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Bela Fleck / Deviation (1983)

2005-08-13 10:27:31 | Music > Country
世界最高峰のバンジョー・プレーヤー Bela Fleck ネタでもう一枚! 先日、FLECKTONES を取り上げましたので、今回はもう少しブルーグラス寄りの Bela の作品を紹介したいと思います。"Deviation" は New Grass Revival 加入直後にリリースされた Bela のソロ・アルバムです。ジャケットには "with New Grass Revival" と書かれており Sam Bush, John Cowan, Pat Flynn が Bela を全面的にサポートしています。加えて Jerry Douglas, Mark O'Connor, Kenny Malone と私のフェイヴァリット・ミュージシャンが参加しており、全くもって豪華な布陣です。アルバムはドーグ・ミュージック + NGR といった感じのインスト曲集で、オープニングを飾るタイトル曲 "Deviation" はとにかくカッコいいです。ブルーグラスの枠から飛び出したグルーヴ感が私にはたまりませぬ! 何曲かの小品もうまく散りばめられているので、NGR ほどハイ・テンションではなく、全体的には静と動のバランスが取れた落ち着いた雰囲気を感じます。John の "暑い" いや "熱い" ヴォーカルも今回はナシですしね(笑)。まだ FLECKTONES のようにブッ飛んだサウンドではないですが、既にジャンルを超越した感覚が見え隠れしている点は面白いですし、このアルバムの後、Bela を加えた最終形態の NGR が本格的に始動することを考えれば、興味深い一枚であると言えるでしょう。


Bela Fleck Official Website:
FLECKTONES とは別サイトです。
http://www.belafleck.com/

Bela Fleck & The Flecktones / Outbound (2000)

2005-08-02 05:53:08 | Music > Country
Bela Fleck は New Grass Revival の頃から追い続けていますが、彼が NGR 解散後に結成した Bela Fleck & The Flecktones のデビュー作は衝撃でした。バンジョーという楽器をメインに据えた革新的なフュージョン・サウンドが飛び出してきたのですから・・・。いずれ、この記念すべきデビュー・アルバムも取り上げたいと思いますが、今回は先日の Shawn Colvin 繋がりで、彼女がゲスト参加している "Outbound" を紹介したいと思います(Bela と彼女は Columbia Records のレーベル・メイト)。ボーダレスなサウンドが魅力の FLECKTONES は一言で形容するなら「ブルーグラス・フュージョン」といったところでしょうか。比較するバンドが他に思い浮かばないほど、唯一無比のスタイルを築き上げていますから、まずは実際に聴いていただきたいところです。デビュー当時はバンジョー、ベース、ハーモニカ、ドラミター(ギターのような形状をした特殊なドラム・シンセサイザー)という四人編成でした。現在はハーモニカがサックスに替わっており、多少アダルトなムードが漂うようになった気がしますが、サウンドの核に変化はありません。FLECKTONES はハイレベルなテクニックとセンスを有したミュージシャン集団ですから、難解なイメージを抱いてしまう方も少なくないと思います。ところが意外にもユーモアたっぷりの聴きやすいサウンドだったりするんですよね。そこには緻密なアレンジと即興性の豊かさという異なる要素を共存させながら、決して内省的な方向には向かわず、そのエネルギーを常に外側へ向けようとしている彼らの姿勢がうかがえます。ジャム・バンドのフェスティヴァルにも度々出演している彼らには、元々そういうポジティヴな感覚が備わっているのでしょうね。私はブルーグラス界からのアプローチでしたが、現在ではフュージョン界でも知名度が上がってきているようで、名手 Victor Wooten が在籍しているバンドとして名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。また「類は友を呼ぶ」ではないですが、本作に参加しているゲスト・ミュージシャンも Adrian Belew や Yes の Jon Anderson といったロック・ファンにお馴染みの名前から John Medeski, Paul McCandless といった一癖も二癖もありそうな人ばかりです。個性豊かな彼らのプレイは違和感無くバンドのサウンドに溶け込んでおり、ヴォーカルでさえ FLECKTONES サウンドの中では一つの楽器のように機能しています。インストゥルメンタル主体の楽曲にヴォーカルという生命を持った楽器が新たなカラーを加えているのです。これは見事という他ありません。多くの曲でヴォーカルが使われていますが、あくまで FLECKTONES サウンドが核であり、決してヴォーカル曲として作られていない点は特筆に値するでしょう。

聴くたびに面白さを発見出来る摩訶不思議な FLECKTONES サウンド。ブルーグラスやフュージョンのファンのみならず、バンド・アンサンブルの妙を楽しめるという点で DREGS や Jazz Is Dead が好きな方にもおススメです。演奏センス、テクニック、そして留まることを知らない飽くなき探究心、Bela は間違いなく世界最高峰に君臨するバンジョー・プレイヤーです。おそらくこれに異論を唱える人などいないでしょう!


