もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

蝶々・蜻蛉も・・・

2021年07月23日 | 自衛隊

 本日は、悪口・侮辱・ヘイトを含んでいることを予めお断りして進める。

 海軍には「主計、看護が兵隊ならば、蝶々蜻蛉も鳥のうち」なる侮蔑表現があった。主計職(調理・経理・庶務等)や看護職(衛生)は直接戦闘に加わらないことから、他の職域、特に攻撃武器の操作を担う兵科職よりも重要度が劣るとしたものである。しかしながら士気の根源である給食に大きく関与する主計職や救急治療に当たる衛生兵は艦の運営と戦闘力の発揮に不可欠であることは広く認識されていたために、喧嘩の場面にしか使用されなかったようである。特に、主計長(補佐の主計員を含む)の戦闘配置は、個人の勲功(叙勲や下賜金評価根拠)に大きく影響する戦闘記録を担当していたために「主計長・戦闘記録員は戦死させるな」と大事にされたともされている。また、戦記物では激烈な対空戦闘の合間に、身を挺して握り飯等の戦闘食を各戦闘配置にまで届けた主計兵に対する感謝の一文もしばしば目にするところである。
 自分の現役時にあっては、かって主計科と呼ばれた職は補給科となり、戦闘配置も戦闘記録員、艦橋電話員、応急(ダメージ・コントロール)員として大きな戦力であり、「非常配食用意」が下令された場合にのみ調理員は配置を離れて調理作業等に従事していた。看護職は衛生と名を変えたものの、正式には衛生員長である衛生員の長も「看護長」の通称で、戦闘配置も戦闘治療所である。
 序に非常配食について。非常配食は、戦闘配置についたまま食事することで、手間のかからない乾パン(練乳が付くのが一般的)、温める時間が必要な缶詰飯、時間を要する握り飯等、まで数段階に分かれており、現役中に経験した最も豪華な非常食は「巻き寿司」であった。巻き寿司と云えば、戦時中の艦載機搭乗員の弁当にもしばしば登場するので、今昔を問わず調理担当者にとっては最高の心尽くしであるのだろう。また、著しい荒天で調理作業が出来ない場合にも非常配食が行われ、関門海峡から舞鶴港まで乾パン食であったこともある。
 蝶々蜻蛉と侮蔑された補給・衛生職であるが、現在では調理師免許や救急救命士の資格取得の近道であることや、調理男子がもてはやされることなどから、海自内での人気職域と聞いている。

 「・・・ならば、蝶々蜻蛉も鳥のうち」という言葉が、巷で広く使用されているかどうか知らないが、広範な対象に向けた悪口としては頃合いのレベルではないだろうか。
 曰く「福島・枝野が政治家ならば」としても良いし、「安倍菅・石破が・・・」とするのが好みならば、それもありだろう。「立国公明が政党ならば」も成立するだろうが、蝶々蜻蛉に比定する対象者は曖昧模糊としたものに限ることが肝心で、間違っても「お前(配偶者)や息子が家族ならば」なぞとでも使用したならば、血の雨と義絶は覚悟しなければならないように思える。
 最期に「お前なんぞが日曜画家ならば」だけは御容赦頂きたい。