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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

テルモの海外買収、価格は適正だったか Aquisition is Quite Expensive.

2011-03-08 | 世界から見た日本
2011年3月8日(火)

昨晩の日経新聞夕刊のトップ記事は「テルモ。米で大型買収、医療機器会社、2400億円、新興国を開拓」とテルモの「快挙」としてその戦略的買収を大きく報じている。買収先企業はスウェーデンのガンブロ社の子会社で、輸血関連機器製造業の米国企業CardianBCTである。

一方、日経が報じていなくて、Financial Timesが報じている重要な情報がある。今回その買収金額は、26.3億ドルであるが、これは企業の重要な企業価値指標であり、企業買収時に買収金額の算定に決定的な役割を果たすEBTDA比率が15倍となっている。EBITDAは純益に税金・利払い・減価償却をたし戻したもので企業の収益力を表示する。株式の時価や買収金額がひと株当たりこのEBITDAの何倍となるかで企業価値がどこまで大きいかを比較する。すなわち同業他社と同一時点でのEBITDA倍率を比較することが投資判断材料となる。

FTは「アナリストの評価ではCardianBCTの企業価値はEBITDAの8倍といったところ」と報じているので、テルモはとんでもなく高値掴みをした、ないしはつかまされたのではないかとFTは問題を投げかけている。(The acquisition is quite expensive.) 日経の翌朝の記事を丹念に読むと記者会見でテルモ代表者はこの点を質されている。

企業買収の成否は、買収金額よりも買収後の企業統治を確立し、収益基盤に正しく組み込むことができるかにより大きく依存しているともいえるが、買収金額が過大であればその後の収益に重大な影響が出る。テルモ経営陣の説明責任はこれから果されることになる。

今回の買収のFinnacial Adviserは明らかではないが、常に勝者は買収金額に比例して報酬を受け取る彼らであることも、これから買収に出かける各社経営陣は心しておくべきである。

世界はインフレに向かうか A “Risk-on” Day

2011-02-02 | 世界から見た日本
2011年2月2日(火)

景況を示す指数のひとつに、購買担当者指数(purchasing managers’ indices)がある。製造業の資材購買担当者からの聞き取りによって製造業の活動の強弱を測定しようとする指標である。

この指数が、直近で全世界的に上昇している。この結果エジプトの政情不安を乗り越えて、株式市場やユーロ・ポンドが強含みで推移している。この状況をFinancial Timesは、「リスク選好相場」が戻ってきたと評している(The result is a “risk-on” day for markets, with stocks and the euro higher.)

もちろんエジプト情勢からの不安材料が、市場に充満していることに変わりがない。原油は2008年以来の1バレル100ドルの大台に乗せた。これ以上の棒上げになる懸念は、「スエズ運河封鎖などの事態で供給に支障が生じたら加盟国の増産で対応する」と、OPEC事務局長が言明していることで和らげられている。

しかしエジプト情勢はますます不透明であり、同国に対する格付けは、Standard & Poor'sも、Moody'sを追いかけるように一段階引き下げてBBとし、先行きをnegativeとした。 この不安な事態がエジプト一国の問題だけで収束するのか、他のアラブ、北アフリカ諸国にどう影響するのかによって世界は大きく変わる。それいかんでは、おりからの原材料・食料の価格上昇に火に油を注ぐことになることは間違いない。

バブルがはじけて低成長・デフレの20年に出口が見えず、経済システムに制度疲労を来たした日本にとってインフレはいいことなのかもしれない。少なくとも累積した国債の実質的な棒引きになるという意味では。

世界がインフレ時代に反転し、国債利回りをはじめ高金利時代に入るという予想を織り込んで行動するときなのかも知れない。



日本国債格下げは菅政権に朗報 Silver Lining for Kan

2011-01-28 | 世界から見た日本
2010年1月28日(金)

民間債権格付会社のS&Pが日本の国債を、一段階引き下げてAA-とし、その信用度を中国と同一レベルにおいた。

だが誰も驚かない。そしてFinancial Timesは、菅政権にとっては、この格下げこそ、空を覆う借金漬け地獄の日本国の「黒雲」にも、裏側に太陽に照らしだされた「銀色の裏地」(silver lining)が必ずあるがごとく、「力強い後押しだ」と論評している。