Bela Fleck & The Flecktones Official Site:
http://www.flecktones.com/


※ Bela Fleck & The Flecktones はトレーディングを許可していますから、こちらからライヴ音源のダウンロードが可能です。興味のある方は是非聴いてみてください!

Chet Atkins & Jerry Reed / Sneakin' Around (1992)

2005-06-25 12:51:55 | Music > Country
Eric Johnson - ギター・スタイルのルーツを探る

Chet Atkins, Jerry Reed


カントリー・ギターという観点から言えば、Chet Atkins や Jerry Reed を語る上で避けては通れない名盤があると思うのですが、今回は一般の音楽ファンの人たちにも受け入れられやすいであろうアルバムを選んでみました(私もそんなに詳しいわけではありませんしね)。私が Chet と Jerry の音楽を聴くようになったのは Albert Lee の影響ですが、彼らは Eric Johnson のアイドルでもあるようです。EJ の最新作 "Bloom" では "Tribute To Jerry Reed" が収録されましたし、そんな二人のプレイをまとめて聴くことができる "Sneakin' Around" を入門向けとして取り上げてみました。アルバムの雰囲気は以前に紹介した Eric が参加した Chet のアルバム "Read My Licks" に非常に近いです(こちら)。二人のリラックスした円熟のプレイは躍動感があり、とても生き生きとしているのが印象的です。またギター・プレイ云々を抜きにしても、爽やかなアコギ・インスト・ミュージックとして楽しめるのではないでしょうか。収録曲について一言だけ。"The Claw" はカントリー・ギター史に残る Jerry Reed の超名曲。機会があれば是非オリジナルも聴いていただきたいです。最後に本作に参加しているミュージシャンをピックアップして紹介しておきます。ギタリストには Dire Straits の Mark Knopfler、バッキング・ヴォーカルに Amy Grant、DREGS にも在籍していた天才フィドラー(ヴァイオリニストのこと) Mark O'Connor、元 Toto のベーシストで現在はカントリー・シーンを中心に活躍している David Hungate らがクレジットされています。

※ カントリー・ギターに興味を持たれた方は、私がよく訪れる tk9630 さんのブログ「カントリーギター、チェットアトキンス スタイルギターの部屋」が詳しいです。

UP! UP! UP! - CM で気になるあの曲は?

2005-05-07 23:18:39 | Music > Country
最近、CM でよく耳にする曲が Shania Twain の "Up!" 。何の CM かは伏せておきますが、PV を見てもらえば「ああ、聴いたことあるよ!」って言ってもらえるはず(こちら)。Shania はカナダ出身の女性カントリー・シンガーですがサウンドはほとんどポップスです。Faith Hill のヒット以降、カントリー・ミュージックは一気にポップス化が進んだように感じます。80年代のヒット・チャートを駆け上った懐かしきポップスを受け継いでいるのが現在のカントリー・ミュージックといえるかも知れません。80年代のポップスが好きな方は、両者に多くの共通点を見い出せるでしょう。個人的にカントリー・ミュージックが一般リスナーの耳に届く機会が増えることは嬉しいことです。ドラマだ、CM だ、どんどんタイアップしてちょうだいな!!!(何か最近、動画ネタが続くなぁ...)

カリウタ先生!こんなところで何やってるんですか?

2005-05-06 15:31:27 | Music > Country
今日何気なくネットで Faith Hill の "This Kiss" の動画を観ていてビックリ!!「おいおい、ドラム叩いてるのカリウタ先生じゃないか!」って、思わぬ発見でしたね。メチャメチャ楽しそうにプレイしております。あと Faith の右側でギターを弾いているのは Dominic Miller っぽいんだけど。Vinnie と Dominic は Sting のバックで一緒だったからなぁ、でも流石に違うかな。満面の笑みの Vinnie が見れる動画はこちら

Eric Johnson も絶賛する Doyle Dykes のテクニック!

