ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ロックンローラ

2009年03月07日 | 映画レビュー
 これは面白い! わたしはもともとヤクザ映画は好きではないのだが、なぜか食指が動いてしまったので見た映画。で、これは最初から最後まで実にテンポのいいスタイリッシュなヤクザ映画だ。なんといってもオープニングのおしゃれなこと! これはかっこいいです、タイトルバックのデザインもだけれど、ツカミの部分の小気味よさったらないわ。

 「ワールド・オブ・ライズ」で伊達男を演じたマーク・ストロングの独白によって幕を開ける、ロンドンマフィアのお話し。マーク・ストロングはアーチーという名の忠犬ハチ公だ。親分レニーに忠義を尽くしているが、そのレニーというのは老ボスであり、いくつになっても自分がロンドンを牛耳っていると信じている。そこに出張ってくるのが台頭めざましいロシアンマフィア。不動産投機によって美味い汁を吸おうというあくどい連中が跋扈する物語。この映画の登場人物は全員が欲の皮の突っ張った者ばかりで、正義の味方なんて一人もいやしない。主人公はいちおうワンツーという名のチンピラ、これをジェラルド・バトラーが演じている。バトラーはいろんな役を器用にこなすねぇ。この映画でも情けないチンピラヤクザをほんとに情けなく演じていて笑えた。

 物語をテンポよく回すガジェットが、一枚の絵だ。これがいったい何の絵なのか、最後までわからないのに登場人物の間をぐるぐると回るところが大変面白い。この、中身が空虚なものを巡って群像たちの欲望が渦巻くあたり、ヒチコックのマクガフィンなのだが、マクガフィンの癖に妙に気になる存在で、実は映画の最後になって「おお」と思わせるネタが仕込んである。このあたりもお見事。

 暴力、麻薬、セックス、金、というダーティな物語であるのに、暴力シーンも作り事めいているため(不死身のロシアヤクザとか)、あまり気にならない。レニーの息子がドラッグ漬けのロックンローラであるのだが、この映画では冒頭に「ロックンローラ」の定義づけが行われる。いわく、金も名誉もセックスも、すべてを欲しがる者のことだ、と。その定義通り、この映画には欲まみれの人間達が互いの欲を食い合うように登場し、彼らがそれと知らずにお互いの弱みを握り合っている、というところが面白い。

 そして、欲が欲を呼び、悪逆の限りを尽くした者への天罰は下るのか? いや、地上の罪には地上の人間の手で鉄槌を下そう。

 なかなか楽しい娯楽作。息抜きにどうぞ。(PG-12)

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ロックンローラ
ROCKNROLLA
イギリス、2008年、上映時間 114分
監督・脚本: ガイ・リッチー、製作: ジョエル・シルヴァー他、音楽: スティーヴ・アイルズ
出演: ジェラルド・バトラー、トム・ウィルキンソン、タンディ・ニュートン、マーク・ストロング、イドリス・エルバ、トム・ハーディ、トビー・ケベル、ジェレミー・ピヴェン、クリス・ブリッジス、ジェマ・アータートン、ドラガン・ミカノ

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