理由は、国内の政争が続き、5年間に5人の首相が入れ替わる日本で、GNPの2倍の借金を抱える財政問題が、結局は二の次にされ財政再建が進捗しない現況を打開するための「格好の外圧」だというわけだ。

外貨準備も世界第2位、国債を保有するのはほとんどが貸し手を失い国債を買うしかない国内金融機関という日本が、ギリシャ型の財政破たんから金融危機に進むシナリオはすぐには想定されていない。S&Pは、「そこまで行くにはあと5年」あると担当者に語らせている。

ねじれ国会で予算案を通過させることが極めて微妙なときに、日本の財政問題を海外の格付け会社にその意味を教えてもらって、それをてこに政策運営を行うのはいつものデジャヴューである。

その政争の渦中にいる与謝野財務大臣が、FTのインタビューに答えて「このような財政改革の実現にはリーダーの強い意志が不可欠だ」("To realise such a reform, the strong will of the leader is indispensable,")と語っている。そうだ。日本にないのは金ではなく意志の力(will power)だ。



投資家から見放される日本 Japan investment under a cloud

2010-12-31 | 世界から見た日本
2010年12月31日(金)

Financial Timesが、投資家特にプライベートエクイティファンド(private equity fund)の武富士買収を巡る動きを例に、対日投資がいかに難しいか、そして彼らが日本に幻滅して離れて行ったかについて解説している。

武富士の武井会長が2006年に亡くなった際に、武富士一族と誼を強化しようとその盛大な葬儀には多数の投資家が詰めかけた。その中にTPG社に率いられた投資家の一団がいたが、ほどなく日本の消費者金融の規制の方向が不透明なため撤退を決めた。

今回また管財人のもとでセリにかけられる(back on the block)のだが、武富士が売却対象となるのは、これで3度目。しかし、Goldman Sachsなどの大手はすでに不参加を表明している。「人生は短い。他にいい案件があるのに(日本にかまっている)ひまはない」と言っている由。同社は日本でずいぶん甘い汁を吸った実績を誇るが、最近の不動産関連投資で打たれたのが日本に興味を失った原因とFTは解説するが、本当の理由はもっと根深い。

それは日本の「攘夷思想」であり、「会社絶対崇拝」である。何よりも破産した管財人までが、外国人投資家に買われることを嫌っているのだとFTは世界に向かって解説している。「武富士を分解してバラ売りで売り抜けられるよりも、日本人に買収されて育て上げて欲しい」と管財人が望むのが、この国に浸透している心情なのだと。

ここには投資を「計算」の上に立つものとする経済合理性は存在しない。ただただあるのは、『自分たちの築き上げた美しい箱庭を気心のわかった仲間と眺めて楽しみたい』という願望そのものである。

結果として日本には会社の売却・統合(M&A)取引が、その経済規模に比して恐ろしく少ない。会社は売買の対象とすることに日本人は違和感を覚え、対象となった会社の経営者や従業員は一丸となって買収者を憎み、排除を試みる。そしてその抵抗の成功例は枚挙にいとまがない。日本軍の兵士は「生きて虜囚の辱めを受けるくらいなら」と万歳突撃を繰り返した心情と一脈通じる。

KKR社は数年前に約40億ドルの資金を調達してアジア投資を企画したがこれまで日本向けに成就したのは、ただのはした金投資が一件のみという。日本人は事業再編(restructuring)を極度に嫌っているからだとFTはいう。韓国勢に押されても、円高に採算性が落ちても群雄割拠の自動車・家電業界には統合への動きは起こらないのが日本の特徴であると。まさに幕藩体制260藩が、狭い国土に260年続いたのとそっくりの構造がそこにはある。

超低金利と超円高という絶好の投資環境になっても日本の企業・投資家は海外企業への投資には関心を向けていない。FTは、超低金利の資金はただただ、緩慢なる衰退と死に向かう企業を延命させて「ゾンビー」の天国をつくっているのが日本の現状とのコメンテータの意見を引用している。

