1) Nashville Rendez-Vous / Marcel Dadi
2) Fingers Crossing /Marcel Dadi
3) Country Guitar Flavors / Marcel Dadi
ここ数日、突然パソコンがネットに繋がらなくなり意気消沈。モデムの不具合やケーブルの断線などハードウェア的なものまで疑ってみたもののさっぱり解決せず結構悩みました。最終的にはファイアウォールのフィルタリング設定に原因があることが分かり一安心。プロバイダの DNS サーバが変更になっており、ファイアウォールでこの IP アドレスが拒否されていたのです(DNS による名前解決が出来なかったんですね)。セキュリティの高さと利便性はトレードオフではありますが細かすぎるフィルタリングも考えものかなと少し反省した次第。
そんなトラブルとは全く関係ないのですが今回はフランス人カントリー系ギタリスト Marcel Dadi を紹介します(といってもゲスト参加している Steve Morse と Albert Lee のプレイについての話が中心ですが)。私が彼を知ったのは Steve Morse のセッション参加アルバムの経緯です。Marcel は 1996年に飛行機事故で惜しくもこの世を去りましたが Nashville のミュージシャンとの交流を図ったこの三部作という素晴らしいものを遺してくれました。
まずは1990年発表の三部作の一作目 "Nashville Rendez-Vous" です。Steve が 5曲、Albert が 2曲参加しています。オープニング曲 "Merci Pour Maayane" には Steve が参加しているのですが意外にも決め手となるフレーズが出てこないため、お恥ずかしながらどのプレイが彼のものなのかはっきりと特定することは出来ませんでした(おそらく後半で聞かれるクリーン・トーンでのソロ・プレイが彼のものだとは思うのですが...)。ネットでも調べてみましたが海外の某サイトでも似たような感想を書いている管理者がいました。ただ本作は Marcel 自身が解説しているスコアブックが出版されており、それにはゲスト・ギタリストのプレイも載っているそうなのでそれを見れば答えがわかると思います。私自身かなり昔に楽器屋で何度か見かけたことがあるのですが、当時はそこまでチェックしていませんでした。自分なりの見解をお持ちの方、あるいは答えを知っている方がいましたらコメントなどいただけると嬉しいです。続く "Robert The President" では Steve がガット・ギターを用いてジャジーなプレイを聴かせてくれます。オーソドックスなフレーズで占められてはいますがこちらは彼のプレイに間違いないでしょう。"Goodbye Blue Sky" では Steve が叙情感溢れるギター・ソロを披露しています。豊かなロング・トーンが印象的で "High Tension Wires" でのプレイを彷彿させます。"Swingy Boogie" での Steve のプレイは正に金太郎飴状態!どこを切っても彼らしいフレーズで埋め尽くされています。ディストーションが効いていながら違和感無く曲に溶け込んでいるのは見事という他ありません。また本作で初めて顔を出す Albert もアタックの効いた音色でこれまた彼らしいフレーズに満ちたソロを聴かせてくれます。さすがカントリー・ギタリストの第一人者といったところです。"Song For Jerry" は Jerry Reed に捧げられた曲だと思われます。Albert のプレイは惚れ惚れするような王道カントリー・リックで、フレーズの感じからするとストリング・ベンダーを使っているかも知れません。Steve はアコースティック・ギターを用いてクロマティック・スケールを織り交ぜたブルーグラス風のリックを披露しています。彼のこのようなプレイは私もあまり記憶になく、貴重なセッション・ワークの一つでしょう。
翌1991年発表の "Fingers Crossing" では Steve, Albert がそれぞれ 4曲ずつ参加しています。オープニングの "Woody Good Picker" では Albert がロールやダブル・ストップを駆使したフレーズを艶のあるトーンで聴かせてくれます。正にカントリー・ギターのお手本のようなプレイです。Steve のソロはベンディングの雰囲気やエコー感、トーンの円やかさなどから "General Lee" でのフレーズを連想させます。"Hotel Shoeshine" では Steve がディストーションの効いたサウンドでハーモニクスなどを織り交ぜながら哀愁のあるフレーズを奏でています。"Song For Leo Revisited" では Albert が王道の高速カントリー・リックを決めれば、Steve はハーモニクスを用いた和音フレーズ("Country Colors" のイントロなどで聴けるプレイ)から高速カントリー・リックになだれ込んでそれに応えます。"Fingers Crossing" では Albert のギターは気持ちオーバードライヴされ、ロック・フィーリング溢れるカントリー・リックが聴けます。アルバムを締める "L'echo Des Savanes" ではギター・リフやホーン・セクションなども加わり、一大ジャム・セッションといった雰囲気の中、Albert は王道カントリー・リックを、Steve もディストーション・サウンドに戻り、彼らの最も得意とするスタイルでのプレイが堪能できます。
最後に1992年発表の "Country Guitar Flavors" ですが Steve, Albert ともに "Jumping The Strings", "Song For Doc", "Guitar Pickers Association" の3曲に参加しています。まず "Jumping The Strings" ですが Albert はお得意のディレイ・トリックを用いた軽快なカントリー・リックを披露しています。Steve の方はベンディングやクロマティック・スケールを織り交ぜたプレイで、強いて言うなら "Runaway Train" でのソロ・プレイに近いでしょう。"Song For Doc" では Steve のソロはスティール・ギター風のプレイに始まり "The Bash" を意識したとも思える高速ノンストップ・カントリー・リックが炸裂します。私もあのプレイにノックアウトされカントリー・ギターの世界に興味を持った口ですから何とも感慨深いものがあります。Albert は彼らしいロールの効いた超絶プレイをいとも簡単に決めています。本作の最後を飾る "Guitar Pickers Association" はナッシュビルで行われたライヴ・セッションで非常にリラックスしたムードが漂っています。ここでの Steve はディストーションを効かせたサウンドでサザン・ロック・テイストを持ち込んでいます。タメの効いたグルーヴ感たっぷりのフレーズがとても心地好く聴こえます。Albert のソロはスタイル、サウンドともにカントリー系なのですがフレーズ的にはロック寄りのプレイを聴かせてくれます。
この三部作には他に Chet Atkins、Larry Coryell の大御所をはじめ、Charlie McCoy のハーモニカ、Buddy Emmons のスティール・ギター、Bela Fleck のバンジョーなどが Marcel のギターをサポートしています。