刑死したオウム真理教教祖の麻原彰晃氏の遺骨と遺髪の引き取り先が2女に確定した。
遺骨遺髪は、平成30年7年の死刑執行後も法務当局が保管しており、当初は麻原氏の遺言によって4女が受け取ることになったが裁判となり、地裁は4女、高裁は2女と判断が分かれ、最高裁は高裁判断を支持したものである。
麻原氏の遺骨については、一般的には極悪非道な犯罪者のそれであるが、刑死を法難と捉えるオウム真理教とその流れを汲む後継団体信者にとっては仏舎利にも匹敵する信仰対象であり、遺骨の行方次第によっては再び教団・信徒が暴走する危険性が有るとされている。
麻原氏には、妻と2男4女が遺されており、4女と長男は比較的に後継団体との関係が薄いと観られているが、その他の家族は今も後継団体の枢要な位置にあって、2女・3女は直系血族という血の正統性を尊重されているらしい。このように教祖・始祖の血統を重んじるのはオウムに限らず、キリスト教にあってはマグダラのマリア伝説が、イスラムに於いてはカリフの正統性として、未だに語られ、清須会議では信長の直系孫である三法師丸の抱き役のみを甘受した羽柴秀吉が、信長の後継筆頭の地位に登る足掛かりを得た故事も忘れられない、
遺骨・遺髪・遺灰の所有権はどうなっているのだろうか。遺産と同じ様に、妻に半分、子供には当分の権利があるのかと調べて見た。最高裁を含む司法が受取者について司法判断を下したことから、何らかの法的根拠が有るのだろうが、良く分らなかった。
思いだされるのが、東京裁判べ刑死したA級戦犯者の遺骨である。資料によれば、A級戦犯者の遺骨・遺灰は死刑執行後直ちに粉砕され、厳重な秘匿・警護の下に航空基地に輸送されて空中に散布されたとされ、散布に至る経路・時刻・位置等の一切を記録することが禁じられたとされている。このことは、刑死者の遺骨等が日本教の殉教者として信仰対象になることを恐れたGHQの処置とされているが、日本の神社に祭られている御神体の殆どは精神性のみで、遺骨である場合は極めて少ないことをGHQも知らなかったようである。
麻原彰晃氏の遺骨の行方は法的には決着したが、公安関係者にとっては頭痛の種が残ることになる。氏の死刑執行に際して本ブログで遺骨争奪に関する危惧と、オウム真理教への破防法適用を見送った公安委員会への疑問を書いたが、オウム後継団体と麻原氏の遺骨は今後とも熾火のように熱を持ち続けて、発火の危険を保ち続けるように思える。
テロに関する国連機関での日本の位置は、オウムのテロに有効に対処しなかったテロ支援国家にカウントされているとも聞いているが、法の執行者には法の精神に基づいて厳格に施行する気概を持って欲しいものである。韓国のように国際法無視や遡及法まで及べとは云わないが・・・。