真夜中の映画&写真帖 

渡部幻(ライター、編集者)
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ジェレミー・ソルニエの『ブルー・リベンジ』は使い古された「復讐物ジャンル」の可能性を開拓する試み

2016-01-29 | テレビで見た映画
   

『ブルー・リベンジ』(13)をWOWOWの初放送で。劇場で見逃して気になっていたインディペンデント映画である。
異色の大傑作を期待したいたほどではなかったが、しかしこの映画、リーアム・ニーソンものなどで使い古されて大味になった「復讐ものジャンル」にいまだ可能性があることを示している。
『ブラッドシンプル』(84)でコーエン兄弟が、フィルムノワールで定番のボイスオーバーを排して観る者の感情移入を拒み、客観的な立場に置くことによって、ドス黒いユーモアを滲ませ、ジャンルを刷新してみせたのにも似て、本作の新人ジェレミー・ソルニエもまた、主人公のこれまでの人生や復讐に至る経緯を最小の説明にとどめ、加害者との因果関係やその真相もなかなか知らされない。実際(映画としては)実にささやかな理由から起こった殺し合いの顛末は、登場人物たちの自警意識――一家の問題に警察など介入させない――によって雪だるま式に死体の数を増やしていくのだが、ミニマリズムに徹するソルニエ演出は、一連の「青い報復」のなかから得もいわれぬ「憂鬱なユーモア」を滲ませ「主流からこぼれ落ちたアメリカのリアリティ」をも浮かび上がらせる。その「さま」がなかなかの見ものなのだが、新作『Green Room』(15)での飛躍を期待したくなった。(渡部幻)

http://www.imdb.com/title/tt2359024/?ref_=nm_knf_i1
http://www.imdb.com/title/tt4062536/?ref_=nm_flmg_dr_1
(この新作、『25年目の弦楽四重奏』や『マイ・ファニー・レディ』のイモージェン・プーツが出演しているらしい)

   

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