え始めている。


コペンハーゲン幻滅夜話 ‘Hopenhagen’ to 'Brokenhagen'

2009-12-21 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月21日(月)

土曜日早朝までかかった気候温暖化ガス排出削減交渉は、強い疲労感を各国代表団に残して散会した。

この事態に、The New York Timesは、「欧州首脳の間に漂う欲求不満」(An Air of Frustration)を大見出しとし、「会場のEuropean Union pavilionは葬儀場と化した」と報じている。

またFinancial Timesは、「欧州企業トップは、確たる削減目標数字が示されなかったために排出削減に要する莫大な投資金額への対処方針が定まらないことに苛立ちを隠さない」と報じている。

一方、CNNの電子版は、「ホーペンハーゲン」(希望の港)に集まった人々は「ブローケンハーゲン」(夢破れた港)で終わるのをみて「コペンハーゲン」(商人の港)を去っていったと言葉遊びで会議の混乱振りを揶揄している。その記事を要約すると:

「2年間の準備と2週間の審議を経て、代表団は手ぶらで(practically empty handed)で帰国したのであるが、オバマ大統領が自画自賛したように、「意味ある(meaningful)成果」であったかどうかは、今後の議論しだいだ。

特にオバマ大統領の演説後の会場からの拍手がまばらであった(a slow hand clap)ことにすべてが象徴されている。各国代表は、握手をして集合写真を撮ったが、決めるべきことを将来合意しようとだけ合意したのだ(agreed to agree)。中国が反対した削減行動に対する国際査察がどうなったかもよくわからないままである。

今回の合意は、米国・中国・インド・ブラジル・南ア・EUの間で行われた必死のポーカーゲームの結果まとまったものだ。これらのメンバーは、混乱のまま終わろうとしている会議を救うために議長国オランダが選んだものである。(日本が入っていない)

グリーンピースの事務局長は、『今回の合意にしかけられた抜け穴は、オバマ大統領の専用機が通り抜けられるほど大きい。今夜のコペンハーゲンは、犯罪都市だ。罪を犯した男女が競って空港から逃げていく』と憤ってもいるしあきれてもいる」

The New York Times、Financial Times、CNNの三つに共通して出てくる言葉を集めると,disorder(混乱)、disorganization(無秩序化)、disarray(混乱)、disappointment(失望)とみごとに、接頭辞dis-がつく語彙集になった。

COP15『先進国の横暴』批判 pulling a document from nowhere

2009-12-20 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月20日(日)

193カ国の参加を得て、またその最終日には110人もの各国最高指導者が出席したコペンハーゲン会議が2週間の長丁場を経て終了した。一夜明けてその会議の成果についての諸国の態度が明確になって来た。

会議は、昨日の本欄で速報した内容を、法的拘束力のない3ページの文書にまとめられているが、表現はあくまでも弱く、「署名各国はコペンハーゲン合意に留意する“take note of the Copenhagen Accord”となっているのみである。

オバマ大統領は、中国の温家宝首相と二度にわたる会談を行って、対中強硬姿勢を世界に示したが、「中国は削減を監視する仕組みを受け入れて、透明性transparencyを担保するべし」と、EUとともに迫ったことも会議が事実上の決裂に終わらせた原因のひとつである。

この問題は、削減目標値で合意した後の技術論として先送りも可能であったはずだが、オバマ大統領は議会対策上、対中強硬姿勢を示す必要があったのだ。

オバマ大統領は、会議の成果を意味のある合意“a meaningful agreement”と自賛し、Ban Ki-moon国連事務総長は、すべてが当初の目標どおりではないが、今後に向かって、「不可欠の出発点」“essential beginning”であると評価した。

