ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

2008-10-16 | 美術
秋晴れの今日、友人と国立西洋美術館で開催されている、
ヴィルヘルム・ハンマースホイ展に行く。
興味のある方はHPへ。是非。

ヴィルヘルム・ハンマースホイは、
1864年に生まれ、1916年に55歳の生涯を閉じた、
デンマークの画家。
没後、急速に忘れ去られたが、近年脚光を浴びて、
こうして日本でも大々的に展覧会が開かれるに至った。
コロー展を見たときに、この展覧会のチラシを見て、
この絵を見たい!と思いいそいそと出かけていったわけだが・・。

生活感のないガランとした部屋に、
後ろ姿の妻が立っている、あるいは座っている。
同様のモチーフで一体この画家は何枚の絵を描いたのか?
まるで見る者を拒否するかのような絵を前にして、
観賞する者に何を感じ取って欲しかったのか?
この展覧会には「静かなる詩情」というタイトルがついているが、
詩情あふれるという絵ではない。
むしろ音の全くない静けさと、
感情の気配すらない女の後ろ姿に身がすくむ。
冷たい風が一瞬吹き抜けたような感じ。
しかし、思わずにはいられなくなる。
何枚も何枚も繰り返し描かれる後ろ姿を見ていると、
この部屋にどんな物語があったのだろうと。
画家の妻は何を想ってモデルになっていたのだろうと。
この夫婦はどんな会話をしていたのだろうと。
そうして、石のように固くなった想像力が、静かに動き出す。


****閑話休題*******

詩情といえば、友人にびっくり。
秋晴れの気持ちの良い日だったので、
展覧会を見たあと、外にテーブルのあるカフェでコーヒーを飲んだ。
友人の座った後ろに、白と赤の「水引草」が咲いていた。
すると突然、彼女は詩を暗誦し始めた。

夢はいつもかへつて行つた 
山の麓のさびしい村に
水引草(みづひきさう)に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午(ひる)さがりの林道を

高校生の頃、立原道造のこの詩「のちのおもひに」が大好きだったと。
詩を暗誦しちゃう人っているんですね。
しかも親友。
20年以上付き合っていて初めて知りました。

****「のちのおもひに」の全文はこちら。

 夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
 水引草に風が立ち
 草ひばりのうたひやまない
 しづまりかへつた午さがりの林道を

 うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
 ───そして私は
 見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
 だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

 夢は そのさきには もうゆかない
 なにもかも 忘れ果てようとおもひ
 忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには
 
 夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
 そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
 星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう

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1 コメント

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Unknown (コリコ)
2008-10-17 21:16:57
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