2005年にPrivate equity fundは日本に95億ドル、中国に96億ドル投資していたが、2010年には、中国に192億ドル、そして日本には39億ドルと様相は一変している。この数字こそが日本の衰微の象徴である。


日本、国債依存症は国民病 The liquor drinks the Liquor

2010-12-30 | 世界から見た日本
2010年12月30日(木)

Financial Timesの株式論評欄LEX Columnは、同紙第一部の最終ページに鎮座して「寸鉄人を刺す」警句に満ち溢れている。この欄を読めば居ながらに世界経済を鳥瞰できるのだが、本日は年末に当たり棚卸の寸評の中に「日本国債」がトップで取り上げられている。

国債発行に極度に依存している日本国の財政当局者を「10年来心胆を寒からしめてきている」最悪シナリオ(a scenario that has sent a chill down the spine of every official in Japan’s debt management office for the past decade)は、国債を44%も買い付けてくれるメガバンクをはじめとする銀行業界が国債離れをすることだと指摘している。そのシナリオとは:

「銀行が国債離れをしたら、保険業界(20%)、公的年金(12%)、日銀(7%)では支えきれなくなり、勢い海外投資家(現在は5%)に販促しなければなくなる。そのため国債はたたき売り状態となり、その金利が、現在の米国国債のレベルまで上昇する。すなわち利回りで2%以上の上昇となる。銀行は利益確保のためこれまでの国債投資のみにかまけてきた方針を転換して、融資拡大に走る。

デフレの終焉とともに、国内は挙げて貯蓄の取り崩しが始まる。赤字財政漬けの政府も赤字縮小せざるを得なくなる。そろそろそんな時が来た(About time)。ここ数年国債市場では、買い注文が売り出し量の2倍か3倍かということのみが興味の対象だったが、市場が、一斉に反転した動きに出る時が遠からず来る。」

このシナリオは、日本の『仲良しクラブ談合社会』(a deferential, consensus-driven society)では、なかなか起こり得ないものだと前置きしたうえながら、「そうは言ってもメガバンクの一角が、『これ以上はもう』という時が来るはず」と予言している。

そして「こんなもたれあいを続けていては、救いはない。国が国債を乱発すればするほど、銀行が他に貸す先がないからとますますそれを一手に引き受ける。これは日本人がよく膾炙する” sake ga sake o nomu”(The liquor drinks te liquor)状態に他ならない、と日本語をローマ字で引用して記事を締めくくっている。

「酒が酒を飲む」とは、大酒を飲みすぎると本人の意思とは関係なく、いわば酒が酒を飲むようなことになることを指している。国債依存症は、まさに泥酔状態で、さらに浴びるように酒をあおる状態だとFinancial Timesは世界の投資家にシグナルを発している。すなわち、日本の政治家も財務官僚も日本銀行も、国債発行以外の解決方法を取る知恵も勇気も意志もないと一刀両断されているのだ。


ロシア、「プーチン独裁」の様相 Doubt on the rule of law in Russia

2010-12-28 | 世界から見た日本
2010年12月28日(火)

ロシアの石油王と言われ一時はその権勢に並ぶものがいなかったホドルコフスキー氏に対し、ロシアの法廷は、「政敵」プーチン首相が直前のテレビインタビューで宣言した通り、「同氏が経営していた石油会社Yukos所有の原油270億ドル相当を横領した」として有罪判決を言い渡した。

Financial Timesが大きく報じているこの判決は、2003年から7年の刑に服している同氏をさらに新たな罪で服役させて、2012年の大統領選に出馬させないようにするためのプーチンの陰謀であると断じ、ロシアの「法治」に重大な疑問を投げかけるものだと論評している(casting doubt on the rule of law in Russia)。

米国のクリントン国務長官は、「恣意的な訴追が横行し、法治主義は政治判断で歪められている」(the verdict “raises serious questions about selective prosecution – and about the rule of law being overshadowed by political considerations.)との声明をだして、ロシアで法治主義がいまだに確立していないのは、人権擁護や投資環境の改善を望む国際世論に逆行するものであると非難した。