ベネズエラとボリビアなどの南米を中心とした発展途上国の一部は、会議途中から強い反対姿勢を示していたが、ベネズエラのチャベス大統領の毒舌は止まらなかった。

「会議は不成功に終わったのは残念である。帝国主義国アメリカに率いられた国々の政治的な意思が不在であったことが原因で失敗したのだ。議長国デンマークと富裕先進諸国は、途上国の利益を無視した合意文書なるものを、どこかから引き出してきて“pulling a document from nowhere”共謀したことは許せない」と非難をデンマークにも向けた。

スーダンが代表を務める途上国77カ国(G77)も、「合意文書の作成過程では先進国と途上国の一部の密室交渉が行われた」と強く批判した。スーダンの代表はさらに「米国主導の今回の合意は、温暖化阻止のための強い意思を示すという意味で最低だ。世界の最貧国にとっては、惨憺たる結果を招くであろう」(the US-backed proposals represented the “lowest level of ambition” and would be devastating for the world’s poor.)と強く非難した。

EUは、今後の取るべきステップの第一歩“the first of “many more steps”と表現しながらも、各国のコミットメントの弱さを嘆き、条約化できなかったことに失望を隠さなかった。特にスエーデン代表は、「2℃以下という目標では温暖化を阻止できない」とし、今回の合意は不完全である”not a perfect agreement”と批判した。

日経新聞は社説で、「日本は合意を取りまとめた28カ国には入ったが、存在感は薄い。コペンハーゲンでの会議は、鳩山外交の非力さを示すものでもあった。日本は25%削減の高い目標を掲げただけで、実現を裏付ける政策がない。」と論評している。

そして報道記事の中での、首相に対する評価:「よかった、よかった」。首相は同日、首相公邸に呼んだ平野長官に「コペンハーゲン合意」を評価する言葉を繰り返した。しかし、首相がしたことといえば「議事進行の要請」程度だ。




COP15は政治決着で結論持ち越しA Meaningful Agreement?

2009-12-19 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月19日(土)

コペンハーゲンで開催されてきた地球温暖化ガス排出制限交渉は、2週間にわたる対立と混乱の末、金曜日の深夜ぎりぎりで政治的な文書で合意に達したが、法的拘束性のある条約とすることは、現行の京都議定書の期限である2012年末まで先送りされた模様である。

現地の金曜日午後11時時点で、米国は、「意味のある協定」(a meaningful agreement) が形成されたと発表しているが、国連とその他主要各国からは、まだ明確な形でその協定に合意したとの声明がだされていない状況である。

以上を総合するに、実質的な削減目標設定には失敗したが、総括的な政治合意という形を取りながら、実質的な詳細は来年以降に持ち越したというべきなのであろう。

オバマ大統領は、「まだ合意内容は不十分だし、これからやるべきことが多い」といながらも自ら今回の合意を「史上初」と評価し、「合意は法的拘束力がないこと」を認めながらも、これから各国が排出削減目標を設定することに期待をかける発言を行っている。

現時点でわかっている合意内容は、具体的な削減の数値目標に代えて、「地球の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して、2℃以内に抑えること」を目標とすること、今後3年間に3兆円を途上国の援助に拠出し2020年にはその額を毎年10兆円まで増額することである。

今回最終段階に来て最も大きな障害になったのは、米中の対立であった。米国は削減目標の設定とともにその実効についての検証を、国際的に「透明性」(transparency)のある方法(subjected to a form of international monitoring,)とすべきと強く主張し、中国は、「他国を疑うような制度に断固反対する」と、内政干渉を排する態度を変えなかった。

そして今回のもっとも大きな収穫は、ブッシュ大統領が京都議定書を離脱して世界の潮流にさおをさしてきた米国が、温暖化ガス削減条約の枠組みに積極参加をコミットしたことといえる。その意味で今回オバマ大統領が現地で、温家宝首相と二度にわたり直接折衝を行うなどの努力をしたことは高く評価される。

コペンハーゲン会議は、決裂の危機 China: Deal Breaker?

