秋晴れの今日、友人と国立西洋美術館で開催されている、
ヴィルヘルム・ハンマースホイ展に行く。
興味のある方はHPへ。是非。
ヴィルヘルム・ハンマースホイは、
1864年に生まれ、1916年に55歳の生涯を閉じた、
デンマークの画家。
没後、急速に忘れ去られたが、近年脚光を浴びて、
こうして日本でも大々的に展覧会が開かれるに至った。
コロー展を見たときに、この展覧会のチラシを見て、
この絵を見たい!と思いいそいそと出かけていったわけだが・・。
生活感のないガランとした部屋に、
後ろ姿の妻が立っている、あるいは座っている。
同様のモチーフで一体この画家は何枚の絵を描いたのか?
まるで見る者を拒否するかのような絵を前にして、
観賞する者に何を感じ取って欲しかったのか?
この展覧会には「静かなる詩情」というタイトルがついているが、
詩情あふれるという絵ではない。
むしろ音の全くない静けさと、
感情の気配すらない女の後ろ姿に身がすくむ。
冷たい風が一瞬吹き抜けたような感じ。
しかし、思わずにはいられなくなる。
何枚も何枚も繰り返し描かれる後ろ姿を見ていると、
この部屋にどんな物語があったのだろうと。
画家の妻は何を想ってモデルになっていたのだろうと。
この夫婦はどんな会話をしていたのだろうと。
そうして、石のように固くなった想像力が、静かに動き出す。
****閑話休題*******
詩情といえば、友人にびっくり。
秋晴れの気持ちの良い日だったので、
展覧会を見たあと、外にテーブルのあるカフェでコーヒーを飲んだ。
友人の座った後ろに、白と赤の「水引草」が咲いていた。
すると突然、彼女は詩を暗誦し始めた。
夢はいつもかへつて行つた
山の麓のさびしい村に
水引草(みづひきさう)に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午(ひる)さがりの林道を
高校生の頃、立原道造のこの詩「のちのおもひに」が大好きだったと。
詩を暗誦しちゃう人っているんですね。
しかも親友。
20年以上付き合っていて初めて知りました。
****「のちのおもひに」の全文はこちら。
夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を
うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
───そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには
夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう
ヴィルヘルム・ハンマースホイ展に行く。
興味のある方はHPへ。是非。
ヴィルヘルム・ハンマースホイは、
1864年に生まれ、1916年に55歳の生涯を閉じた、
デンマークの画家。
没後、急速に忘れ去られたが、近年脚光を浴びて、
こうして日本でも大々的に展覧会が開かれるに至った。
コロー展を見たときに、この展覧会のチラシを見て、
この絵を見たい!と思いいそいそと出かけていったわけだが・・。
生活感のないガランとした部屋に、
後ろ姿の妻が立っている、あるいは座っている。
同様のモチーフで一体この画家は何枚の絵を描いたのか?
まるで見る者を拒否するかのような絵を前にして、
観賞する者に何を感じ取って欲しかったのか?
この展覧会には「静かなる詩情」というタイトルがついているが、
詩情あふれるという絵ではない。
むしろ音の全くない静けさと、
感情の気配すらない女の後ろ姿に身がすくむ。
冷たい風が一瞬吹き抜けたような感じ。
しかし、思わずにはいられなくなる。
何枚も何枚も繰り返し描かれる後ろ姿を見ていると、
この部屋にどんな物語があったのだろうと。
画家の妻は何を想ってモデルになっていたのだろうと。
この夫婦はどんな会話をしていたのだろうと。
そうして、石のように固くなった想像力が、静かに動き出す。
****閑話休題*******
詩情といえば、友人にびっくり。
秋晴れの気持ちの良い日だったので、
展覧会を見たあと、外にテーブルのあるカフェでコーヒーを飲んだ。
友人の座った後ろに、白と赤の「水引草」が咲いていた。
すると突然、彼女は詩を暗誦し始めた。
夢はいつもかへつて行つた
山の麓のさびしい村に
水引草(みづひきさう)に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午(ひる)さがりの林道を
高校生の頃、立原道造のこの詩「のちのおもひに」が大好きだったと。
詩を暗誦しちゃう人っているんですね。
しかも親友。
20年以上付き合っていて初めて知りました。
****「のちのおもひに」の全文はこちら。
夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を
うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
───そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには
夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう