東野圭吾氏が「容疑者Xの献身」で第134回直木賞を授賞したのは、今年初めの事だった。古くから彼の作品に惚れ込んでおり、「やっと世間に認められた。」という嬉しさは在ったが、同時に「『容疑者Xの献身』は彼の力量からすればイマイチな内容なのに、何故この作品で?」という不本意さの様なものも在ったりで、複雑な心中だった。そしてこの程、直木賞授賞後の第1作目として発行されたのが「赤い指」という作品だ。
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何処にでも居る様な平凡なサラリーマンの前原昭夫。50歳を前にした彼は、八重子という妻と中学三年の息子・直己、そして実母・政恵と暮らしていた。同居前から妻と実母はギクシャクした関係だったが、同居後の政恵は認知症を発症してしまう。甘やかされて育った直己は親の言う事を全く聞かなくなる等、家庭内には寒々しい空気が流れていた。そんな中・・・。
直己が自宅に一人の幼女を呼び入れ、そして絞殺してしまう。ごく普通の父親だった昭夫は、妻に促されるままに死体遺棄を決断する。しかし、警察は直ぐに前原家に疑惑の目を向ける。或る証拠が残されていたからだ。自らが犯した大罪を自覚せぬままに、両親に全て”処理”して貰おうとする息子。そんな息子を過剰な迄に守ろうとする妻。何が起こっているのか知りようがないままの実母。追い詰められた状況下、昭夫が下した人として絶対に許されない決断とは・・・。
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「何処にでも在る家族を襲った、悪夢と救済の二日間。」という惹句の様に、この家族を襲った絶望的な現実と、そして表面化した意外な真実が僅か二日間という短い時間の中で描かれている。何かを守ろうとして、更に大事な何かを失おうとする人間の愚かさ。「容疑者Xの献身」とやや似た感じも在るが、展開の無理さ加減はそれ程無い。東野作品の特徴でも在る、読後に残る何とも言えない理不尽さ&切なさも健在で、直木賞授賞作品よりは遥かにこっちのテイストの方が好きだ。
総合評価としては星4つ。東野圭吾氏、期待を裏切らない作家で在る。
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何処にでも居る様な平凡なサラリーマンの前原昭夫。50歳を前にした彼は、八重子という妻と中学三年の息子・直己、そして実母・政恵と暮らしていた。同居前から妻と実母はギクシャクした関係だったが、同居後の政恵は認知症を発症してしまう。甘やかされて育った直己は親の言う事を全く聞かなくなる等、家庭内には寒々しい空気が流れていた。そんな中・・・。
直己が自宅に一人の幼女を呼び入れ、そして絞殺してしまう。ごく普通の父親だった昭夫は、妻に促されるままに死体遺棄を決断する。しかし、警察は直ぐに前原家に疑惑の目を向ける。或る証拠が残されていたからだ。自らが犯した大罪を自覚せぬままに、両親に全て”処理”して貰おうとする息子。そんな息子を過剰な迄に守ろうとする妻。何が起こっているのか知りようがないままの実母。追い詰められた状況下、昭夫が下した人として絶対に許されない決断とは・・・。
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「何処にでも在る家族を襲った、悪夢と救済の二日間。」という惹句の様に、この家族を襲った絶望的な現実と、そして表面化した意外な真実が僅か二日間という短い時間の中で描かれている。何かを守ろうとして、更に大事な何かを失おうとする人間の愚かさ。「容疑者Xの献身」とやや似た感じも在るが、展開の無理さ加減はそれ程無い。東野作品の特徴でも在る、読後に残る何とも言えない理不尽さ&切なさも健在で、直木賞授賞作品よりは遥かにこっちのテイストの方が好きだ。
総合評価としては星4つ。東野圭吾氏、期待を裏切らない作家で在る。

おかしいかもしれませんが、
記事を読んでいて切なくなってしまいました。
真実は3つあるそうです。
加害者の真実。被害者の真実。本当に神のみぞ知る真実なんでしょうか。
変なコメントをして申し訳ないです。
ぁたしの祖父も、祖母もいわゆるボケ老人でした。
死ぬ間際には、ベッドにくくりつけられていました。
とても、悲しかったです。
家族の方の苦労、本人の苦労。
なってみないと、なかなか、解らないです。
祖父が認知症になった頃は、自分も幼かったですし、同居もしていませんでしたので、本当の辛さ&哀しさを100%体感している訳では在りません。何事もそうですが、実際にその場に身を置かないと見えて来ない事って結構在りますよね。
与える側のときであったり、与えられる側であったり、主従権側であったり、従う側であったり、病を患う側であったり、看病する側であったり、立場が変われば感じかたがかわって、でも相手の立場になってとよく言われますが、完璧に相手の立場になれることはないような気もします。
話が少しズレてしまいました。
分かりきったようなチンケなことを書いてすみません。
その人物と同じ環境になったとしても、人それぞれ感性等も異なる訳ですから、100%同じ思いを共有出来る訳では無いですよね。唯、限り無く相手と同じ気持ちになれる”可能性”が在るというだけで、その人の気持ちはやはりその人しか完璧には判り得ないというのは確かでしょうね。
TBありがとうございました。
これを機会にときどき寄らせて頂きます。