また、ドイツのGuido Westerwelle外務大臣は、「審理過程は極めて憂慮に堪えないものである」との声明を出して欧州からの批判を明らかにした。

Financial Timesは判決の模様を次のように伝えている。「判事は、目を書類に落としたままそそくさと単調な早口で判決を読み上げたが、それはつぶやきとしか言いようがないものであった(barely above a mutter)。

法廷の外ではプーチンへの抗議集会が行われ、『自由を』とか、『プーチン無きロシアを』という叫び声が、判事の「つぶやき」 重なったが、ほどなく集会は警官によって粉砕された」

この異様な判決と恣意的な法廷の「利用」は、ロシアがプーチン首相による独裁国家の様相を呈していることを改めて世界に示すこととなった。

ロシアの法治国家への道は遠い。

韓国、中国漁船員8人を拘束South Korea detains Chinese fishermen

2010-12-20 | 世界から見た日本
2010年12月20日(月)

韓国は、パトロール船に衝突した漁船の船員8名の身柄を拘束したと発表した。衝突で少なくとも一人が死亡するという事態となっている。朝鮮半島の緊張緩和のために中国の役割に期待が高まる中(the US and others are pushing Beijing to help broker a detente on the Korean peninsula.)、中韓関係に障害となることが懸念されているとFinancial Timesが速報している。

北朝鮮の砲撃で4名の死者を出したヨンピョン島における韓国軍の砲撃訓練は悪天候のため中止されているが、今週再開される。これに対して北朝鮮は日曜日に、砲撃訓練を行えば報復すると警告したうえで、軍事警戒態勢に入った。これを受けて国連は日曜日に事態への対応を協議することとなっている。

一方、土曜日に韓国の専管海域でパトロール船に衝突して転覆した漁船の船員8名は救出されたあと身柄を拘束された。現在そのうち一人が死亡、さらに一人が行方不明であると伝えられている。中国政府は公式態度を表明していないが、ネット上には「韓国は殺人者を直ちに差し出すべし」などの怒りの意見が表れている。

日中関係は、9月の「故意に船体を日本の巡視艇に衝突させた」漁船船長を逮捕以来最低の状態となっている中、中韓関係に重大な影響を及ぼしかねないことが懸念されている。韓国側の発表によると、約50隻の中国漁船が違法操業しているところにパトロール艇などの取り締まり部隊を出動させたところ、漁船の一隻が、他の漁船を逃がすため故意に衝突してきて、転覆したもの。

韓国の領海内では毎年300隻の中国漁船が違法操業によって拿捕されている。2008年には韓国側に死者まで出す事件が起こっているとFinancial Timesが伝えている。

一方、19日付の中国系香港紙「文匯報」は、日本政府と異なり韓国政府は慎重に対応しているうえ、朝鮮半島情勢などを巡り中韓両国は良好な関係を維持する必要があることから、双方は今回の事件を偶発的なものと位置づけ、穏便に済ませる可能性が高いとする専門家の見方を伝えていると毎日新聞が報道している。

すでに起こった「中国漁船の体当たり」に対する日本政府の対応と、今回の同様事件に対する中韓政府の対応を比較すれば、日本外交の巧拙、成熟度がおのずと明らかになる。


防衛大綱、対中国防衛強化に転換 Shift from North to South

2010-12-15 | 世界から見た日本
2010年12月14日(火)

今月に入ってその輪郭を明確にしつつある新防衛大綱をFinancial Timesが 比較的大きな紙面を割いて報道している。その見出しは「日本軍事政策、中国の脅威対応シフトへ」(Japan to shift military towards China threat )となっている。日本人が防衛と呼ぼうと、自衛と呼ぼうと世界標準からするとそれはれっきとした軍事(military)の問題であることに変わりはない。

防衛大綱に関して政府内では、陸上自衛隊の定員数を現在の15万5000人から1000人少ない15万4000人とすることを固めたが、これは、12日に行われた北沢防衛相と野田財務相との会談で決まったもの。

