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九十九ヶ丘高校の或る日の昼休み、2年の男子2人が、体育館裏のフェンスに開いた穴から密かに学校を脱け出した。タイム・リミットは昼休みの65分間。彼等のミッションは、達成なるか?(第1話「RUN! ラーメン RUN!」)。
文化祭で販売する部誌の校了に追い詰められた文芸部員達。肝心の表紙イラストレーターが行方不明になり、昼休みの校内を大捜索するが・・・。(第2話「いつになったら入稿完了?」)
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「2024本格ミステリ・ベスト10【国内編】」の4位に選ばれた小説「午後のチャイムが鳴るまでは」(著者:阿津川辰海氏)を読了。全部で5つの短編小説から構成されており、時代は「コロナ禍の2021年」、舞台は「九十九ヶ丘高校」。其処で“完全犯罪”を目論む学生達を描いた内容。
“完全犯罪”と言っても他愛無い物許りで、例えば第1話の「RUN! ラーメン RUN!」では、「『昼休みに、私用で校外に出る事が禁じられている。』という状況下、其の日で使用期限が切れてしまう無料サーヴィス券を使うべく、近所の人気ラーメン店へと昼休み中に極秘裏で向かう2人の男子高校生。」といった感じだ。
今年2月、「理系人間が特に好みそうな作風。」という事で、「地雷グリコ」なる学園ミステリーを紹介させて貰ったが、第3話「賭博師は恋に舞う」は、非常に似たテーストが在る。
又、周りに誰も居ないと思って“謎の男”が呟いた「星占いでも仕方が無い。木曜日なら尚更だ。」という独り言を、部室内で偶然に聞いてしまった1人の女子高生が、親友2人と其の意味を“推理”し、予想外の結末に辿り着くというストーリーの第4話「占いの館へおいで」が、個人的には面白かった。
共通して登場するキャラクターが居ない訳では無いのだけれど、第1話から第4話迄は“全く無関係な話”という感じで進む。ところが、第5話「過去からの挑戦」で全てが絶妙にリンクしている事が明らかとなり、尚且つ“17年前の或る謎”迄解き明かされるのだから、「伏線の敷き方が上手いなあ。」と唸ってしまった。
何故か“名前”が表記されていなかったり、不可思議な言動をしたりと、頭の隅に“引っ掛かり”を感じさせる人物(達)。其の引っ掛かりも、結局は最後の最後になって「そういう事だったのか!」と納得させられ、「良くもまあ、こんな設定を考えた物だ。」と感心。
中盤辺り迄は「こんな内容で、4位なのかあ。」と不満足さを感じていたけれど、第5話の存在によって「此の設定なら、4位も判らないでは無いなあ。」と。でも、盛り上がりは最後だけという感じも在り、総合評価は星3つ。