2009-12-18 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月18日(金)

コペンハーゲンで7日から開催中の気候変動に関する国連の温暖化ガス排出削減交渉は、合意点をまったく見出せず膠着状態に陥っている。

現地入りしたクリントン米国国務長官は、「時間切れの事態になりつつある」と演説の中で状況に触れたが、もっとも大きな障害は水曜日に中国が、米国の「中国は排出量削減に関して透明性を高めるべきだ」との要求を拒絶したことにある。

クリントン国務長官は名指しこそしないものの中国を、「このままの拒絶を続けるならば『交渉の破壊者(deal breaker)』となる」と翻意を促した。さらに同長官は、「時間切れを前に、向こうだこっちだと争っている場合ではない(In the time we have left here, it can no longer be about us versus them.)。問題は世界に共通のものだから」と訴えた。

このような状況でオバマ大統領が現地入りするかどうかまで危ぶまれたが、CNNの報じるところによると、ホワイトハウスは、「大統領は木曜の夜には出発する」と発表したとのことである。オバマ大統領が今回目指しているのは、法的拘束力のある条約ではなく、それに至るための政治的な合意であるとホワイトハウスは言明している。オリンピック招致でコペンハーゲンに飛び、徒手で帰国した同大統領にとって、今回も手ぶらで帰ることになると政治的打撃が大きい。

米国は,途上国の説得のために、先進国全体として2020年までに約100兆円の資金を供与する案の同意した。そして、最終合意に含まれるべき重要要素として、各国個別の明確な行動計画、それを国際的合意の枠組みに組み入れる協定の成立、温暖化の影響を最も受け最もその対策が打てない最貧国への援助、信頼の置ける削減実施プロセス開示基準(standards of transparency that provide credibility to the entire process)を挙げた。

一方、英国のブラウン首相は、極めて哲学的な言葉で、会議の合意を求めている:

先進国には、「環境問題で行動することは、雇用を創造する強力なエンジンとなる」といいたい。途上国には、「最新技術を駆使すれば、二酸化炭素の大量排出がもたらす経済(high-carbon economy)の問題を回避して、高成長(high-growth economy)を実現できる」といいたい。

世界に向かっては、「歴史がわれわれにできうる最大限のことをせよと命じているときに、最小限のことでは済まされない」といいたい。"And to all nations I say: It is not enough for us to do the least we can get away with when history asks that we demand the most of ourselves."




温暖化ガスを、「排出する権利」を売買する tradable pollution

2009-12-15 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月15日(火)

コペンハーゲンで行われている温暖化ガス排出削減に関する、「京都議定書」失効後の新しい条約締結のための政府間の交渉は、難航を極めている。

中でも温暖化そのものを科学者の「情報操作」によるインチキと、決め付けるサウジなどの産油国の反対は異彩を放っている。また、二酸化炭素の排出などはほとんど自然現象の域を出ない多数の最貧国が大多数を占めるアフリカは、先進国からの援助金の劇的な増額を求めているが、会議の進行に不満を抱き昨日会議を数時間集団でボイコットした。

急速な経済成長を遂げつつある、中国・インド・ブラジルなどは、先進国に対し、「自分たちは二酸化炭素排出を好きなだけして経済成長を果たした上で、他国の成長に対して制限を加えるなど、いわば「盗人猛々しい」論理である」と怒り、先進国側のさらなる削減と、発展途上国の支援の増額を求めて強硬な態度を崩さない。

中国は、自らを「発展途上国」と呼んで、日本などの2020-30年時点での排出削減提案を、「不十分」と非難している。

ここにきて「京都議定書の延長」というウルトラCの対案が出てきて混迷の度が深まりつつあるが、金曜日の閉幕までにコペンハーゲン入りするオバマ大統領などの各国首脳が、この混乱をいかに収拾できるかが注目の的である。(イタリアのベルスコーニ首相はミラノでの負傷で出席取りやめとなった)

そんな中、二酸化炭素の排出権の取引を通じて、排出量削減努力を後押ししようとの意図の下に、EUが推進する、「排出権取引市場」(carbon trading market)は、低迷を続けているとFinancial Timesが報じている。