これに関してFTは「今回の大綱は陸幕にとっては悪いニュースであり、さらに対中軍事力強化は中国軍側にとっても悪いニュース」と総括している。さらに同紙は、安曇淳防衛副大臣の言葉を引用している。その趣旨は「今回の大綱の最大の変更点は、防衛の矛先を北から南に転換したこと」(the shift from north to south)であり、「南西諸島の防衛力強化が大きな柱」となるというもの。

FTは記事の中で、「中国軍はこの地域における展開強化を図るために、すでに新鋭潜水艦、超音速対艦船ミサイル、新鋭戦闘機の配備を終えている。これはまさに日本にとっては威圧行動であり、日米両国ともに脅威ととらえて対応している」と報じている。

そして日本人コメンテーターの興味深い論評を欧米に伝えている。曰く「平和憲法の枠に組織を挙げてしがみつく陸軍、日本では陸上自衛隊と呼ばれているのだが、彼らに活を入れてくれた中国の漁船船長に感謝しなければならない。おまけに左傾化している与党民主党の国会議員の目まで覚まさせてくれたのだから。陸上自衛隊も南西諸島の軍事力増強のために、陸上部隊の戦車を三分の一減らされたら目も覚めるだろう」と。

さらに、「中国対策に南西諸島に少数の陸上部隊を配備し、レーダー網を構築する。対艦船ミサイルも将来配備される見込み」と防衛大綱の内容に踏み込んで報じている。
安曇副大臣はそこまでの内容を明らかにしなかったが、「急速展開力の改善を図りたい。太平洋戦争の教訓は島に1,000人程度置いても何の役にも立たなかったということだ」と、わが日本が過去に兵站を無視して精神主義で、非科学的作戦の結果むざむざと多数の将兵を見殺しにした歴史までを語ったのである。

さらに同副大臣は「大綱は、最新鋭潜水艦、駆逐艦、それに遅れに遅れているファントム戦闘機の後継機種選定を早期に導入できるものとしたい」と言明している。それには予算の裏付けが必要であるが、今のところ財政赤字の問題が立ちふさがっている。安曇副大臣の結びの言葉は、「中国と戦う前に、財務省と戦わねばならない」(“Before you can fight China, you have to go to war with the finance ministry.”)

日本の新聞が要領の得ない報道をしているが、FTなどの欧米紙を読むほうがわかりやすい典型的な例である。



オバマに「きつい一発」 American voters Delivered a Shellacking

2010-11-04 | 世界から見た日本
2010年11月4日(木)

米国中間選挙で、下院の勢力図が大差で逆転するという民主党の大敗で終わったが、Financial Timesはオバマ大統領が、「これから経済活性化と雇用増大を実現させる」と宣言し、共和党に対して挑戦的な姿勢を打ち出したことを報じたが、同時に大統領は、「選挙民からは手ひどいお仕置きを受けた」(American voters delivered what he called a “shellacking”’ at the polls halfway through his first term.)と耳慣れないa shellackingという口語を使って敗北を認めたことを伝えている。

そして、The Wall Street Journalの見出しは、「中国喜ぶ、ロシア残念がる」(U.S. Vote Cheered in China, Rued in Russia)として、オバマ大敗に対する各国の反応を伝えている。今回の結果は、中国とイスラエルの一部勢力を喜ばせ、アジアとロシアはがっかり、イラクやアフガニスタンは無表情と描写している。日本やアジア諸国、それにロシアはオバマ政権が取ってきた対中強硬姿勢を、国内政策優先のために軟化させてしまうことを懸念していると伝えている。

中国が喜んでいる理由として、中国は人権問題に敏感に反応して、中国の内政に干渉してくる民主党政権に好感を持っていないので、おおむねオバマ敗退を歓迎しているが、一方共和党の対外強硬派の台頭も恐れていると報じている。

一方、The New York Timesは、「共和党幹部オバマ健保改革法の廃止を誓う」(G.O.P. Leaders Vow to Repeal Health Care Law)として、共和党がオバマ政権を追い詰めていく方針を記者会見であきらかにしたことを伝えている