2005-05-05 22:47:06 | Music > Country
自らのプレイ・スタイルに多大な影響を与えたギタリストとして Chet Atkins や Jerry Reed といったカントリー・ギター界の巨匠たちの名を挙げる Eric Johnson ですが、そんな彼が絶賛するフィンガー・スタイリストが Doyle Dykes です。その尋常ならざる完璧なテクニックは数多くのギタリストから賞賛の声が寄せられています(私の敬愛するカントリー・アーティスト Steve Wariner も彼のことを "MONSTER" だと言っています)。基本となるスタイルは Merle Travis や Chet Atkins らによって確立されたギャロッピング奏法なのですが、難易度の高いフレーズをクリアかつ正確に弾きこなすテクニックは群を抜いて素晴らしいと言えるでしょう。「百聞は一見にしかず」、彼の映像が Taylor Guitar のサイトにアップされていますので、是非観てみてください(こちら)。"Steve's Boogie" や "Tribute To Jerry Reed" など Eric のカントリー・プレイに興味のある方は楽しめるのではないでしょうか。個人的に印象に残ったのは彼がナットよりヘッド側の部分で、さりげなく弦をベンドしてストリング・ベンダー・ギターのようなリックを弾いているシーンでした。


Doyle Dykes Official Site:
http://www.doyledykes.com/


※ ストリング・ベンダー・ギターとは Clarence White と Gene Parsons によって開発されたメカニカルな機構で弦をベンドさせ、スティール・ギターのようなプレイを可能にするギターのことです。Albert Lee の教則ビデオなどでも観ることができます。

New Grass Revival / On The Boulevard (1984)

2005-04-29 13:30:42 | Music > Country
オープニング・ナンバーはアルバム・タイトルにもなっている "On The Boulevard" です。疾走感を持ちながらも軽やかでポップな仕上がりは、ドラムレスであることや Pat がリード・ヴォーカルを担当していることも関係しているでしょう。非常に爽やかで心地良い風を運んでくれるような一曲です。"You're The Best Friend That I've Known" や "One Of These Trains" ではのどかなムードにマッチした John & Sam の美しいハーモニーを聴くことができます。また "Just Is", "You Don't Knock", "Walkin' In Jerusalem" でのソウルフルな John のヴォーカルはたまりません。すでにブルーグラスの域を超えていますがカッコいいものはカッコいい!トロピカルなムードが漂う "One More Love Song" は Leon Russell のカヴァー。こういったアレンジは正に NGR が得意とするところですね。リードの Sam とそれを支えるハーモニーの John のヴォーカルがホント良い味を出しています。また Bob Marley の曲 "One Love / People Get Ready" もカヴァーしており NGR の懐の深さを感じずにはいられません。こういった楽曲ではバンジョーがスティール・ドラムっぽく使われているんですが違和感全く無しです。そんな中、ストレートなブルーグラス・チューンもちゃんと入れてくるところが心憎いです。"Get In The Winds" ではオールド・スタイルな Bela のバンジョー・リックが逆に新鮮だったりします。

とにかくヴァラエティに富んだ楽曲のすべてが NGR 流に料理されており、アルバムの最初から最後まで聴いていて飽きることがありません。個人的な感想ですが Bela のプレイはまだ控え目な感じがします。まだ遠慮気味だったんですかね。あと John はホントに痩せましたよね(おまけに若返った!)。アルバム・ジャケットの右端のチェック・シャツを着た男が下の写真の左から二番目のメガネを掛けた男と同一人物であるとはなかなか思えないですよ。


Sam Bush / Glamour & Grits (1996)

2005-03-29 00:36:40 | Music > Country
1996年にリリースされた Sam Bush の 2nd ソロ・アルバムです。一体何枚のアルバムに参加しているのかというほどレコーディング・セッションの多い Sam ですが、ソロ・アルバムとしては現在まで四枚と寡作な部類に入ると思います(そもそも 1st ソロからは9年が経っていますからね)。

一曲目からメランコリックなメロディが飛び出してきて、私好みの展開にノックアウトです。バックは New Grass Revival 時代の旧友 John Cowan を始め、Emmylou Harris の The Nash Ramblers でも一緒だった Jon Randoll, Larry Atamanuik の三人が基本バンドとなっています。曲によっては Bela Fleck や Jerry Douglas も参加し、素晴らしいプレイを聴かせてくれます。またベースとドラムというリズム・セクションが存在することで、Sam 独特のポップ感も強調されているように思います。楽曲は NGR を連想させるものも少なくないですが、John のコーラスはオフ気味です。彼のヴォーカルは個性的ですから、そうしないと NGR そっくりになってしまいますものね(と書きつつも "The Load Came Unto Me" では "Walking in Jerusalem" を彷彿させる二人の見事なハーモニーが聴けますよん!)。また NGR の "One Love / People Get Ready" 以来でしょうか、Sam が大好きな Bob Marley の曲も演っています。

Sam はジャム・バンド系のセッションやライヴにもよく顔を出すミュージシャンです。ロック畑のリスナーにとっても、取っ付きやすいのではないでしょうか。ブルーグラスに興味を持たれた方は是非ロックの熱い血が流れている S A M B U S H を聴いてみてください!

Collin Raye / Direct Hits (1997)

2005-02-22 00:04:54 | Music > Country
私が Collin Raye の声に初めて触れたのは、またしても例のイタリア料理店でです。店で流れていたのはカントリー・ヴァージョンの "Open Arms" でした。気になったので早速調べてみたら Collin Raye だったというわけです。Journey は大好きなバンドですからこういうのを耳にしてしまうといてもたってもいられなくなるんですね。ブルーグラス・フィールの感じられる Steve Wariner や Vince Gill ともまた違った感じのコンテンポラリーなポップ・カントリーです。声質がいいので凄く聴きやすいですよ。

Alison Krauss / June 24, 1989

2005-02-14 02:02:44 | Music > Country
O Brother, Where Art Thou? (オー・ブラザー!) のサントラ参加で一般の音楽リスナーにも名前が知れ渡るようになった Alison Krauss (アリソン・クラウス) ですが、今回紹介するのは Telluride Bluegrass Festival (1989年) でのライヴ音源です。まだ今ほど洗練されていなく、オーソドックスなブルーグラスという印象が強いです。1989年から1992年にかけて Union Station のバンド・マスターを務めた Alison Brown 在籍時のライヴというのが嬉しいですね。彼女のバッキング・ヴォーカルも聴くことが出来ます。The Beatles のカヴァー曲 "I Will" は Tony Furtado の "Within Reach" (1992) で Alison が唄っていましたが (後に彼女のコンピレーション盤 "Now That I've Found You" (1995) にも収録) 、この頃からライヴで取り上げていたのですね。"Bury Me Beneath The Willow" は私にとって Skaggs & Rice のヴァージョンで馴染み深い曲ですが、ここで聴ける二人の Alison のハーモニーも中々素敵です。

Setlist:
01. Two Highways
02. Wild Bill Jones
03. Beaumont Rag
04. Livin' In The Name Of Love
05. Goin' Gone
06. Standin' By The Bedside
07. Banjo & Fiddle Tune
08. There's Nowhere To Hide
09. Don't Follow Me
00. Standin' On The Outside
11. Sweet Georgia Brown
12. Steel Rails
13. A Woman In Love
14. On The Borderline
15. Loneliness & Desperation
16. Too Late To Cry
17. Gentle River
18. The Road Is A Lover
19. I Can't Get You Off Of My Mind
20. Bury Me Beneath The Willow
21. I'm Goin' On
22. I Will
23. Shoppin' For Love
24. Will You Be Leaving
--- Encore ---
25. Midnight Rider

The Band:
Alison Krauss - Fiddle, Vocals
Jeff White - Guitar, Vocals
Alison Brown - Banjo, Guitar, Vocals
John Pennell - Bass
Butch Baldassari - Mandolin

※音質はまあまあなのですが出力バランスにバラツキがあります。

Setting Me Up のブルーグラス・バージョンを求めて...