現在、「排出権」は、1トン当たり14ユーロに低迷している。ちなみに、2006年には一時30ユーロを越えたときもあるが、2008年の前半までは、20ドル台にはとどまっていた。排出権の売り手になる新エネルギーにとって投資採算ラインに達する排出権価格は: 地上風力発電131ユーロ、海上風力248ユーロ、太陽光572ユーロと算定される。

一方、金融界やヘッジファンドの一部は、排出権を金融商品市場の崩壊後の有望商品として希望を託している。その例としてBloombergが、コンサルタントのNew Energyを先週買収したが、その理由は、「排出権市場が今後10年で200兆円市場に急成長をする」という読みだそうである。

果たして排出権取引が、二酸化炭素排出抑制の有効な手段となりうるか、単に投機の対象商品としてまたも災危の源になるのか、まだ見えない。

波高いコペンハーゲン会議の開幕 The e-mail Flap

2009-12-08 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月8日

地球温暖化対策を話し合い、「京都議定書」失効後の新しい枠組みの締結を目指すCOP15がコペンハーゲンで月曜日に開幕した。

初日は、主催者の国連が、協定に向かわせるためのムードを盛り上げに腐心したが、もっとも大きな障害は、CO2排出大国の米中がどれだけの実質排出削減に応じるかに尽きる。

それとともに、温暖化問題の原因をこれまで作ってこなかった貧しい発展途上国に、対策費用を先進国がどれだけ拠出できるかも大きな議論の対象となる。

会議開催前に、米国、中国、インド、ブラジル、南アフリカなどの、これまで京都議定書の中では具体的な削減目標値をコミットしてこなかった国々が今回数値目標を出してきたことは大きな前進ではあるが、その数値は低すぎるとの批判が強い。

こうした、会議前の世界の論調に対して、総会の議長を務める主催地デンマークのConnie Hedegaard 大臣は、「地球大気の上昇を摂氏2℃以内に抑えるべし」とする科学者のコンセンサスに向かって各国が肯定的に行動することが協定達成の可能性を高めるが、われわれはまだそこまでいたっていない。また途上国への経済援助について合意できるかどうかもこの会議の課題である」と発言している。

しかし、もっと注目されるのは、ノーベル賞の受賞者、IPCC議長のパチャウリ氏の発言であった。同氏は「温暖化防止の行動を!」と訴えたが、同時に最近英国の大学のサーバーに侵入したハッカーが、「地球環境科学者たちが、事実を歪曲させてまでも問題を誇大に宣伝しようとした意図があること」を示すe-mailを暴露した騒動(the e-mail flap)を取り上げた。

同氏は、地球温暖化を示す確固たる証拠を数え上げて、「これらの数々の証拠は一致して地球温暖化傾向に関する科学的研究成果を裏付けている」と、今回指弾されている科学者の研究も含めて、異例の擁護の発言をしたことが注目される。

パチャウリ氏が、会議冒頭であえて言及しなければならないほど、地球温暖化研究のための科学者の方法論や、温暖化現象の科学的解釈について疑義をさしはさむ圧力も高まっている。それは純粋の科学的見地からの反論もあれば、政治的な意図に基づくものもある。

オバマ、温暖化ガス削減目標公表 A Game-Changer

2009-11-26 | 環境・エネルギー・食糧
2009年11月26日(木)

オバマ大統領は、12月にコペンハーゲンで開催される温暖化ガス削減のための交渉に自ら参加することを発表し、同時に削減目標を、2005年度比で、2020年に17%, 2050年に83%とすると明らかにした。これをケリー民主党議員は、「国内的にも国際的にも画期的なもの」(a game changer)と賞賛した。

この目標値はすでにオバマ大統領が温暖化ガス削減の目標値として、今年6月に下院にはかり承認されているものと軌を一にするものであるが、その法案の上院での審議は棚上げにされたままになっている。