共和党幹部は、記者会見で、中間選挙の大勝利を背景に、「小さい政府、財政支出削減と、年末に切れるブッシュ政権が制定した減税政策の継続」(a vision of smaller government and lower spending, as well as the continuation of the Bush-era tax cuts)をはかるとしている。そして何よりも共和党員がこぞって反対してきた政府管掌健康保険の適用拡大を廃止させると勢い込んでいる。(a vow to repeal the big new health care law)

各紙の映し出す写真、ビデオのオバマ大統領の表情は厳しい。

「ロシア大統領の国後訪問は、内政問題」 A purely domestic matter

2010-11-02 | 世界から見た日本
2010年11月2日(火)

日本政府の中止要請を無視する形で,ロシアのメドベージェフ大統領が北方四島(the Northern Territories)の一つ国後島を3.5時間に渉って訪問し、四島がロシアの領土の一部であることを誇示した。

日本政府は、駐日大使を呼び抗議を行ったが、これに対してロシアの外務大臣は、「受け入れがたい」(unacceptable)こと、と反論した。

さらに、ロシア大使は、NHKのインタビューに対して、「大統領の四島訪問は、純然たる国内問題(a purely domestic matter)であり、「日本政府に冷静な態度を取るよう(calmly)) にと求めたと、Financial Timesが報じている。

ところで、もう昔話と化してしまったが、2009年2月に、サハリンでメドベージェフ・麻生会談が行われ、「新たな、独創的で型にはまらないアプローチ(an “outside the box” approach)で、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した」と麻生首相は発表したことが思い出される。当時から中身の無い「独創的アプローチ発言」と揶揄されてきたが、今回それが証明された。

この「独創的アプローチ発言」以来何の目新しい考え方の提示は双方に無い状況(no obvious new thinking)が続き言葉そのものも忘れ去られた。まさに平和条約の締結や四島の帰属問題解決などは「夢のまた夢」の状況にある。

同紙は、さらにロシアの論調を紹介している。「外交の対応のまずさが日本を恰好の餌食にしている(Japan’s weak diplomatic responses made it an easy target.)

そしてロシアの世論の大勢ともいうべき意見として、1996-2003年に日本大使を務めた人物の発言を紹介している。

「日本人は第二次大戦に負けたことを認めようとしない。日本は侵略者で、敗者として領土を失ったのだ。なにを根拠に領土返還などと主張するのか(Under what justification do they want them all back?)」


中国人漁船船長拘留、日中二国間問題化 Wen Turns Up Heat

2010-09-24 | 世界から見た日本
2010年9月24日(金)

昨日のFinancial Timesのアジア版のトップ記事の見出しは、”Wen turns up heat in row with Japanese”(温家宝首相、日中二国間問題に態度を硬化)であった。

同首相は、中国高官として初めて本件に言及し、菅首相の「冷静に対応すれば解決できる」とした記者会見を無視し、船長の即時釈放を求めるとともに、応じなければ報復措置をとること(threatened retaliation)、そしてその重大な結果についての責任はすべて日本政府にある(solely responsible for the severe damage)との強硬発言を行った。

片や、菅首相は上述のように中国に対して、「冷静な対処」(to deal with the matter calmly)と呼びかけた。さらに同首相はFinancial Timesとの会見で、「両国首脳級では両国の戦略的関係強化の必要性に関し基本認識(basic recognition)では一致している」とし、「今回の紛争は近々解決できるだろう。」(the dispute might be resolved “before too long”.)と語ったとの本日の同紙報道である。

実質的な交渉をしてもいないのに、相手に対し「冷静になれ」と諭すのは国際儀礼上上下関係の隠喩である。また交渉開始以前に「近々解決できる」と示唆することは、交渉が進んでいることないしは、問題を軽く考えているとの婉曲表現となる。

外交の基本を宰相に教える人がいないことは日本の悲劇である。そして日本語を国際語に翻訳するとどんな効果を持つかを分かる人が、日本のトップの周りにいて、発言を指南しなければならないのにそれは一向に改善されない。ポツダム宣言を「黙殺」した結果、2発の原子爆弾が投下された歴史はいまだに学ばれていない。




