ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

ラファエル前派の女たち

2006-08-31 | 美術
■ダンテ・ゲイブルエル・ロセッティ「ファツィオの愛人」
■モデルはファニー・コンフォース■■■■■

8月も終わりだというのに、いつまでも暑いなあ。
このところずっと、ブログご無沙汰してました。
旅日記もいつになることやら・・・記憶もうすれていくというのに。とほ。
というのも、実は先日も少しだけ書いた「ラファエル前派」にムラムラと
興味がわいてきて、本を読み漁っていました。

まずは、ジャン・マーシュ著「ラファエル前派の女たち」
これが500頁を越える分厚い本で、しかも、
歴史の中の女性史にファミニズム的分析をしているアカデミックな内容で、
スキャンダラスな男女関係を期待していたミーハーな私は、
読み始めかなりてこずったのです。恥ずかしながら。
しかし、面白かった!久しぶりに手応えのある本でした。
絵のモデルとして永遠に記憶されることになった女たちは、
時代の波にもまれながらどんな人生を送ったのか?
現存する手紙や資料からそれを紐解いていきます。
ロセッティのファムファタール(運命の女)として有名な、
エリザベス・ジダル(リジー)やジェーン・モリス。
やはりロセッティの愛人・ファニー・コンフォース。
ハントのマイフェアレディ、アニー・ミラー。
バーン・ジョーンズ夫人のジョージー・バーン・ジョーンズ。
有名な芸術家であった男達の影に隠れながらも、
彼女たちの人生は、かすかな喜びと大いなる苦悩と
時にユーモアに満ちて活き活きと甦ります。
私が特に印象的だったのは、ファニーとジョージーです。

ロセッティの愛人であり、のちには友人でもあった
ファニーの生き方は率直です。
ロセッティがリジーと結婚すると、
自分も行き当たりばったりの男をみつけて結婚し、
リージーが死ぬと、結婚生活に終止符をうってロセッティの元に。
正式な相手として周囲に認められることもなく、
ロセッティが他の女に目移りしても責めるでもなく、
彼が狂気の中で死ぬまで二人の間には何か暖かい感情が流れていたようです。
ロセッティにとって一番気の休まる相手だったのではないでしょうか?
太めだった彼女を「象さん」に例えて漫画を描いたりしてます。
官能的な絶世の美女ばかり描いているロセッティが、です。

結局「ラファエル前派の女たち」といっても、
つまるところはロセッティなんですね。
「ロセッティを巡る女たち」としてもいいくらいです。
それほどロセッティという人は男も女も惹きつける魅力があったのでしょう。
今、その「ロセッティ論」を読んでいます。
強烈な個性の持ち主。
想像(幻想?)と現実の狭間に生きているような男です。
詩人であり、画家であり、芸術家特有のナイーブさを持ちつつ、
妙に現実的な抜け目のないところもあって、不思議な人です。
若い頃は長髪の美男子、体格も良かったそうです。
晩年(といってもたった53歳で亡くなった)の写真を見ると、
髪も薄くなり、中年らしい体格になっているのですが、
なんとも魅力的です。

そしてもう一人のジョージー。
彼女はロセッティの愛人ではありません。
ロセッティに大きな影響を受けたバン・ジョーンズ画伯の奥方です。
この本の終盤にスポットライトがあたるジョージーの章は圧巻でした。
興奮して娘に電話してしまったくらい。
そして二人で出した結論が
「彼女の墓に足を向けては眠れない」でした。

とても一言では語れない彼女の人生ですが、なんとか。
夫の度重なる浮気(バーン・ジョーンズお前もか!)に苦悩しつつ、
ジョージーは妻として母として精一杯やれるだけのことをし、
なおかつ、
誰もが、いつでも、気軽に行くことの出来る美術館を作ることに奔走しました。
(サウス・ロンドン・ギャラリーは現存します)
劣悪な生活環境を改善すべく尽力しました。
正義漢で、心が温かく、真っ正直な女性だったようです。
決して表に出ることもなく、ひっそりとこの世を去りました。
イギリスの美術館がほとんど無休で、しかも無料で、
多くの人が楽しむことができるのは、
ジョージーたちがその基盤を作ってくれたからです。
これが感謝せずにいられましょうか!
しかもジョージーはピアノを弾くのが大好きでした。
もう好きにならずにいられません(笑)

野に咲く小さな白い花のように、凛として清々しく、
自分なりの生き方を貫いたジョージアナ・バーン・ジョーンズ。
いつかきっと彼女の肖像画を見てみたい!きっと!








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1 コメント

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Unknown (コリコ)
2006-08-31 22:48:52
そこらへんの話は映画にしなきゃ駄目じゃん。

だったら、ファニーはキャシー?

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