COP15と称される地球温暖化ガス削減条約に関するコペンハーゲンにおける国連の会議は約2週間の日程で開催される。オバマ大統領は、会議の冒頭の12月9日に出席し、そのあとノーベル平和賞の授賞式に出席のためにオスロに向かう予定である。

このことに関して、会議主催者側では、オバマ大統領の出席を歓迎しつつもそのタイミングについて失望の色を隠していない。なぜならこの会議は紛糾することが通例であり、最終日に近い時点で合意形成が行われるので、そのタイミングでオバマ大統領に来てほしかったというのである。

The New York Timesは、米国が新たな削減条約に調印し、批准できる条件として、先にあげた上院の説得、そして「二酸化炭素排出大国」中国やインドを含む発展途上国の明確な数値目標の受け入れをあげている。

中国は先手を打って昨日公式に「現在行っている排出削減努力で十分でそれ以上のことはコミットする必要がない」との趣旨の発表を行った。一方、国賓として今週ホワイトハウスに招かれたインドのシン首相に対して、オバマ大統領は、対インド外交配慮から温暖化ガス問題で強い態度で臨まなかった。

さらに、上院共和党は、「数値目標の受け入れは米国経済を弱体化させるもの」として絶対阻止の構えである。温暖化ガス削減条約反対の急先鋒であるJames Inhofe議員は、すでに強烈な反対の火蓋を切った。

「オバマ大統領の今回の数値発表は、国際条約には結びつかないし、それにまだ実質的に始まってもいない上院審議を通過できると考えるのは早とちりもはなはだしい(foolishly prejudged the outcome)」 と発言し、「この法案は“野垂れ死にさせる”( dying on the vine)」とまで言い切っていると、The New York Timesが伝えている。

京都議定書からの離脱によって、温暖化問題での世界におけるリーダーシップを失った米国のブッシュ政権下における8年間の空白を取り戻そうとするオバマ大統領には、このように内外からの大きな壁が立ちふさがっている。


オバマ訪中時「温暖化ガス排出合意はない」 Carbon Omission

2009-10-29 | 環境・エネルギー・食糧
2009年10月29日(木)

来月に予定されているオバマ大統領の訪中時に、米中両国が、温暖化ガス削減に関して画期的な合意(a landmark agreement)に達する見込みはなくなったことを、米国の予備交渉団の責任者が上海で明らかにした。

Financial Timesの記事の見出しは、“carbon emissions”(二酸化炭素排出)をもじって、“carbon omission”(二酸化炭素問題除外)としている。

世界の二酸化炭素排出量の半分以上を排出する両国が、削減に関する合意に達することができず、「今後の相互理解と協力の深化」だけをオバマ訪中時の「成果」にすることにしたことは、12月にコペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約の第15回締約国会議(COP15)の帰趨に大きな影響を与える。

もともと、中国は自国の経済成長を阻害する排出削減を、先進国並みに課されることは不公平であると、かねがね主張してきた。

一方米国は、オバマ大統領が、気候変動枠組み条約への復帰を決め、「温室効果ガス排出量を2005年比で20年までに17%削減し、50年までに83%削減する。そのために、企業に対し二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出枠を設定し、削減により余剰となった枠を売買できる「キャップ・アンド・トレード」と呼ばれる排出量取引制度の導入を図る」との公約を発表している。

現在この公約に添う形での法案が今春以来、米国議会の審議にかけられているが、コペンハーゲン会議までに何らかの法案が可決される可能性はほとんどない。こうした事情を抱える両国であるので、簡単には二国間合意を短期間にまとめられるはずはないのも当然といえる。

Financial Timesは、「EU諸国では、これでコペンハーゲンでは、米中両国が組んで、他国に合意を強引に押し付ける事態はなくなった」と喜んでいるのかもしれないと論評している。温暖化ガス削減交渉は、全地球的問題への真摯な取り組みであると同時に、高度に政治的なゲームでもある。