2005-02-05 12:29:30 | Music > Country
何年も昔の話、あるイタリア料理店で流れていた "Setting Me Up" のブルーグラス・バージョン。イタリア料理に何故ブルーグラス?と言う話はさておき、Dire Straits の Mark Knopfler 作の名曲である。私もオリジナル・バージョンは勿論のこと、Albert Lee の "Hiding" (1979) でのカバーや Eric Clapton の"Just One Night" (1980) のバージョン(ギターは Albert Lee)も好きである。ずーっと、誰の演奏なのか気にかけてきたが今の今まで知らずに過ごしてきた。たまたま、目にしたブログでこの曲のことが触れられており思い出したように調べてみた。最初、ヒットしたのは Highway 101 というカントリー・バンド。ブルーグラスではないので違うだろうと思いながらも iTunes で試聴してみた。やっぱり違った。でも Albert Lee のバージョンに近い、いい感じの仕上がりだったですよ。そんでもってもうちょっと検索続行してヒットしたのが Seldom Scene です。おお、生粋のブルーグラス・バンドではないですか!"Cool Blue Rocks: Rock & Roll In The Bluegrass Tradition"というオムニバス盤。おそらく、私が探し求めていたバージョンはこれに違いない!流石にこの曲を試聴できるところは無さそうなので eBay で探そうかな...。今回はドキュメンタリー・タッチの単なる備忘録です。

Marcel Dadi

2004-12-04 10:48:48 | Music > Country
1) Nashville Rendez-Vous / Marcel Dadi
2) Fingers Crossing /Marcel Dadi
3) Country Guitar Flavors / Marcel Dadi

ここ数日、突然パソコンがネットに繋がらなくなり意気消沈。モデムの不具合やケーブルの断線などハードウェア的なものまで疑ってみたもののさっぱり解決せず結構悩みました。最終的にはファイアウォールのフィルタリング設定に原因があることが分かり一安心。プロバイダの DNS サーバが変更になっており、ファイアウォールでこの IP アドレスが拒否されていたのです(DNS による名前解決が出来なかったんですね)。セキュリティの高さと利便性はトレードオフではありますが細かすぎるフィルタリングも考えものかなと少し反省した次第。

そんなトラブルとは全く関係ないのですが今回はフランス人カントリー系ギタリスト Marcel Dadi を紹介します(といってもゲスト参加している Steve Morse と Albert Lee のプレイについての話が中心ですが)。私が彼を知ったのは Steve Morse のセッション参加アルバムの経緯です。Marcel は 1996年に飛行機事故で惜しくもこの世を去りましたが Nashville のミュージシャンとの交流を図ったこの三部作という素晴らしいものを遺してくれました。

まずは1990年発表の三部作の一作目 "Nashville Rendez-Vous" です。Steve が 5曲、Albert が 2曲参加しています。オープニング曲 "Merci Pour Maayane" には Steve が参加しているのですが意外にも決め手となるフレーズが出てこないため、お恥ずかしながらどのプレイが彼のものなのかはっきりと特定することは出来ませんでした(おそらく後半で聞かれるクリーン・トーンでのソロ・プレイが彼のものだとは思うのですが...)。ネットでも調べてみましたが海外の某サイトでも似たような感想を書いている管理者がいました。ただ本作は Marcel 自身が解説しているスコアブックが出版されており、それにはゲスト・ギタリストのプレイも載っているそうなのでそれを見れば答えがわかると思います。私自身かなり昔に楽器屋で何度か見かけたことがあるのですが、当時はそこまでチェックしていませんでした。自分なりの見解をお持ちの方、あるいは答えを知っている方がいましたらコメントなどいただけると嬉しいです。続く "Robert The President" では Steve がガット・ギターを用いてジャジーなプレイを聴かせてくれます。オーソドックスなフレーズで占められてはいますがこちらは彼のプレイに間違いないでしょう。"Goodbye Blue Sky" では Steve が叙情感溢れるギター・ソロを披露しています。豊かなロング・トーンが印象的で "High Tension Wires" でのプレイを彷彿させます。"Swingy Boogie" での Steve のプレイは正に金太郎飴状態!どこを切っても彼らしいフレーズで埋め尽くされています。ディストーションが効いていながら違和感無く曲に溶け込んでいるのは見事という他ありません。また本作で初めて顔を出す Albert もアタックの効いた音色でこれまた彼らしいフレーズに満ちたソロを聴かせてくれます。さすがカントリー・ギタリストの第一人者といったところです。"Song For Jerry" は Jerry Reed に捧げられた曲だと思われます。Albert のプレイは惚れ惚れするような王道カントリー・リックで、フレーズの感じからするとストリング・ベンダーを使っているかも知れません。Steve はアコースティック・ギターを用いてクロマティック・スケールを織り交ぜたブルーグラス風のリックを披露しています。彼のこのようなプレイは私もあまり記憶になく、貴重なセッション・ワークの一つでしょう。