「日銀は円高心配なしと考えている」との米紙報道 Troubling Highs

2010-08-18 | 世界から見た日本
2010年8月18日(水)

6月以来円は、騰勢を強め、現在6%切り上がっている。先週の最高値は対ドルで84.72円をつけた。政府も日銀も円高対策を迫られているが、八方ふさがりの状況のように見える。

政府が日銀と協調対策を取ると発表し、白川日銀総裁は先週「円と株の不安定さに懸念している」との異例の発言をしている。(a rare statement expressing concern about volatility in the yen and Japanese share prices)

しかし、The Wall Street Journalは、日銀ウォッチャーの、「このくらいの円高は、心配するほどのことはないと日銀は考えているので、急いで日銀が動くことはない」との見方を東京発の記事で報道している。

しかしさすがに、同じ記事の中で、「これ以上の円高になれば日銀は動くであろう」との付帯条件はつけているが、15年ぶりの円高に対して、「そのペースもレベルも、大したことはない」との趣旨の、金融界の見方が世界に向かって報道されていることに注目しなければならない。

円高に対して、市場介入をしようにも、「中国政府の人民元安誘導政策を批判している手前それは、とりにくいオプションである」。また、多少の金融緩和の追加処置を取っても米国で、FRBが超金融緩和措置(the U.S. Federal Reserve's super-loose monetary policy)を取った後だけに、市場金利を下げても円安誘導の効果も薄い。日銀の国債買い入れも、財政規律の縛りがあるので、発動しずらい。

いずれにせよ、これ以上の円高になって初めて、市場に対して10兆円程度の緊急資金供給を決断するであろうとの「日銀ウォッチャー」たちのコンセンサスを報じている。



米中銀、景気減速認め、デフレ対策維持 Huge Balance Sheet

2010-08-11 | 世界から見た日本
2010年8月11日(水)

火曜日ののNY株式市場ではダウ平均株価が54.5ドルの下げで、先ほど引けた。

この下げは、デフレを懸念する米国連邦準備制度(FRB)が、10日の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の直後に発表した声明への市場の反応である。

この声明の中で、FRBは「国債買い入れで大きく膨張しているバランス・シート(Fed's huge balance sheet)を維持する」との意図を明確に打ち出した。このため、FRBは、バブル崩壊後の金融緩和処置として大量に買い入れた住宅ローン担保証券の償還金を、新たに長期国債の購入資金に充当する。そしてゼロ金利政策も維持する方針である。

そして、FRBは、米国の景気を「回復は、ここ数カ月ペースが落ちている(the pace of the recovery has slowed in recent months.) 」 と認めた。これまでFRBは、「回復」を前提とした「出口戦略」を模索してきたが、これで事実上出口戦略を放棄することとなる。

この回復の遅れを認める談話は、極めて遠回しな表現となっているのは興味深い:The "pace of the economic recovery is likely to be more modest in the near term than had been anticipated." (景気回復のペースは従来から考えられてきたものよりは、短期的にみると緩やかなものとなる可能性がある)

市場はこの声明に対して、はじめ「景況感の後退からより金融緩和策が取られると期待」して、ダウを押し上げたが、その後、「すでにFRBのこの方針は織り込み済みである」とする投資家の見方が強まって約0.5%下げて引けた。

一方低金利政策の維持の発表に反応して国債の価格は上昇した。

いずれにせよこの段階での「米国景気減退」とのFRBの判断は、重要である。


民主党大敗の報道 A Stunning Rebuke

2010-07-12 | 世界から見た日本
2010年7月12日(月)

参議院議員選挙は、与党民主党が「大敗」して終わったが、有力紙の報道をその電子版の見出しから見てみる。

The New York Timesは、「日本の与党、中間選挙で大敗」(” Major Setback for Japan’s Ruling Party in Midterm Vote”)としている。