CO2地下貯蔵施設反対運動 Carbon Capture & Storage

2009-07-30 | 環境・エネルギー・食糧
2009年7月30日(木)

温暖化ガス削減条約(京都議定書)の改訂交渉が、今年12月にコペンハーゲンで行われる予定となっている。そこで2013年以降の各国のあたらしい削減義務の枠組みが話し合われるが、先進国と新興国の間で対立が埋まらず、先のG8サミットでも見るべき進展がなかった。今週、米中間で行われた米中戦略・経済対話(U.S.-China Strategic and Economic Dialogue)でも、この点はぼかした結果となった。

その中で、EUは、積極的な削減計画を進めているが、その推進に重要な役割を果たすことが期待されている新技術が、二酸化炭素を液化して運び、地下深部の岩盤の中に閉じ込めて、永久に封入してしまうというCarbon Capture and Storage(CCS:二酸化炭素地下封入)技術である。

化石燃料を使用する、火力発電所や、製油所などから排出される二酸化炭素を、削減するために、現在世界の電力業界、石油ガス業界、重電機器メーカーが実用化に向けて開発に注力していて、天然ガスを採掘し尽くしたガス田跡や、岩塩層が分布する地域がたくさんある欧州では特に期待されている。

Financial Timesは、欧州で最初の実用化試験を行う予定地に選ばれたオランダのBarendrecht市で住民の反対運動が起きて、Shellが進めている計画に遅れが生じていることを報道している。Shellは、近隣にある製油所から出る廃ガスの中の二酸化炭素を分離し、液化してパイプラインで運び、地下2kmのガス採掘跡に封入する計画であり、オランダ政府も40億円の助成金を拠出することを決定している。  

2007年にこの計画が発表されたのであるが、その直後からShellの行った住民に対する説明が不十分で、また不手際が続き、封入された二酸化炭素の漏洩による危険はないのかとの心配を静めることができなかったのである。住民はあくまでは反対運動を進める構えであり、計画の推進の可否は予断を許さない状況である。

欧州には天然ガスを岩盤の中に地下貯蔵している施設はいくつかあり、安全に操業している。二酸化炭素ガス自体に毒性はない。炭酸ガスを老朽油田の再活性のために注入する技術は普通に行われてきた。こうした説明を、Shellや識者が行っているが、住民の納得は得られていない。そして、同市内の不動産価格が下落するという風評被害が発生している。

この地下に封入された一酸化炭素の安全性について、疑問を連想させる事件が過去に起こっている。カメルーン共和国の、Nyos火口湖で発生した二酸化炭素の大量発生によって1,700名もの住民が窒息死した事件が、「誤った連想を抱かせる原因だ」とShell側は言っているが、同時に「安全だと語るだけではだめで、住民に安全性を具体的に示すことが必要だ。それが難しい」と認めている。



温暖化ガス削減合意なるか ‘We just don’t trust you guys’

2009-07-09 | 環境・エネルギー・食糧
2009年7月9日(木)

イタリアで開催中のG8首脳会議で、写真のときはいつも笑顔を無理に作って見せているように見える麻生首相は、今回の集合記念写真では、左端に追いやられて、過去の日本の首相が、誰言うともなく真ん中に近いほうに招じ入れられていたのとは大違いで、日本の地位の凋落を、しみじみと考えさせられた。

温暖化ガスの削減目標を定めた京都議定書(the Kyoto Protocol)が2012年に失効するため、2013年以降の新基準に関する合意を、今年12月のコペンハーゲン会議までに大枠が設定されなければならず、今回のG8会議は、昨年の「洞爺湖宣言の具体化」という非常に重要な意味を持っていた。

京都議定書には、米国と中国が不参加であることに加え、定められた数値目標が、日本を含めて守れず、「精神条項化」してしまっているのが実態である。そして排出権取引(cap and trade)の考え方も、「金融デリバティブ市場崩壊」を受けて、拡大の勢いを失った。

この状況を打開するために、先進国側では、昨年の洞爺湖サミットでの「薄氷の」合意である「2050年に、世界全体で50%削減すること」に加えて、中国やインドなどの発展途上国への妥協として「先進国には80%を削減するという条件を課す」ことでほぼ意に達しているようである。しかし発展途上国側は、納得していない。特に、年度を決めた削減の具体的数値目標を設定することには強い抵抗を示している。

発展途上国側の主張は、「産業革命以来、好きなだけエネルギーを使って経済発展をしてきた先進国が、その結果生じた温暖化問題を解決するために、途上国の経済発展を阻害する条件を課する権利はない」ということに尽きる。

そして、2050年目標に対しても、「先進国は途中の達成目標をも示せ。そうでないなら2050年の数字をコミットしているとは取れない」と反論している。要するに、途上国側には、先進国側のエゴと欺瞞性に対して、「皆さん,おっしゃっていることは信用できませんな」(‘We just don’t trust you guys‘)という強い不信感があるのだ。

このG8に向けて、オバマ大統領は、直前の下院の会議で、「2020年までに20%削減」という法案をかろうじてまとめてきて、温暖化ガス削減交渉で国際社会への「復帰」を果たすべくいき込んできた。しかし、肝心の中国の胡錦涛主席が、新疆・ウイグル問題で急遽帰国してしまったので、まさに拍子抜けとなってしまった。

今回の合意文書は、焦点をぼかしたあいまい表現で終わり、中国を入れて秋口に交渉再開とせざるをえず、年内の「コペンハーゲン議定書」は見送られる公算が大である。


中国、米国の「炭素輸入税」に反対 carbon import tax

2009-07-04 | 環境・エネルギー・食糧
2002年7月4日(土)

先週、米国において、排出量取引制度を導入する「クリーンエネルギー安全保障法案」(American Clean Energy And Security Act of 2009)が、219対217の僅差ながら、米下院で可決された。この法案は、これから上院の審議に回されるが、最終案がまとまるのは、12月のコペンハーゲンCOP15会議における、京都議定書改訂合意期限のころになると予想されている。

この法案は、「排出権取引(cap & trade)の導入によって、米国全体の温室効果ガス排出量を2005年比で2020年までに20%削減、2025年までに83%削減させる」という意欲的な目標を定めている。オバマ政権としては、ブッシュ政権時に、「京都議定書から離脱するという国際信義違反」を行った米国の信頼を回復し、地球温暖化問題でのリーダーシップ回復のためにどうしても成立させたいものである。

この法案の、2013年以降の温暖化ガスの排出制限目標そのものには一定の評価が与えられるものであるが、問題は、超党派合意を得るために、審議途上で、各種の妥協結果が付帯されてしまっていることである。

今回も、『排出上限を設定していない国からの輸入品に対して、「炭素輸入税」(carbon tariffs)を課す』としていることに対して、早速中国は「グローバル通商戦争」(a global trade war)を引き起こすものだとして、他の発展途上国と声を合わせて反対の声を上げ始めた。

中国の「これは、温暖化対策を偽装した(disguise)貿易制限だ」との批判に、インドも同調している。そしてオバマ大統領自身すらも、「炭素輸入税」は、貿易制限と取られる恐れがあるので、「もっと良い方法があるかもしれない」とほのめかし始めている。

また、法学者の間でも「炭素輸入税」制度が、WTO協定に違反しないかは微妙との意見が支配的である。「炭素輸入税」の導入について、WTOや国連は、「そのような差別関税は、WTO協定内で認められる可能性はなくはない。しかし適法範囲にあると証明することも難しい」と煮え切らないことをいっている。

今後、「ポスト京都議定書」の成立は、今年後半から来年にかけて大きな国際問題として浮上してくる。それに伴って、各国内での利害相反が明らかになり、それがより大きな国際間の論争となることも間違いはない。経済回復を最優先とする、国際協調が支配する中で、「地球環境」問題に、人類的見地の建設的議論ができるかがまさに問われている。