翌1991年発表の "Fingers Crossing" では Steve, Albert がそれぞれ 4曲ずつ参加しています。オープニングの "Woody Good Picker" では Albert がロールやダブル・ストップを駆使したフレーズを艶のあるトーンで聴かせてくれます。正にカントリー・ギターのお手本のようなプレイです。Steve のソロはベンディングの雰囲気やエコー感、トーンの円やかさなどから "General Lee" でのフレーズを連想させます。"Hotel Shoeshine" では Steve がディストーションの効いたサウンドでハーモニクスなどを織り交ぜながら哀愁のあるフレーズを奏でています。"Song For Leo Revisited" では Albert が王道の高速カントリー・リックを決めれば、Steve はハーモニクスを用いた和音フレーズ("Country Colors" のイントロなどで聴けるプレイ)から高速カントリー・リックになだれ込んでそれに応えます。"Fingers Crossing" では Albert のギターは気持ちオーバードライヴされ、ロック・フィーリング溢れるカントリー・リックが聴けます。アルバムを締める "L'echo Des Savanes" ではギター・リフやホーン・セクションなども加わり、一大ジャム・セッションといった雰囲気の中、Albert は王道カントリー・リックを、Steve もディストーション・サウンドに戻り、彼らの最も得意とするスタイルでのプレイが堪能できます。

最後に1992年発表の "Country Guitar Flavors" ですが Steve, Albert ともに "Jumping The Strings", "Song For Doc", "Guitar Pickers Association" の3曲に参加しています。まず "Jumping The Strings" ですが Albert はお得意のディレイ・トリックを用いた軽快なカントリー・リックを披露しています。Steve の方はベンディングやクロマティック・スケールを織り交ぜたプレイで、強いて言うなら "Runaway Train" でのソロ・プレイに近いでしょう。"Song For Doc" では Steve のソロはスティール・ギター風のプレイに始まり "The Bash" を意識したとも思える高速ノンストップ・カントリー・リックが炸裂します。私もあのプレイにノックアウトされカントリー・ギターの世界に興味を持った口ですから何とも感慨深いものがあります。Albert は彼らしいロールの効いた超絶プレイをいとも簡単に決めています。本作の最後を飾る "Guitar Pickers Association" はナッシュビルで行われたライヴ・セッションで非常にリラックスしたムードが漂っています。ここでの Steve はディストーションを効かせたサウンドでサザン・ロック・テイストを持ち込んでいます。タメの効いたグルーヴ感たっぷりのフレーズがとても心地好く聴こえます。Albert のソロはスタイル、サウンドともにカントリー系なのですがフレーズ的にはロック寄りのプレイを聴かせてくれます。

この三部作には他に Chet Atkins、Larry Coryell の大御所をはじめ、Charlie McCoy のハーモニカ、Buddy Emmons のスティール・ギター、Bela Fleck のバンジョーなどが Marcel のギターをサポートしています。


Nashville Rendez-Vous / Marcel Dadi Fingers Crossing / Marcel Dadi Country Guitar Flavors / Marcel Dadi

カントリー / ブルーグラス

2004-10-11 14:50:16 | Music > Country
私がカントリーやブルーグラスに興味を持ち始めたのは Dixie Dregs がそれらの影響を受けていたということに他ならないのですが Steve Morse Band のアルバム "The Introduction" や "Stand Up" にゲスト参加していた Albert Lee や The Dregs の2代目ヴァイオリニストとしての経歴も持つ Mark O'Connor らの存在も非常に大きいです。何事も「最初が肝心」といいますが初めて聴いた彼らのアルバムが私にとてもよい印象を与えてくれたように思います。一旦素晴らしさの片鱗が見えてしまうと後は加速度的に興味が増していくばかりです。今でも Albert Lee の "Hiding" と Mark O'Connor の "Elysian Forest" は私にとって忘れられないアルバムの一つです。

Hiding / Alber Lee Elysian Forest / Mark O'Connor