もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

アフガン駐留米軍撤退のその後

2021年07月05日 | 軍事

 アフガン駐留米軍撤退の追加報道を知り、2件について勉強した。

 1は、アフガンに関する米軍の指揮権が駐留米軍司令官からアメリカ中央軍司令官に移譲されることである。
 アメリカ中央軍は、緊急展開統合任務部隊の発展形として1983年に新設された部隊であり、司令部はフロリダ州タンパ市のマクディール空軍基地、現司令官はマッケンジー海兵隊大将、任務は中東・アフリカ地域への対応を優先するが全世界への事態対処にも充てられる統合任務部隊(タスク・フォース)となっているが、隷下部隊は存在せず必要に応じて陸海空軍と海兵隊から兵力を抽出することとされている。中央軍に抽出される海軍兵力は第5艦隊とされるが、5艦隊もまた直属艦隊を持たない任務部隊であるので、空母レーガンを含む第7艦隊が5艦隊・中央軍に抽出される可能性は排除できず、極東の米海軍兵力の影響力が不安定な状態が続くものと思える。
 2は、以前のブログでも懸念した米軍協力者の保護に関する動きである。
 報道されたのは、米国防長官が、アフガンと国境を接するタジキスタン・ウズベキタンの外相と会談するとともにカザフスタンを含む中央アジア3カ国に、協力者の保護・一時受け入れを打診していることである。自分は、アフガンと国境を接する5カ国(前記3国とパキスタン・中国)は米軍協力者の保護について消極的(パキスタン・中国は絶望的)であろうと書いたが、3国は一応、欧州・大西洋パートナーシップ理事会、平和のためのパートナーシップ、欧州安全保障協力機構に名を連ねていることから、外交チャンネルがあるアメリカからの打診については即座に拒否できない状態にあるように思える。しかしながら、ウズベキスタンは2005年にアメリカ軍の基地使用(駐留)を拒否し、タジキスタンには中国人民解放軍の駐留基地が存在するとされ、カザフスタンはバイコヌール宇宙基地がロシアに租借されている等、ロシア・中国・イスラム諸国との関係が深いために、アフガンの米軍協力者を受け容れた場合に予想されるイスラムテロリストの浸透などを考慮すれば、アフガン問題に加担・深入りする姿勢は見せたくないのではと思わざるを得ない。

 アフガニスタンは、自分の目からは乾燥した高・荒地で農業には不向きであるが、近年には有望な地下資源も確認されており、最貧国から抜け出せる可能性が有るように思えるが、ソ連のアフガン侵攻と、以後のイスラム教義対立を制したタリバン政権によって国家形態・統治機構・国民意識は破壊しつくされているように思える。
 果して、アフガンが自立する日は来るのだろうか。