サハラ砂漠から欧州へグリーン電力供給計画始動 Desertec

2009-06-19 | 環境・エネルギー・食糧
2009年6月19日(金)

ドイツの企業連合は、サハラ砂漠で、太陽熱エネルギーを利用して発電し、欧州と結ぶ長距離広域送電線を経由して、欧州のグリーン電力を一挙に強化しようというDesertecと呼ばれる壮大な計画を発表した。

計画を推進するのは、保険会社のMunich Reで、ドイツの電力会社RWEやEon、電機メーカーのSiemensなどに出資と参加を呼びかけている。完成時には欧州の電力需要の15%を供給できるという計算がなされている。

欧州では、すでに全域を大電力網が覆うように設置され、域内の電力の融通が行われている。そして世界最大の太陽光発電を誇るドイツや風力発電の伝統を生かすデンマークを中心とした国々は、太陽光や風力などの、いわゆるグリーンエネルギー(Green Energy)の導入に熱心なことはよく知られている。

そして、北アフリカ諸国と欧州の電力網は、環地中海電力網(The Mediterranean Ring)と呼ばれる、超広域電力網ですでに結合されている。さらには、中央アフリカの水力発電で得られる電力を欧州に送るために、欧州を結ぼうとする計画も構想されている。

今回の計画は、こうした欧州のグリーン志向と、電力の広域融通の考え方がいわば「常識化」していることが背景になっている。太陽光や、風力そして水力の豊富な遠隔地で、かつ人口密度の低い過疎地域で、グリーン電力を大量に発電し、需要地へ長距離を直流高電圧で低損失送電する計画は、世界各地で構想され始めている。

22世紀に向かって、「脱炭素社会」の実現に向かうためには、国境を越えた電力網の建設が不可欠である。アジアにも、同様の構想が、地域の安全保障と平和とともに推進されることが望まれる。





麻生首相のCO2削減目標不評 Tsunami of Criticism

2009-06-11 | 環境・エネルギー・食糧
2009年6月11日(木)

麻生首相は記者会見で、「2020年までの日本の温室効果ガス排出削減の中期目標を05年比15%減(1990年比8%減)とする」という方針を、自信を示しながら発表したが、世界の反応は冷ややかである。

Financial Timesは、「日本、待望されていた目標を発表」(long-awaited climate target)との見出しで報じたが、経団連からは、「きわめて達成が難しい目標となった」(“a target that can only be described as exceedingly tough”)との批判を浴び、環境団体からは、「単なる数字の遊び」(“very tricky use of numbers”.)と断じられていることを紹介している。

また、東京発のAP電を引用した、The New York Timesは、“Tsunami of Criticism”(津波のごとく批判殺到)と国連代表を含む各界の失望感を報じ、BBCは、日本の削減目標を、Weak Targets”(弱い削減目標)と評した。

特に、国連の温暖化ガス削減目標設定で中心的役割を果たすUNFCCCの事務局長Yvo de Boer,氏が、削減交渉が行われているドイツのボンにおける記者会見で、「本年中にまとめるべき2013年以降の削減目標からするとまったく不十分(fall far short of what is needed for a global deal later in the year) である」と批判し、「これまで発表されたどの国の目標に比べても、最も弱い目標で、言うべき言葉を失う」(I don’t know what to say)とまで言い切ったことが注目される。

2012年に失効する京都議定書の後を受ける国際協定設定に向けて、2007年から2008年にかけて、温暖化ガス削減の国際的世論が盛り上がり、昨年7月の洞爺湖サミットで、「2050年には50%削減」での合意が形成された。

しかし、9月に起こった金融危機以後は,「日本だけが突出した目標を設定すると国際競争力をそぐので、景気回復に厳しい削減目標は有害」との議論が優勢となっている。



(注)UNFCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change):気候変動枠組み条約