もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ハイチの混迷を学ぼうとしたが

2021年07月14日 | 社会・政治問題

 ハイチのモイーズ大統領が暗殺されて1週間が経過したが、混迷の度は深まるばかりに見える。

 暗殺は、7日未明に大統領の自宅が襲撃されて大統領は死亡、夫人は重症であるもののフロリダで治療を受けて一命はとりとめたとされている。暗殺は26名の武装集団によって行われ、実行部隊の3名は射殺・元コロンビア軍兵士等18人が拘束、5名が逃走中とされ、実行犯ではないが襲撃に加担(計画?)した疑いでハイチ系アメリカ人2名も拘束とされているが米国務省は確認できていないとしている。
 ハイチの混迷と大統領暗殺に至る経緯を勉強しようと思ったが、コロンブスの発見からスペインの植民地に・宗主国の地位を奪ったフランスの植民地として「世界で最も豊かな植民地」とされた時代・独立したが「世界の最貧国」に凋落する過程は極めて複雑で、とても手短に語れるものでは無く、暗殺の背景も経済政策・国内の権力闘争・国外勢力の加担・大統領自身の金銭疑惑・・・と、これまた複雑(怪奇)であるように思える。
 ハイチの主要部はイスパニョーラ島の5/8で、残りの東側部分はドミニカ共和国であるが、同島の航空写真を見るとハイチには緑が少ないがドミニカ圏は緑色の部分が極めて多いのが印象的である。ハイチが禿山となった原因は食糧確保のための過作とされる。豊かな植民地~人口増加~森林伐採による農地拡大~森林の減少~保水力の低下~土壌の流出~洪水多発・農業の衰退~耕作地の放棄によって禿山のみが残ったという図式であるらしく、同じような現象は、牧草地の拡大と薪炭を得るために森林を伐採し尽くしたエチオピア、捕鯨船燃料のためにしたイースター島、外貨のために石炭の個人使用を禁じた北朝鮮でも見られるし、今ブラジルが富国のためとして同じ道を辿ろうとしている。
 農業や牧畜に基盤を置く社会では、いくら生産性を高めても単位面積当たりの養育可能人口は限られていることから姥捨て山や新生児の間引きが伝承として残り、過剰人口を無理に養おうとすれば土地そのものを荒廃させる結果となってしまうように思える。
 生命尊厳の倫理感が定着し、医療が発達した現在の地球では爆発的に人口が増加し、近い将来には100億人を越えるとされているので禿山の国は今後とも増えていくのだろう。そうなった時、農業に基盤を持たない先進国が現在と同じ様にそれらの国を支え切れるのだろうか。

 今回のハイチの混迷に対してアメリカは当面の間静観するとしているが、複雑な国内事情を見る限り、何らかの支援・介入に踏み切らざるを得ない状況であるように思える。まして、ハイチが数少ない台湾承認国であることを考えれば、ハイチを中国のワクチン攻勢外交の標的にされることは何としても防がなければならないように思えるが、老バイデンが気概を示すことができるのだろうか。