そして「与党はこの9ヶ月間政策的に苦しんできたが、この国民の信任投票ともいうべき中間選挙で大敗が明らかになった。それを受けて菅総理は『選挙結果いかんにかかわらず首相を辞任しない』と語った」と冒頭で伝えている。

The Wall Street Journalは、「与党、参議院選挙で痛撃を食らう」(”Japan Ruling Party Pummeled in Upper-House Vote”)とした。

そして記事冒頭は、「10か月前に民主党に歴史的政権交代を託した国民は、一転してノーを突き付けた(a stunning rebuke)」。としている。

Financial Timesは、「日本の首相、選挙で敗北喫する」(Japanese premier suffers setback at polls)と形容詞抜きの表現となっているが、冒頭の一文は、「民主党は参議院選挙で手ひどい打撃を受けた(a painful defeat)」と表現している。そして、世界第2位の経済規模の日本の財政改革がこれで進まなくなるかも知れないと予想している。

Washington Postは、選挙直前の記事で、「日本の選挙民、民主党に審判」(Parliamentary vote tests Democrats in Japan)として、「菅首相は急速に支持を失っているが、その原因になった突然の増税提案に関してトーンダウンを図っている。日曜日の選挙は9カ月の民主党政治に対する国民の審判となる」と報じていた。


菅首相、なぜ今「消費税増税」? Tokyo’s Latest Tax Blunder

2010-07-06 | 世界から見た日本
2010年7月6日(火)

The Wall Street Journalの寸評欄が、菅首相が突然「消費税率10%」を 宣言したことを、「日本政府、またも税制政策で懲りない失策」(Tokyo’s Latest Tax Blunder)との見出しのもと手厳しく批判している。

同紙は、「日本では税制に選挙前に手をつけた政権はこれまでしばしば敗北してきたことは歴史が教えているのに、参議院選挙直前にした菅首相が、この最悪のタイミングでいったいなぜ経済的にマイナスとなる政策を?」と訝っている。

前任の鳩山元首相は、政治的な敗北を恐れて、「消費税率には最低4年間は手をつけない」としてきたし、民主党の黒幕小沢幹事長も菅首相に警告を発してきた。デフレ対策に躍起となっているこの時期に、消費に水をかけるのは愚策も甚だしいし、「国内投資を刺激して経済成長を後押しするために法人税率を引き下げる」とする同首相の経済政策と平仄が合わない。

「日本の高度成長を支えたのは、第二次大戦後、対GNPでの税収比率を抑制したからであり、失われた20年という「日本病」(The country’s malaise)こそ、過大な財政支出と増税がもたらしたものだ」という認識を日本人はしっかり持っているはずなのに、と分析を加えている。

同紙は続ける。

「菅首相は、消費税増税が、GNP比200%という巨額の国家債務を減らす唯一の道と信じ込まされているようである。低所得者層には減免措置を取るというが、具体策を示さず思いつき発言の域を超えない」と舌鋒は鋭い。

そして、「増税政策の根拠に、政敵自民党の主張を引き合いに出して正当化をしようとしている」のは笑止であると断じている。

「一般論として、税制を簡素化し、所得税率をフラット化し、課税ベースを広げるのは正しい方向であるが、菅政権のやろうとしているのはその逆である。菅氏は直前まで務めた財務相時代に所得税増税に賛意を示していたし、後任の野田大臣は、富裕層への課税強化による、税負担の公平化(more egalitarian)を図るべしと主張している」。

「もっと問題なのは、菅首相が経済成長への道筋をじっくり示していないことである。日本に必要なのは、社会にイノベーションを起こすための、貿易・移民・投資の急速な自由化政策の導入である。法人税率を40%から25%に減税するという公約はこの意味で正しい。郵政民営化促進は、官製の参入障壁の除去による民業振興を推進するための、恰好のシグナルになるはずのものだ」。

「選挙民の心配は、二大紙の世論調査に直ちに現れた。菅首相に対する支持が10ポイント下落したのである。日本国民は菅さんを鳩山さんより好きなようだが、消費税の増税がどんな問題を引き起こすかも十分知っているということだ」と、寸評欄は記事を結んでいる。